エジプトの銀行口座の開設方法とメリット・デメリットを徹底解説|日本人が知るべき最新情報

本記事では、エジプトでの銀行口座開設に関する総合的な情報を提供します。エジプトの高金利環境と規制緩和により、日本人投資家にとって魅力的な選択肢となっているエジプト銀行口座について、開設方法からメリット・デメリット、さらには最新の不動産投資情報まで詳しく解説します。

口座開設の具体的手順、必要書類、主要銀行の特徴、リスク管理のポイントなど、現地での金融取引に必要な知識を網羅しており、エジプトでの資産運用やビジネス展開を検討している方に役立つ情報が満載です。

目次

エジプトの銀行口座が注目される理由

高金利で資産運用チャンス

エジプトの銀行口座が注目される最大の理由は、その定期預金や貯蓄口座の金利の高さにあります。エジプト中央銀行はインフレ抑制のため政策金利を大幅に引き上げており、2024年末時点で預金金利は27.25%にも達しました。これは日本の低金利と比べ桁違いに高く、銀行によっては年利30%に及ぶ3年定期預金商品まで登場しています。

例えば国営のエジプト国立銀行(NBE)やミスル銀行では、初年度利率30%の預金証書を発売し話題となりました。日本では考えられない金利水準のため、高金利通貨エジプトポンドで資産を増やしたいという投資目的で口座開設を検討する人が増えています。

エジプト政策金利の推移(2021〜2024年)
エジプト政策金利の推移(2021年〜2024年)
日本の低金利(0.x%)との比較で、高金利の魅力が明確に。

為替差益・新興国投資への関心

エジプトは人口1億人を超える大国であり、経済成長やインフラ開発が進む新興市場です。将来的にエジプトポンドが安定・上昇すれば為替差益も期待できるため、新興国通貨への分散投資先として注目されています。

またエジプト株式・債券への投資、あるいは不動産購入といったビジネス展開を考える日本人にとって、現地の銀行口座を持つことは必須インフラです。口座があれば現地通貨での投資資金のやりくりや収益の受け取りがスムーズになり、ビジネスチャンスを逃さずに済むでしょう。

外国人の口座開設規制緩和

従来、エジプトでは外国人が銀行口座を開設するには長期滞在許可証(イカーメ)が必要とされ、観光目的の短期渡航者にはハードルが高い状況でした。加えて銀行から雇用証明書(HRレター)の提出を求められるなど、国外居住者には実質困難な条件もあったのです。

しかし2024年8月、エジプト中央銀行(CBE)は国内銀行に対し「非居住外国人のための口座開設」を認めるよう通達を出しました。これによりエジプトに住んでいなくても外国人が現地の銀行口座を開ける道が公式に開かれたのです。エジプト当局は、正規の銀行ネットワークを通じて海外資金を呼び込むことで、資金流出リスクを減らし銀行セクターの健全性を保つ狙いがあります。

この規制緩和は日本人投資家にとっても朗報で、短期の渡航でも口座開設が可能になるなど利便性が高まりました。以上のように、「高金利による資産運用メリット」と「規制緩和による手続き容易化」が重なり、エジプトで銀行口座を開設する価値が近年急上昇しています。他にも、後述するようなメリット(現地決済の円滑化など)もあり、日本人にとってエジプトの銀行口座は非常に魅力的な選択肢となってきています。


エジプトの銀行口座を持つメリット・デメリット

エジプトの銀行口座には魅力が多い一方、当然ながらリスクやデメリットも存在します。ここではメリットとデメリットを整理して解説します。

エジプト銀行口座開設:メリット・デメリット比較イラスト

メリット

  • 高金利による利息収入
    エジプト中央銀行の政策金利は2024年末に27%を超え、
    一部銀行では年利30%近い定期預金も登場。
  • 人口1億超の国内市場
    JETRO情報によると、エジプトの人口は約1.05億人。
    広大な市場を背景に投資機会が拡大。
  • 法人設立や現地ビジネスの信用力向上
    現地銀行口座保有により取引先・官公庁の信用度アップ。

デメリット

  • 為替変動リスク
    インフレ率の上昇に伴いエジプトポンドが大幅に下落する場合があり、
    円換算で元本割れの可能性も。
  • ビジネス環境の変動
    政情や経済政策によって外貨送金など
    規制変更が生じる恐れがある点に注意。
  • 口座開設の手間・言語の壁
    手続きは対面が多く、英語対応が十分でないケースも。
    書類の不備や認証手続きに時間がかかる場合がある。

エジプト口座を持つ主なメリット

高金利による利息収入

前述の通り、エジプトポンド建ての預金金利は非常に高く設定されています。年利20~30%に達する定期預金もあり、元本が増えるスピードは日本の銀行預金(年利0.xx%程度)とは比較になりません。

仮にエジプトで口座を開設し100万円相当をエジプトポンドで1年間定期預金した場合、単純計算で20~30万円の利息が得られる計算です(税引前)。これは円預金では到底得られない収益機会と言えるでしょう。ただし、この高利回りは高インフレ・通貨安の裏返しでもある点には注意が必要です(後述)。

資産分散と為替分散

日本円資産だけでなく、新興国通貨であるエジプトポンドや、場合によっては米ドル建て預金口座も持つことで資産の通貨分散が図れます。仮に円安が進行した場合、エジプトポンドや米ドルで資産を保有していれば円換算で評価額が増える効果が期待できます。日本国内から直接エジプトポンド建ての資産を持つことは難しいため、現地口座を通じて初めて得られる分散投資メリットと言えます。

現地投資・ビジネスの円滑化

エジプトで不動産投資や現地企業への出資、または駐在員として事業運営を行う場合、現地の銀行口座は決済や資金管理の要となります。例えば不動産購入ではエスクローとして口座が必要ですし、家賃収入の受け取りや管理費の支払いも現地口座があればスムーズです。

また法人を設立して事業を行う際も、売上入金・経費支出用の法人口座は不可欠です。エジプトの銀行口座を持っていれば、こうしたビジネス上の資金移動を円建てではなく直接現地通貨で行えるため為替手数料を節約でき、取引先からの信頼感も高まるでしょう。

現地通貨へのアクセス利便性

頻繁にエジプトを訪れる方にとっても、現地口座を持つメリットは大きいです。エジプトでは銀行口座に紐づくデビットカードでATMから現地通貨を引き出せます。口座があれば渡航時にまとまった外貨現金を持ち歩く必要がなく、現地ATMで必要分だけエジプトポンドを引き出すことが可能です。

またホテル代やサービス料金を現地口座からの振込で支払えるケースもあり、キャッシュレスで安全・便利に旅費管理ができます。エジプト国内のオンライン決済や銀行送金も口座さえあれば利用できるため、長期滞在時の資金繰りが飛躍的に向上します。

(法人向け)エジプト現地企業の信用力向上

日本企業がエジプトで法人を設立し銀行口座を開くことは、その企業の現地における信用力アップにもつながります。国営銀行の口座を持っていることで、取引先や官公庁から「正式に現地参入している企業」と認識されやすくなります。また給与振込や税金支払いなどを自社名義の口座で行えるため、ガバナンス面でもメリットがあります。

エジプト口座の注意点・デメリット

通貨リスク(エジプトポンドの為替変動)

最大のデメリットは為替リスクです。エジプトポンド(EGP)は近年大きく価値を下げており、2022年~2023年にかけて対米ドルで半値以下になる大幅な切り下げが行われました。インフレ率も一時38%に達するなど自国通貨の信認が揺らいだ時期があり、2025年現在も変動が続いています。

仮に年利20%の利息を得ても、それ以上に為替レートが下落しては日本円ベースでは元本割れとなってしまいます。高金利=高リスクの裏返しである点を認識し、エジプトポンド建て資産には必ず為替変動リスクが付きまとうことに注意が必要です。リスクヘッジとして、得られた利息分を定期的に米ドルや日本円に両替してリスク分散する方法も検討すると良いでしょう。

口座開設手続きの手間と言語の壁

エジプトでの口座開設手続きは、日本のようにオンラインで完結とはいかず、基本的に現地支店での対面手続きが必要です。渡航や現地での時間確保といった手間・コストがかかります。また、公用語はアラビア語であり銀行職員も英語対応が十分でない場合があります。主要銀行では英語窓口がありますが、日本語はまず通じません。書類もアラビア語表記が中心となるため、自力で手続きを進める場合言語の壁は大きなハードルです。

フリーランスの日本人が自力で現地口座を作ろうとした例では、複数回の来店や友人の通訳協力などで1~2か月かかったとの報告もあります。このように、外国語・異文化での煩雑な手続きをクリアする負担はデメリットと言えるでしょう。

エジプト国内の経済・政治リスク

エジプトは新興国ゆえの経済変動や政情リスクも抱えています。例えば外国為替不足が深刻化すれば、銀行が外貨の引き出しや送金に制限をかける可能性もゼロではありません。また万一エジプト国内で政情不安や金融危機が発生した場合、預金の引き出し制限や最悪場合によっては預金封鎖のリスクも考慮せねばなりません。

こうしたカントリーリスクは日本国内の銀行では意識しない要素ですので、エジプト特有のリスクとして念頭に置く必要があります。

各種手数料コスト

後述するように、エジプトの銀行口座では残高維持手数料や送金手数料など各種フィーが発生します。特に外貨送金時の為替手数料が割高だったり、最低残高を下回ると毎月定額の口座維持料が差し引かれたりと、運用利回りを目減りさせるコストが潜在しています。日本と異なる手数料体系になっているため、口座開設前に十分把握しておかないと思わぬコスト負担に繋がる点はデメリットです。

(法人向け)開設審査・コンプライアンス負担

日本人がエジプトにて法人口座を開設する場合、資金の出所や事業内容について銀行の厳格な審査を受けることがあります。特に現地で新規に法人設立したケースでは、銀行側も慎重になるため口座開設承認まで時間を要したり追加資料提出を求められたりすることもあります。

また開設後も年次でのコンプライアンス確認(KYC更新)への対応が必要になる場合があり、日本本社のコンプライアンス部門とも協力して書類を整える負担が発生し得ます。これらは法人利用特有のデメリットと言えるでしょう。

開設前に知っておきたい基礎知識:必要書類と事前準備

エジプトで銀行口座を開設するにあたり、どんな書類が必要で、事前に何を準備すべきかを把握しておきましょう。個人で開設する場合と法人(会社名義)で開設する場合とで必要書類が異なりますので、それぞれ分けて説明します。

個人名義・法人名義の必要書類フローチャート

エジプトで銀行口座を開設する際、個人法人では準備すべき書類が異なります。下記の簡易フローチャートを参考に、手続きの流れを把握しましょう。

個人名義

STEP 1パスポート・ビザの準備

  • 有効期限の十分なパスポート
  • 観光ビザまたはイカーメ(滞在許可証)

STEP 2現地住所の証明

  • 友人宅や賃貸物件の場合:光熱費請求書など
  • ホテル滞在の場合:フロントに住所証明を依頼

STEP 3在職証明・収入証明

  • 勤務先からのEmployment Letter(英文)
  • フリーランスの場合:銀行口座残高証明や確定申告書類

STEP 4初回資金の用意

  • 最低預入額(例:NBEで500EGPまたは100USDなど)

法人名義

STEP 1定款・商業登記証明書の取得

  • 定款(アラビア語&英訳)
  • 商業登記証明書(エジプト当局発行)

STEP 2現地オフィス契約書

  • 賃貸契約書など、住所実体を示す書類

STEP 3代表者の身分証明

  • パスポート&エジプト滞在ビザ
  • 代理人の場合:委任状(公証済み)

STEP 4会社概要書の準備

  • 株主構成や事業内容(英文)
  • 必要に応じてCV(履歴書)提出

STEP 5資本金の払い込み計画

  • 最低資本金(例:一般的な株式会社で5000万EGP以上など)
  • 送金方法・送金先の銀行を事前に決定

※JETROのエジプト情報によると、法人設立時には商業登記手続き・資本金払い込みが必須となります。必要書類が揃わないと口座開設審査に時間がかかる場合がありますので、計画的な準備をおすすめします。


エジプトで信頼できる主要銀行:選び方と特徴

エジプトには数多くの銀行がありますが、日本人が口座開設を検討する際に候補となるのは信頼性が高く外国人対応に慣れた主要銀行でしょう。ここではエジプトの主要銀行をいくつか紹介し、それぞれの特徴や選び方のポイントを解説します。

銀行名最低預入額主な金利(一例)口座維持手数料補足
国立銀行(NBE)500EGP
または100USD
25%前後
定期預金1年
10EGP/月
(残高500EGP未満時)
国営系。店舗数が多く外国人対応に実績あり。
ミスル銀行(Banque Misr)500EGP
または100USD
25%前後
定期預金1年
10EGP/月
(残高500EGP未満時)
国営系。2024年前後に高利回り商品を連発。
CIB(Commercial International Bank)1,000EGP
または同等外貨
15~20%程度
(口座種別により変動)
残高要件未達時
50EGP/月
民間最大手。英語対応が充実し、外貨口座も豊富。
HSBCエジプトなし
(口座種別による)
10~15%程度
(USD定期預金など)
平均残高30,000EGP
未達なら月額数百EGP
外資系。グローバルネットワークを活用でき、
富裕層向けのサービスが充実。

国営銀行系

エジプト政府系の大手銀行としては、国立銀行(National Bank of Egypt, NBE)とミスル銀行(Banque Misr)が二大巨頭です。これらはエジプト国内最大規模の支店網と預金量を誇り、歴史も古く信頼性が高いです。国営銀行の強みは、エジプトポンド建ての高金利商品をいち早く提供する点です。

実際、NBEやミスル銀行は政府の方針に沿って30%近い高金利定期預金を発売するなど積極的で、エジプトポンドで運用益を最大化したい人に向いています。反面、サービス面ではやや旧来的で手続きに時間がかかる傾向があります。外国人対応も本店や主要支店では可能ですが、地方支店では英語が通じにくい場合もあります。しかし国営銀行で口座を持つことは現地社会での安心感があり、「とりあえず一つ口座を作るならNBE」という駐在員も多いようです。

民間エジプト資本の銀行

民間系で代表的なのがCIB(Commercial International Bank)です。CIBはエジプト最大の民間銀行で、都市部を中心に広いネットワークを持ち、オンラインバンキングなどサービス品質の高さで定評があります。特に外国人顧客向けの専門部署「CIB Overseas」を設けており、海外在住者でもリモートで銀行サービスを利用できる体制を敷いています。CIBはエジプトポンドだけでなくUSDやEUR建て口座も容易に開設でき、マルチカレンシー対応が柔軟です。

さらに同行は口座残高に応じたプレミアサービスもあり、高額預金者には専任担当が付くなどきめ細かいサービスも特徴です。「英語でのオンラインサービス重視」「外貨預金も活用したい」という方にはCIBは有力な選択肢でしょう。同様に民間エジプト系ではアレキサンドリア銀行(Alex Bank)やカイロ銀行(Banque du Caire)なども中堅行として存在しますが、日本人から見た情報量や実績ではNBE/ミスル/CIBに比べると少なめです。

外資系銀行

エジプトには国際銀行も進出しています。代表例がHSBCエジプトとシティバンク(エジプト支店)です。HSBCはグローバルバンクならではの洗練されたインターネットバンキングと幅広いサービスが魅力です。窓口対応も英語が確実に通じ、場合によっては日本のHSBC(香港やシンガポール支店など)との連携で口座開設手続きを進められることもあります。

例えば日本のHSBCプレミア口座を持っている場合、エジプトのHSBC口座開設をサポートしてもらえる可能性があります。もっとも、外資銀行は最低預金額や口座維持条件が高めである点に注意が必要です。一方、シティバンクはエジプトではリテール業務を縮小しており、富裕層向けのサービスが中心です。英語対応は問題ありませんが支店数が限られます。

そのほか、アラブ系のQNBアルアハリやアブダビ・イスラム銀行など中東の大手行もエジプト国内で営業しています。外資系を選ぶメリットはなんといってもサービスの質とグローバルな利便性ですが、金利面では国営・民間エジプト系に及ばないことが多いです。用途に応じて選択するとよいでしょう。

イスラム銀行

エジプトにはイスラム金融原則に基づく銀行も存在します。例えばファイサル・イスラミック銀行やアルバラカ銀行などがあり、利子でなく投資分配方式の口座を提供しています。日本人がメリットを感じる場面は少ないかもしれませんが、イスラム銀行は預金者と銀行が利益とリスクを共有する独特の運用を行うため、「利息」という概念に宗教上抵抗がある場合に選択肢となります。

ただし一般的には非イスラム系の日本人投資家であれば、上記の国営・民間・外資系銀行から選べば十分でしょう。銀行の選び方ポイント:総じて、エジプトで銀行を選ぶ際はまず自分の優先事項を整理するとよいです。例えば「とにかくエジプトポンドの高金利を狙いたい」ならNBEやミスル銀行が候補ですし、「英語での快適なネットバンキングが最優先」ならCIBやHSBCが向いています。

支店の立地も考慮ポイントです。駐在等でカイロやアレクサンドリアに住むなら問題ありませんが、地方に長期滞在する場合、その町に支店・ATM網がある銀行を選ぶ必要があります。国営銀行は地方までカバーしていますが、外資系は主要都市中心です。また、口座の目的も重要です。個人資産運用が目的なのか、ビジネス決済が主目的なのかで適した銀行や口座種別が変わってきます。

ビジネスなら法人口座開設に慣れた銀行(国営銀行は官公庁との取引も多く法人対応に慣れている)を選ぶべきですし、個人運用なら利率やサービスで選ぶとよいでしょう。最後に、可能であれば複数銀行の口座を用途別に開設することも検討してください。エジプトでは一人で複数の銀行口座を持つことに制限はなく、リスク分散の観点からもおすすめです。例えば「メインバンクとしてNBEでポンド建て運用」「サブとしてHSBCで外貨用口座」という具合に併用すれば、それぞれの長所を活かせます。


口座開設の具体的ステップ:店頭とオンラインの流れを徹底解説

ここでは、実際にエジプトの銀行口座を開設する際の具体的な手順を詳しく見ていきます。基本となる店頭(支店窓口)での開設フローと、オンラインでの手続き可能性について、それぞれ解説します。

店頭での口座開設ステップ

エジプトでは原則として銀行の支店を訪問して口座開設を行います。以下は一般的な店頭手続きのステップです。

1. 銀行・支店の選定と訪問予約(任意)

まずは口座を開きたい銀行と具体的な支店を決めます。主要都市の本店や大規模支店は外国人対応に慣れているためおすすめです。可能であれば事前に電話やメールで「外国人だが口座開設希望」と連絡し、担当者とアポイントメントを取っておくとスムーズです。

2. 支店窓口での受付

来店したら受付で口座開設希望を伝えます。英語で「I would like to open a bank account.」で通じます。整理券を取って順番を待つか、受付係がいれば誘導に従います。大抵の場合、新規口座開設担当のブースに案内されます。

3. 申込書類の記入

担当者から渡される口座開設申込用紙(Account Opening Form)に必要事項を記入します。氏名・生年月日・国籍・住所・職業・年収レンジなど典型的な項目のほか、税務上の居住地(日本)や他国籍の有無なども質問されます。言語は英語のフォームが用意されていることが多いですが、場合によっては職員が代筆してくれることもあります。

4. 必要書類の提出

上記「基礎知識」で準備したパスポートやビザ、証明書類一式を提出します。担当者がコピーを取ったり内容を確認したりします。エジプトでは書類確認に時間がかかる場合もあるので、不備なく揃えていることが重要です。特にHRレターや収入証明について質問されることがありますので、英語で簡潔に仕事内容や収入源を説明できるようにしておきましょう。

5. 初回預入(金銭のデポジット)

申込書と書類に問題がなければ、その場で初回入金を行います。銀行によりますが、個人口座なら数百エジプトポンド程度(もしくは同等のUSD/EUR)が最低預入額となっていることが多いです。例えば国立銀行(NBE)では個人口座の場合500エジプトポンドまたは100米ドルが口座開設時の最低預入額です。

現金で持参していればそのまま預け入れ、無ければクレジットカードからキャッシングして入れるか、海外送金で後日入金する形になります(ただし口座番号が発行されるまで海外送金はできないので、この場である程度の現金を用意しておく方が確実です)。

6. 口座番号・IBANの発行と契約完了

手続きが完了すると、新しく割り当てられた口座番号(および国際送金用のIBAN)が通知されます。通帳はエジプトでは一般的に発行されず、代わりに口座開設確認書類(Welcome Letterなど)がもらえるか、口座番号が記載された契約書コピーが渡されます。ここまでで晴れて口座開設自体は完了です。

その後、オンラインバンキング利用登録やデビットカード発行手続きに進みます。

7. オンラインバンキングの登録

希望すればオンラインバンキング(インターネットバンキング)の利用申し込みも行います。その場で担当者が登録を行い、一時パスワードを発行してくれる場合と、後日自分で初期登録する場合があります。いずれにせよユーザーIDや初期パスワード情報が提供されますので、大切に保管してください。オンラインバンキングを使えば日本から口座残高確認や振込指示ができるようになります。

8. デビットカードの発行

国際キャッシュカード/デビットカード(CirrusやVisaデビットなど)の発行も同時に申請します。カードは即日受け取れないケースが多く、発行に2~4週間程度かかるのが一般的です。エジプト国内住所があれば郵送してもらえますし、日本住所へ国際郵送も対応してくれる場合があります。

旅行者で長く滞在できない場合は、カードは後日郵送で受け取る形にし、今回は口座開設のみに留めるケースもあります。ただしカードがないとATM引き出しができませんので、日本に戻ってからカード受領となる場合はオンライン送金で資金を動かすなど代替手段を考えておきましょう。

9. その他サービスの案内

必要に応じて小切手帳(Checkbook)やクレジットカードの案内を受けることもあります。ただ、初めての外国人顧客にはすぐにはクレジットカード枠は与えられない場合が多いです(一定期間の口座実績が必要)。

以上が店頭での一連の流れです。所要時間は銀行や混雑状況によりますが、書類不備なく順調に進めば1~2時間程度で完了します。エジプトでは担当者によって案内に差があったり、複数の承認サインを内部で回す関係で待ち時間が長くなったりすることもありますので、時間に余裕を持って臨みましょう。

なお、一度で完了せず「追加書類を持って再来店」と言われるケースもあります。その際は指示に従い、できるだけ速やかに不足書類を提出しに行きます(何度か銀行に足を運ぶのは珍しくありませんので粘り強く対応しましょう)。

オンラインでの口座開設は可能か?

完全オンラインでの新規口座開設についてですが、2025年現在、エジプトの銀行では外国人が日本からオンラインのみで口座を開設する仕組みは整っていません。口座開設には対面での本人確認や書類提出が法的に必要とされるためです。したがって、日本に居ながらウェブや郵送だけでエジプトの銀行口座を作るのは基本的に不可能と考えておきましょう。

しかしながら、オンライン手続きを一部活用することは可能です。例えばHSBCエジプトでは公式サイト上から口座開設予約や問い合わせができますし、CIBでもオンライン上で連絡を取って口座開設サポートを受けることができます。

また2024年以降、エジプト政府は在外エジプト人向けに大使館経由で口座開設できるようなオンライン申込制度を導入し始めています。このスキームは主にエジプト国籍者対象ですが、外国人にも将来的に門戸が開かれる可能性があります。

現時点で日本人がオンラインでできることとしては、

  • 事前情報入力
    銀行の公式サイトで口座開設希望フォームに入力し、現地訪問時の手続きを簡略化してもらう。

  • 必要書類リストの入手
    Eメール問い合わせにより事前に必要書類や申込用紙を取り寄せておき、渡航前に準備を万全にする。

  • 既存顧客プログラムの活用
    もしあなたがHSBCやシティバンク等のグローバル銀行の既存顧客であれば、同銀行のエジプト支店に口座開設をオンラインで照会してもらえるケースがあります。

  • 代理人サービスの利用
    信頼できる現地コンサル会社にオンラインで依頼をかけ、書類準備や当局対応を代行してもらう。ただし最終的なサインのためには本人渡航が必要になることが多いです。

このように、「完全非渡航」は難しいものの、オンラインも駆使しながら手続きを楽にすることは可能です。特に2024年の中央銀行通達で外国人の口座開設が促進されて以来、各銀行とも従来以上に柔軟な対応を取り始めています。「外国からでも開設したい」という要望に応えるべく今後オンライン手続きが拡充される可能性もありますので、最新情報をウォッチすると良いでしょう。

ワンポイントアドバイス:実務上は「短期の渡航で手続きを完了させ、残りはオンライン活用」という形が現実的です。例えば旅行や出張でエジプトに1~2日立ち寄り、その間に口座開設の主要手続きを済ませて帰国。残りのカード受け取りや追加対応はオンライン・郵送でフォローする、といった手順です。

実際、エジプト口座開設サポートを行う企業の中には「最短1日滞在で口座開設&デビットカード申込まで完了」と謳うところもあります。プロのサポートを使えばそれも可能ですが、自力でも計画的に動けば短期間で開設自体は十分可能です。オンラインとオフラインを上手に組み合わせ、時間と手間を節約しましょう。


口座維持手数料・最低預入額のチェック:メリットを損なわないために

エジプトの銀行口座を運用する上で見落としがちなのが各種手数料や口座維持条件です。高金利に目を奪われても、手数料負担が大きいとメリットが相殺されかねません。ここでは代表的な費用項目と各銀行の条件を確認します。

最低預入額と口座維持手数料

多くのエジプトの銀行では、口座維持のための最低残高が定められており、それを下回ると毎月所定の手数料が差し引かれます。例えばエジプト国立銀行(NBE)の普通預金口座では、最低残高500エジプトポンドが必要で、残高がそれを切ると毎月10エジプトポンドの維持手数料がかかります。500ポンドは現在のレートで約2,000~3,000円程度ですが、10ポンドの手数料は約40~60円程度です。

金額自体は小さいものの、1年間続けば120ポンド(500円強)となり利息収入を目減りさせます。従って、最低残高は常に維持するよう心がけましょう。一方、外資系銀行では最低残高の基準が高めです。HSBCエジプトの例では、「毎月平均残高30,000エジプトポンド(約12万円)または2,000米ドル相当」を維持することが求められます。これを満たさないと口座種別によっては月額数百ポンドの手数料が発生する仕組みです。

プレミア口座など上位口座ではさらに高額の預け入れが必要です。したがって、外資系で口座を開設する場合は自分がその最低要件をクリアできるか事前に確認が必要です。なお、NBEのような地元銀行では口座開設手数料が数十ポンドかかる場合があります(NBEでは個人口座開設に50ポンド)。またデビットカードの年会費や再発行手数料、小切手帳発行手数料など細かな費用項目もありますので、口座開設時に手数料一覧表をもらっておくと良いでしょう。

金利と税金の関係

エジプトの銀行利息には税金も絡みます。エジプトでは銀行預金の利息に対し源泉徴収税が課される場合がありますが、2023年時点ではエジプトポンド建て預金の利息は非課税とされていました。一方でエジプト国債の利息などには約20%の源泉税が課されています。

最新の税制は変わり得るため明確に断言できませんが、仮にエジプトで利息に課税があっても非居住者である日本人は租税条約の適用で減免される可能性もあります。実際のところ、日本に住む個人が海外で得た利息は日本の所得税(雑所得)課税対象ともなるため、税務面の手取りは専門家に確認しつつ計算する必要があります。税金自体は口座メリットを直接「損なう」というより、利回り計算に組み込むべき要素と言えますが、見落とすと予想外のコストになり得ます。

その他の費用項目

国際送金手数料

日本からエジプト口座へ資金を送金したり、エジプトから日本へ送金したりする際の手数料です。エジプト側の受取手数料や中継銀行手数料が差し引かれるため、1回の送金で数千円~1万円程度のコストが発生することもあります。頻繁な送金はコスト増になるため、まとめて送金する、あるいはWiseなど手数料の安い国際送金サービスを検討するのも手です。

ATM引出手数料

エジプト国内ATMで自銀行のカードを使う分には無料~ごく低額ですが、日本など国外ATMでエジプトのカードを使って現地通貨を引き出す場合、1回あたり数百円+為替手数料がかかります。緊急時以外は国外ATM利用は避け、銀行送金などで資金移動する方が安く済むでしょう。

口座休眠手数料

長期間取引がない口座に対し、休眠手数料がかかる場合があります。例えば2年間まったく動きのない口座は「Dormant(休眠)」扱いとなり、再開通に手数料が必要な銀行もあります。年に1度は入出金するなどして休眠化を防ぐのが安全です。

これら手数料を把握し、高金利だから多少手数料が差し引かれても大丈夫と安易に考えず、可能な限り手数料負担を減らす工夫をしましょう。具体的には「最低残高を下回らない」「余計な頻度で送金しない」「長期間放置しない」などが基本対策となります。

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オクマン編集部 中東担当チームです。ドバイ、アブダビ、エジプトの不動産市場の専門家が集結し、有益な情報をお届けします。

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