【2025年最新】アブダビの法人設立の流れを完全解説!日本人必見のフリーゾーン戦略

アブダビで法人を設立し、フリーゾーンを活用することは、近年日本人投資家の間で大きな注目を集めています。アブダビでの法人設立手順やフリーゾーン戦略について、メリット・注意点・今後の動向まで丁寧に解説します。
日本人投資家の視点から、なぜアブダビ法人設立が有望なのか、どのように進めればよいのかを網羅的にご紹介します。
アブダビ法人設立が注目される背景:日本人投資家の視点
アブダビの近代的なスカイラインは、同首長国の急成長と安定した経済基盤を象徴しています。首都アブダビは、石油産業で培った富に加え、多角化戦略によって経済成長を遂げており、製造業・金融・不動産・観光など非石油部門が軒並み拡大しています。2024年にはアブダビの非石油セクターが前年同期比+6.6%成長を記録し、地域経済の重要な拠点として存在感を高めています。
さらに注目すべきは、UAEのアブダビ首長国が経済の石油依存脱却に向けて大規模な改革を進めていることです。政府は今後数年間で合計500億ディルハム(約1.5兆円)の経済政策パッケージを導入することを決定しており、多様な産業の育成に取り組んでいます。この安定かつ成長著しい経済環境が、海外投資先として注目される大きな理由です。
日本人投資家にとってアブダビが魅力的な背景には、税制優遇とビジネスのしやすさがあります。アラブ首長国連邦(UAE)は法人税・所得税がこれまで存在しないことで知られてきましたが、近年も依然として個人所得税ゼロ、法人税も新制度下で最大9%と日本(法人実効税率約30%)に比べ極めて低水準です。
さらに、ビジネス設立やライセンス取得が容易で、投資家や起業家向けの長期ビザ制度も充実しています。日本では企業収益に多くの税負担がかかりますが、UAEで法人を設立すれば税コストを大幅に削減でき、利益を最大化できる点は日本人にとって大きな魅力です。
また、日本企業・投資家による中東進出が全体として増加傾向にあることも背景にあります。実際、2023年10月時点でUAEに進出している日系企業数は358社にのぼり、前年から3.5%増加しました。中東地域で日本企業の進出が最も多い国がUAEであり、とりわけドバイとアブダビの両首長国に拠点を構えるケースが多いことが報告されています。このように多くの日本企業・投資家がUAE市場に注目し始めており、アブダビもその重要な受け皿となっているのです。
地理的・政治的な安定性も見逃せません。アブダビはUAEの首都であり、政府の政策支援やインフラ投資が厚く、政治的安定性が高い地域です。日本とUAEは良好な外交・経済関係を築いており、近年は二国間で投資保護協定や租税条約も整備されています。これにより日本人が安心して資金を預け、長期投資を計画できる土壌ができています。こうした背景から、「日本人投資家必見」とも言えるアブダビ法人設立が注目を浴びているのです。
下記グラフは、UAEに進出している日系企業数の概算推移(2018年~2023年)を示したものです。
実際の最新統計はJETROサイトの「中東・北アフリカ進出日系企業調査レポート」などでご確認ください。

また、UAE全体の非石油セクターの成長率を示す参考データも挿入しておきます。下記は2020年~2024年を対象とした目安であり、正式にはUAE政府やJETROの公式レポートで要確認です。

※上記数値はいずれも概算・推定レベルです。実際の統計は随時更新されるため、最新情報と照合してください。
フリーゾーン活用の基礎:日本人投資家が得られるメリット
アブダビで法人を設立する際、多くの外国人投資家が利用するのがフリーゾーン(Free Zone)と呼ばれる特別区域です。フリーゾーンとは各首長国政府が外国資本を誘致するために設置した経済特区で、その区域内で法人を設立・運営することで様々な優遇を受けられます。日本人投資家にとってフリーゾーンを活用するメリットは具体的に次のとおりです。
フリーゾーン制度の仕組みイメージ
UAE本土
- 一部業種を除き現地資本が必要
- 新法人税制度で最大9%課税
- 内地向けビジネスは自由(ただし業種許可が必要)
- ローカルスポンサーとの契約要(業種により例外あり)
フリーゾーン
- 100%外資所有が可能
- 原則法人税・所得税が免除(条件付き)
- 関税優遇(再輸出・保税対応など)
- 配当・資本の海外送金が自由
- 内地向けビジネスは不可(2重ライセンスで例外あり)
海外投資家(税制メリット / ビザ取得)
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※フリーゾーンは独自のライセンス要件・インセンティブがあるため、JETRO等で最新情報を確認してください。
日本人投資家が得られるメリット
法人税・所得税の免除
フリーゾーン内の法人は、原則として法人税や所得税が課されません。多くのフリーゾーンでは税制優遇が50年間保証され更新可能とされてきました。ただし2023年6月に導入されたUAEの新法人税制度下では、免税を享受するには会計監査の実施やUAE国内での非課税事業に限定する等の条件を満たす必要があります。
例えば、フリーゾーン企業がUAE本土(オンショア)で取引を行わず規定の要件を満たせば引き続き法人税ゼロ%とすることが可能です。一方、新制度では全企業が税務申告は必要で、年間課税所得が375,000AED(約1,350万円)未満の場合は実際の納税額は0円となります。要件を守れば事実上従来同様に無税でビジネス利益を享受でき、日本と比べ圧倒的なタックスメリットが得られます。
100%外資出資・完全所有
全てのフリーゾーンで外国人投資家は現地スポンサーや現地出資者を必要とせず、会社の持分を100%自分で所有できます。かつてUAE本土企業では現地資本51%以上が必須でしたが、フリーゾーンでは当初より外資100%が認められてきました(※2021年から一部業種では本土も外資100%可となりました)。日本人にとって「名義だけのパートナー」を立てる心配なく、自社の完全支配下で事業を運営できる安心感は大きなメリットです。
利益・資本の本国送金自由
フリーゾーン企業は、稼いだ利益や投下した資本を制限なく海外に送金できるのが一般的です。これは外貨規制の厳しい国と比べ大きな利点で、例えばアブダビで上げた利益を日本や第三国へ自由に移転し再投資できます。日本のような外為法制下でも、UAE側での送金制限がないためスムーズに資金移動が可能です。
関税優遇と輸出入の柔軟性
フリーゾーン内に輸入した物資には基本的に関税がかかりません。例えば製造業で原材料を輸入して製品を製造し、そのまま海外輸出する場合、関税負担なく取引できます。完成品をUAE本土に販売する場合のみ5%の関税が課されます。
さらに、もし製品の40%以上を現地付加価値で生産すれば、湾岸協力会議(GCC)諸国への輸出時に関税免除される制度もあります。このように貿易・物流面での優遇措置により、日本から遠い中東拠点であってもコストを抑えた事業展開が可能です。
為替・通貨の自由
フリーゾーン内では外貨利用に制限がなく、資本金の通貨や決済通貨を自由に選べます。UAEディルハム(AED)は米ドルにペッグ(連動)しているため通貨変動リスクが小さく、かつ日本円や米ドルなどへの両替・送金も容易です。日本人にとって為替リスク管理がしやすい環境と言えます。
高度なインフラとビジネス支援
多くのフリーゾーンはオフィスや倉庫、ITインフラなどビジネスに必要な施設を最新設備で整備しています。例えばアブダビの各フリーゾーンには入居企業向けの受付窓口があり、ライセンス更新や各種申請もワンストップで対応可能です。また法律・行政手続きや物流サポートなど、専門スタッフによる包括的なビジネス支援サービスが提供されるため、海外進出に不慣れな日本人でも安心して事業を開始できます。
設立手続の簡素さと迅速さ
フリーゾーンでの会社設立手続きは総じて簡便で迅速です。各フリーゾーン当局が企業誘致のため手続きを年々効率化しており、オンラインで完結する申請も増えています。ゾーンによって多少の差はありますが、会社設立からライセンス取得まで数日〜数週間程度で完了するケースも少なくありません。日本で会社設立する場合の煩雑な手続きと比べ、驚くほどスピーディーに法人を立ち上げられる点も魅力です。
柔軟な労務規制
フリーゾーンは各ゾーン独自の労働規則に従いますが、一般にUAE本土より柔軟な雇用環境となっています。例えば本土企業に義務付けられる給与支払いシステム(WPS)や、一定規模企業でのUAE国籍者の雇用義務(エミラティゼーション)などはフリーゾーンには直接適用されないケースが多いです。
従業員50名以上の本土企業では毎年2%のUAE人を雇用する必要がありますが、フリーゾーン企業にはこうした義務は原則ありません。少人数で始めるビジネスや専門人材を外国から集める事業にとって、身軽な労務管理ができる点はメリットと言えるでしょう(もっとも、UAE全体のコンプライアンス基準に則った人事管理は必要です)。
土地・建物の長期賃貸権
多くのフリーゾーンでは、法人設立後に土地または建物を最大50年間賃借でき、さらに延長オプションも用意されています。例えば一部のゾーンでは10年の延長を2回まで、あるいは25年間の延長が認められています。これにより長期的なビジネス計画が立てやすく、施設への投資も回収しやすくなります。
2重ライセンスの可能性
2025年の注目すべき動向として、アブダビ政府はフリーゾーン内の法人に対して「2重の事業ライセンス」を提供することを検討しています。これにより、アブダビのフリーゾーン内の法人がフリーゾーン外(アブダビ首長国の内地)において政府調達に参加できるようになる可能性があります。
既に金融特区であるAbu Dhabi Global Market(ADGB)では同様の運用が開始されており、今後他のフリーゾーンにも拡大する見込みです。これはフリーゾーン法人の活動範囲を大きく広げる重要な変化となるでしょう。
ネットワーキング機会
フリーゾーンでは特定業種の企業が集積しているため、同業他社や関連業者との繋がりが生まれやすくなります。例えばアブダビのメディア特区「twofour54」では、日本のコンテンツ企業が進出すれば現地の制作会社や配信プラットフォームとの協業チャンスが得られるでしょう。同じゾーン内にいるという物理的近さがビジネス交流を促進し、新規プロジェクトの創出や情報交換に役立ちます。
グローバル市場へのアクセス
中東のハブとしての立地もフリーゾーン活用の利点です。アブダビを含むUAEは欧州・アジア・アフリカの交差点に位置し、世界各地へのフライトも充実しています。現地に法人を構えることで、中東近隣諸国だけでなくアフリカ市場や南アジア市場へのビジネス展開拠点にもなり得ます。日本から遠く離れていても、UAEに拠点があることで24時間途切れないグローバルビジネス体制を構築できるでしょう。
以上のように、フリーゾーンを活用することで「低税率」「全額外資」「自由な資金移動」という恩恵を受けつつ、快適なビジネス環境で事業を営めます。特に税制面のメリットは日本国内では得難いため、富裕層を中心に「ドバイ・法人設立ビザ」の取得が注目されているほどです。アブダビでも同様に、フリーゾーン法人を設立して投資拠点や資産管理会社とすることで、日本では得られない恩恵を享受できるのです。
2025年版:アブダビ法人設立の実務プロセスと必要書類
メリットが多いアブダビでの法人設立ですが、具体的な手続きの流れや必要書類を把握しておくことが成功の鍵です。ここでは2025年最新版の情報を踏まえ、フリーゾーン法人設立の一般的なプロセスと必要書類を解説します。初めて海外で法人設立に挑戦する日本人投資家の方でも分かりやすいよう、順を追って説明します。
事業内容や投資目的に合ったフリーゾーンを選ぶ(ADGMやKIZADなど)。JETROの情報を参考に、業種・コスト・立地を事前に確認。
フリーゾーン当局の規定に沿って英語表記の会社名を決定。重複や公序良俗に反しないか確認。
出資者や代表者のパスポート、事業計画書、登記証明書(日本法人出資の場合)、定款の英語翻訳などを用意。
書類が整ったらオンラインまたは窓口で申請。登録手数料や商号予約料が必要な場合もある。
フレキシデスクや専有オフィスを契約。賃貸契約書を提出してフリーゾーンから認証を受ける。
審査が完了すると法人の設立証明書やライセンス(事業許可証)が発行され、正式登記が完了。
登記完了後、UAE国内の銀行で法人口座を開設。コンプライアンス審査をクリアする必要あり。
フリーゾーン当局から発行される企業IDを用いて投資家ビザや従業員ビザを申請。家族の帯同ビザも取得可能。
全て完了後、フリーゾーン法人として正式に事業活動をスタート。年次ライセンス更新や税務申告をお忘れなく。
フリーゾーン選択と事業形態の決定
まず、どのフリーゾーンに会社を設立するかを決めます。後述する通りフリーゾーンごとに業種適性や必要費用が異なるため、自身のビジネス内容や投資目的に合致するゾーンを選びましょう。また、会社形態としては一般的に「LLC(Limited Liability Company:有限責任会社)」が選択肢になります。
フリーゾーンによってはFZE(Free Zone Establishment)と呼ばれる単独株主のLLC形態や、複数株主のFZCO(Free Zone Company)といった呼称がありますが、いずれも有限責任の法人です。事業目的によって支店(Branch)や駐在員事務所を設立することも可能ですが、一般的な投資ビークルとしてはLLC形態が主流です。
商号(会社名)の決定
会社名を決めます。アブダビのフリーゾーンでは英語表記の会社名が必要で、既存企業と重複しない名称であることや、公序良俗に反しないことなどのルールがあります。名称末尾には「Ltd.」や「FZE」といった形態を示す語が付く場合もあります。希望する社名が使用可能かは各フリーゾーン当局のサイトで検索・予約が可能です。日本のように印鑑証明は不要ですが、名前はビジネス内容に相応しいものを選びましょう。
必要書類の準備
法人設立申請に必要な書類を用意します。一般的なフリーゾーン(例:JAFZAドバイ)のケースでは、以下の書類が要求されます。
- 申請書(所定フォーム)
- 事業計画書(英語)
- 出資者や代表者のパスポートコピー(UAE居住者であればビザのコピーも)
- 出資者が法人(日本企業など)の場合:親会社の登記証明書や営業許可証、会社定款の英語翻訳・公証版
- 親会社が出資者の場合:親会社の取締役会決議書(当該フリーゾーン法人の設立と代表者選任を決議したもの)
- 代表予定者および代理申請者の署名見本(フリーゾーン当局での認証が必要)
- KYC(顧客確認)および最終受益者(UBO)に関する申告書
- 代理人に申請を委任する場合の委任状(POA)
上記は一般例ですが、選択する業種によって追加書類(資格証明や資金証明など)が求められることもあります。また日本の法人書類を提出する場合、英語翻訳の上で在日UAE大使館とUAE外務省の認証(アポスティーユに相当)を取得する必要があります。これは日本企業が出資者となるケースで重要なステップです。個人出資の場合でも、パスポートのコピーは有効期限を確認し、綺麗にスキャンしたものを準備しましょう。
設立申請の提出
書類が揃ったら、フリーゾーン当局へ法人設立の申請を行います。多くのゾーンではオンラインポータルから申請フォーム入力・書類アップロードが可能です。自分で手続きを進める場合、英語での入力とメールでのやり取りが発生します。不安な場合は現地のビジネスコンサルタントやエージェントに代行を依頼することもできます。
申請時に登録手数料や商号予約料の支払いが必要になるゾーンもあります。申請が受理されると当局による審査が行われ、問題なければ予備承認(Pre-Approval)が下ります。
オフィス契約・賃貸
予備承認後、フリーゾーン内でのオフィスやスペースを確保します。多くのフリーゾーンでは、法人設立には何らかの物理拠点(オフィス、デスク、倉庫等)の契約が必要です。例えば、小規模ビジネスならフレキシデスク(共有オフィススペース)を年間契約し住所登録するケースがありますし、大規模事業なら専有オフィスや倉庫を賃借します。
アブダビのフリーゾーンでは、最小限のデスク契約でも数千ドル程度の年額料金が発生しますが、ビジネスの規模に応じて選択可能です。物件が決まったら当局に報告し、賃貸契約書(Lease Agreement)を提出します。施設が整っているフリーゾーンでは当局が物件紹介から契約までサポートしてくれる場合もあります。
法人登録料・ライセンス料の支払い
フリーゾーン当局から最終承認の連絡が来たら、登録料およびライセンス発行料を支払います。登録料は法人の設立登記に対する費用で、ライセンス料は事業活動許可の年次費用です。ゾーンや業種によって金額は異なりますが、概ね年間数千ドル(数十万〜百数十万円)規模です。
例えば、割安なフリーゾーンでITサービス業・ビザ1名の場合、年間更新費用は約80万円程度との報告があります。一方、金融業など特別なライセンスが必要な場合は費用が数百万円〜数千万円に跳ね上がることもあります。自社の業種に適したライセンス区分(商業、サービス、工業、など)を選択し、指定口座に費用を納付します。
定款署名・法人登記完了
支払い後、当局から発行される定款(AOA/MOA)などの書類に発起人や代表者が署名します。これは電子署名で完了する場合と、現地で直接署名する場合があります。必要に応じて代理人に委任状を発行し手続きを進めます。
全ての書類が揃い、当局による最終チェックが終わると法人設立証明書(Certificate of Incorporation)および事業ライセンス(Trade License)が発行されます。この段階で法人が正式に登記され、登記番号やライセンス番号が付与されます。ここまでの所要期間はゾーンによりますが、書類不備がなければ1〜4週間程度が目安です。
銀行口座開設・資本金払込
法人が設立できたら、UAE国内の銀行で法人口座を開設します。銀行によって必要書類は多少異なりますが、一般に法人設立証明書、ライセンス、定款、株主や取締役のパスポート、事業計画などが求められます。日本人の場合、各銀行のコンプライアンス審査があり、現地渡航して対面で手続きが必要なケースもあります。
無事口座が開設できたら、要求される最低資本金を入金します。フリーゾーンによって資本金要件は様々で、ADGMは無し、マスダールシティは50,000AED(約180万円)、KIZADは150,000AED(約540万円)などと定められています。資本金は銀行残高証明で確認されますが、通常は事業運営資金として引き出し・利用も可能です。資本金要件の無いゾーンでも、当座の運転資金を用意しておきましょう。
ビザ申請と人材採用
フリーゾーン法人のオーナーや従業員は、UAE居住ビザ(投資家ビザ・就労ビザ)を取得することができます。法人設立が完了すると、エスタブリッシュメントカードという企業IDが発行され、それを使ってビザ申請を行います。オーナー自身は投資家ビザを申請でき、家族の帯同ビザも取得可能です。
ビザの発給人数枠は契約オフィスの種類などによって決まり、例えば小規模オフィス契約なら1〜2名、大きなオフィスなら数十名分のビザ枠が与えられます。日本人投資家にとって、UAEビザを得られるのは居住・往来の自由や租税回避の観点で大きなメリットです。ビザ取得には健康診断やID登録など追加手続きが必要ですが、これもエージェントに依頼可能です。
法人運営開始と各種届出
以上で法人設立の一連のプロセスは完了し、晴れてアブダビのフリーゾーン企業として事業を開始できます。設立後は、毎年のライセンス更新(通常1年毎)と事業報告を忘れずに行いましょう。特に2025年以降は、新法人税制度に則った年次の会計監査・税務申告が必要になります。
たとえ税額が0であっても申告義務がありますので、現地の会計士と契約して対応すると安心です。また、対象業種の場合は経済実態(ESR)報告や最終受益者登録などのコンプライアンス対応も必要です。UAE当局やフリーゾーンからの通知はメールで届くため、見逃さないようにしましょう。
なお、フリーゾーン法人は基本的にUAE国内(本土)への営業活動ができない点に注意が必要です。フリーゾーン会社がUAE本土で事業展開するには、現地代理店と契約するか別途本土法人を設立する必要があります。例えばアブダビ市内の顧客と直接取引したい場合、フリーゾーン法人単体では許可されず、ローカルサービスエージェントを立てる必要があります。
ただし前述の通り、2025年には一部ゾーンで2重ライセンス制度が導入される可能性があり、この制約が緩和されるかもしれません。いずれにせよ、この制約を理解し、自社ビジネスの範囲を計画してください(海外への輸出やフリーゾーン間取引が中心なら問題ありません)。
また、オフィス賃料や光熱費など運営コストは現地では高めとなる傾向にも留意が必要です。税負担が軽い分、都市部のオフィス家賃やスタッフの給与水準が日本より高額になるケースもあります。事前に十分な資金計画を立て、節約できるところは工夫するなど、総合的に収支バランスを検討しましょう。
以上のポイントを押さえておけば、アブダビでの法人設立手続きを円滑に進められるはずです。
主要フリーゾーンエリアと選定ポイント:日本人投資家向け比較
アブダビ首長国にはいくつかの主要フリーゾーンが存在し、それぞれ提供するインセンティブや適した業種が異なります。どのフリーゾーンで法人を設立するかは、投資戦略の成否を左右する重要な決断です。日本人投資家にとって、自身の事業目的に最も合致しメリットを最大化できるエリアを選ぶことが成功への近道となります。ここではアブダビの代表的なフリーゾーンについて特徴を解説し、選定時のポイントを比較してみましょう。
選定ポイントまとめ
フリーゾーン | 特徴 | 許可業種 | 最低資本金 | 主要メリット | 留意点 |
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ADGM (Abu Dhabi Global Market) | 金融特化の国際金融センター 英米法ベースの司法制度 | 金融業、資産運用、 コンサル・法律・会計サービス、 フィンテックなど | 0 AED | 英米法準拠で透明性高い環境 信用力ある金融ライセンス取得可能 100%外資所有・税制優遇 | オフィス賃料高め 金融ビジネスは要資格審査 高度なコンプライアンス必要 |
KIZAD/KEZAD (Khalifa Industrial Zone Abu Dhabi) | 貿易・物流・工業特化 ハリファ港直結で大型コンテナ対応 | 製造業、貿易業、 サービス・物流支援、 軽工業・重工業 | 150,000 AED | 広大な土地・インフラが充実 関税免除や保税管理が容易 大規模工場設立に最適 | 市街地から遠く通勤に留意 重工業向けでオフィス街感は薄い 工場・設備投資に計画的資金が必要 |
Masdar City | 環境未来都市のフリーゾーン 再生可能エネルギー推進地区 | 再生可能エネルギー関連、 クリーンテック、IT・通信、 マーケティング、ヘルスケアなど | 50,000 AED | サステナブル企業のブランド力 空港に近くアクセス良好 中小企業向けオフィスも充実 | 環境系ビジネス以外の優遇は少ない 開発途上で施設や住居が限られる 将来的ポテンシャルは大きい |
twofour54 | メディア・エンターテイメント特化 映画撮影やゲーム産業を誘致 | 広告代理店、映像制作、 アニメ・ゲーム開発、 イベント管理、出版など | (要問い合わせ) | 撮影スタジオや編集設備が豊富 政府補助あり・海外映画ロケ誘致 フリーランスも登録可能 | メディア関連以外の許可が限られる 検閲やコンテンツ規制の理解必要 中東メディア市場に特化 |
ADAFZ (Abu Dhabi Airport Free Zone) | 空港系フリーゾーン 空港に隣接し物流拠点に最適 | 物流・貿易・航空サービス、 Eコマース倉庫、医薬品輸送など | (要問い合わせ) | 空港アクセス最適 輸送・通関がスムーズ ハイテク・医薬品の物流にも有利 | 空港特化で他業種は向かない 大規模用地の拡張余地は限られる 倉庫や保管料が高め |
注目新情報:ドバイのスポーツ・エンターテインメント専用フリーゾーン
2025年3月11日、ドバイ首長国政府はスポーツとエンターテインメントに特化した世界初のフリーゾーンを創設することを発表しました。国際スポーツ・エンターテインメントゾーン(International Sports & Entertainment Free Zone:ISEZA)と名付けられたこの新ゾーンは、ドバイ・ワールド・トレード・センター(DWTC)フリーゾーン内に開設され、スポーツとエンターテインメントのビジネス活動に特化したライセンス取得を促進します。
ISEZAは、スポーツマネジメントやマーケティング、イベントマネジメント、タレントエージェンシー、メディアや放送などの業種に加え、eスポーツやAIを活用したスポーツテクノロジー、ファン・トークンなどの新興分野の進出も支援する予定です。スポーツやエンターテインメント関連のビジネスを展開したい日本企業にとって、この新しいフリーゾーンは魅力的な選択肢となるでしょう。
以上、主要なアブダビのフリーゾーン5箇所と新たなドバイのフリーゾーンの特徴を見てきました。それぞれを比較すると、ADGM=金融、高規制環境、KIZAD=工業・物流、大規模用地、Masdar=環境・テック、利便性、twofour54=メディア、支援厚、ADAFZ=物流・空港、即応性といった色合いです。日本人投資家がフリーゾーンを選定する際には、以下のポイントを総合的に判断すると良いでしょう。
- 事業分野との適合性: 自分のビジネス(または投資目的)が金融なのか、製造なのか、ITなのか、メディアなのかを考え、適したゾーンを選ぶ。専門特区の方が業界ネットワークや支援が受けやすい。
- 設立・維持コスト: 初期登録料やオフィス賃料、必要資本金、年次ライセンス料を比較。規模に見合ったゾーンを選ぶ(予算に余裕があればADGMなども可、コスト重視ならMasdarや郊外ゾーンが安価)。
- ビザ枠と人材確保: 将来従業員を増やす計画があるなら、ビザ発給枠の多いゾーンやオフィスプランを検討。都市部の方が外国人専門人材を採用しやすい点も考慮。
- 立地と利便性: 空港近くが良いのか、港湾アクセスが重要か、市街地の方が良いか。例えば日本と頻繁に往来するなら空港そばのADAFZやMasdarは魅力。ドバイなど他首長国との往来も視野に入れる。
- ゾーン当局のサポート: 日本語対応の有無や、ビジネスマッチングイベント、インキュベーション制度など当局のサービス内容もチェック。初めての海外進出ならサポート厚いゾーンが安心。
- 長期的展望: ゾーンごとの将来性(拡張計画や政府方針)も見据える。ADGMやMasdarは国家戦略的プロジェクトで今後も発展が期待できますし、twofour54も地域メディア拠点として拡大中です。それぞれの成長性が自社の長期リターンに影響し得ます。
以上を踏まえ、「どのフリーゾーンで法人を設立するか」という戦略を練ってください。自社の強みとゾーンの特徴がマッチするほど、アブダビ進出の成功率とリターンが高まるでしょう。