フィリピンの不動産のメリットとデメリット:日本人向けの成功ノウハウ

目次

はじめに:フィリピン不動産投資の魅力と背景

フィリピンは近年、アジアでもトップクラスの経済成長を遂げる国として注目を集めています。人口は約1億1,317万人(2024年時点)と非常に大きく、平均年齢は25.7歳と若年層の労働力に恵まれている点が魅力です。

購買力の向上と都市化の進展に伴い、コンドミニアムやオフィスビルへの需要が拡大しており、海外投資家にとっても魅力ある不動産投資先として注目度が急上昇しています。

日本国内では低金利環境が長期化し、投資リターンの確保が難しくなる一方、フィリピン不動産投資では比較的高い利回りと成長性が期待できます。 しかしながら、メリットだけでなく為替変動リスクや法制度上の制約など、デメリットもしっかり把握しておく必要があります。本記事では、日本人投資家が成功するために知っておきたい「フィリピン不動産」のメリットとデメリットを体系的に解説します。

フィリピン不動産市場の特徴と最新動向

経済成長率

フィリピン政府は2025年にかけて年6~7%の成長を目標に掲げています。複数の機関予測では、2025年の経済成長率を5.9%(BofA予測)から6.1%(IMF予測)と見込むなど、アジア地域でも高い伸びが期待されます。

人口ボーナス

フィリピンの人口は毎年約1%のペースで増加しており、2025年末には1億1,800万人に達する見通しです。若い労働力が内需拡大のエンジンとなっており、首都圏(メトロ・マニラ)の都市化が加速している点が不動産需要を底支えしています。

都市開発の加速

地下鉄や新空港、郊外鉄道などのインフラ整備が進行し、完成時期が重なる2024~2025年には周辺地域の不動産価値が上昇すると期待されています。

BPO産業の隆盛

コールセンターやバックオフィスを中心に、BPO(Business Process Outsourcing)産業が急拡大しています。英語力の高い若年人口を背景に、オフィス需要や従業員の居住需要が増大しており、不動産市場の活性化に寄与しています。

銀行融資の増加

フィリピンの不動産融資総額は2024年末時点で3兆3,100億ペソに達し、前年比5%増となっています。住宅用不動産ローンが9.6%増加し、商業用ローンも6.9%伸びるなど、融資面でも市場は活況です。

以下のグラフはフィリピン不動産市場の特徴と最新動向を示しています。経済成長や人口増加、都市開発などの影響が可視化され、今後の投資機会を考える上での重要な指標となります。

フィリピン不動産市場の特徴と最新動向を示すグラフ

フィリピン不動産のメリット(利点)

高成長経済と若年人口による安定需要

フィリピンのGDP成長率は過去数年、5~7%の水準を維持しており、今後も年6~7%程度を目標とする政策が継続するとみられています。 人口は毎年約1%のペースで増加し、若年層の豊富な労働力が国内消費と住宅需要を下支えします。マニラ首都圏を中心に、賃貸物件が不足気味のエリアでは空室率が低く、長期的な安定投資が期待できます。

以下の表は、フィリピンの人口推移と平均年齢の変化を示したものです。

人口(百万人)増加率(%)平均年齢
2019年108.11.424.5
2022年111.01.325.3
2025年(予測)114.01.226.0

マニラ首都圏を中心に、賃貸物件が不足気味のエリアでは空室率が低く、長期的な安定投資が期待できます。

高い賃貸利回りとキャッシュフローの期待

日本国内の不動産賃貸利回りが3~4%前後で推移するのに対し、フィリピンでは5~7%程度の表面利回りが一般的とされ、物件によっては8%超となるケースも報告されています。物件価格もシンガポールや香港など他のアジア主要都市と比べると割安感があり、投資額に対して十分なキャッシュフローを得やすい点が魅力です。

また、即入居可能(RFO)物件に対する銀行融資の条件緩和が進んでおり、住宅市場がさらに活発化する見込みもあります。

外国人にも比較的開かれた投資環境

フィリピンは英語が公用語であり、契約書や法令、物件情報の大半が英語で整備されているため、日本人投資家にとって言語の壁が低い点は大きなメリットです。さらに首都圏を中心に海外資本が流入しており、日本を含む多国籍デベロッパーの参入が相次いでいます。親日的な国民性と相まって、投資家が現地で活動しやすい環境が整いつつあります。

インフラ開発と資産価値上昇のポテンシャル

政府主導のインフラ開発(例:メトロ・マニラ地下鉄、MRT-7、郊外の新空港など)が進むことで、周辺の不動産価値が上昇する見込みがあります。 ボニファシオ・グローバルシティ(BGC)やケソン市北部などの新興エリアは大規模再開発が続いており、将来のキャピタルゲイン(値上がり益)を狙いやすい点は他国にない魅力といえるでしょう。

フィリピン不動産のデメリット(リスク)

為替リスク(フィリピンペソと日本円)

フィリピンペソと日本円の為替変動は、投資リターンに大きな影響を与えます。投資時に円をペソに換え、売却や賃料回収後に再び円転する過程で、円高になれば実質的な利益が減少し、円安なら増加する可能性があります。2025年には1ドル=61ペソを突破する予測もあり、為替リスクを織り込んだシミュレーションが不可欠です。

流動性と需給バランスの変動

マニラ首都圏ではコンドミニアムの新規供給が増え、中古物件の流動性が下がる局面があります。市況が悪化すると買い手が少なくなり、売却が長期化する恐れがあります。また、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター(POGO)規制などの影響で一部エリアの空室率が上昇し、家賃相場が軟調になるリスクも指摘されています。賃貸需要や需給バランスを見極める調査が欠かせません。

外国人所有権の制限と法制度上のハードル

フィリピン憲法では外国人による土地所有が禁止されており、コンドミニアムの区分所有に関しても全体ユニットの40%までと制限があります。土地付き物件の取得には法人設立や現地パートナーとの提携など、複雑なスキームが必要となる場合もあります。法務・税務の専門家を活用しないと、思わぬトラブルに発展するリスクがある点は注意が必要です。

税制・費用面の負担と運用の煩雑さ

購入時:印紙税(1.5%)、不動産譲渡税(6%)などが発生。新築の場合はVAT(付加価値税)が12%課税されるケースもあります。

保有時:固定資産税(Real Property Tax)、管理組合費、火災保険料など。
賃貸収入時:非居住外国人には25%の源泉課税が適用され、経費控除が限定的です。
売却時:キャピタルゲイン税(6%)や仲介手数料(3~5%)の負担があります。

こうしたコストを正確に把握しないまま投資を進めると、当初計算していた利回りを大きく下回る可能性があります。

遠隔管理の難しさとトラブルリスク

日本からフィリピンへの距離や言語・文化の違いから、現地管理会社への委託は必須となります。滞納や設備故障、クレームなどの対応は管理会社任せになるため、対応品質やスピードにばらつきが生じる可能性があります。英語でのコミュニケーションも必須となるため、プロセスの透明性やコスト管理が難しくなる点には注意が必要です。

投資成功のためのポイント

エリア選定の徹底調査

物件の立地や交通アクセス、周辺施設、将来のインフラ開発計画などを精査し、需要の強いエリアを選びましょう。

信頼できる現地パートナーの確保

日系または評判の高いローカル業者と提携し、管理や客付け、書類手続きなどのサポートを受けられる体制を整えることが重要です。

複数シナリオでのシミュレーション

為替相場の変動、空室リスク、売却時の値下がりなど、保守的な予想を含めた試算を行い、無理のない資金計画を立てましょう。

長期保有と出口戦略

短期転売は各種コストが重くリスクが大きいため、インフラ完成や経済成長に合わせて中長期保有し、タイミングを見計らって売却する方が堅実です。

定期的な情報収集と専門家の活用

経済状況や税制改正、開発プロジェクトの進捗などの最新情報を随時アップデートし、税理士や弁護士、不動産コンサルタントの助言を受けることでリスクを最小化できます。

下記は投資成功のためのポイントをフローチャート形式でまとめたイメージです。

① エリア選定

需要の強い地域を徹底リサーチ。
(マカティ、BGC、ケソン市など)

② 現地パートナー選定

評判の高い日系・ローカル業者を選び、
手続きや管理をサポートしてもらう

③ シミュレーション

賃貸収入・税金・費用を試算。
保守的なケースを含めて計画を立てる

④ 長期保有・出口戦略

インフラ完成や経済成長を見据え、
売却タイミングを柔軟に設定

⑤ 最新情報の取得

JETRO等の公的データを参考に、
景気・政策動向を常にチェック

まとめ

フィリピン不動産投資は、若年人口による内需の拡大や政府の積極的なインフラ開発、BPO産業の成長などを背景に高い利回りと値上がり益を期待できる魅力的な市場です。 さらに、2025年までに政策金利が5%まで引き下げられる可能性が取りざたされるなど、融資環境が追い風となるシナリオも指摘されています。

一方で、為替リスクや法制度上の制約、税金・諸経費の負担、遠隔地ならではの管理上の問題など、懸念材料も少なくありません。成功を収めるためには、専門家の助言や十分なシミュレーション、現地事情に即したリサーチが欠かせないでしょう。

「フィリピン不動産」のメリット・デメリットを正しく理解したうえで、ご自身の投資戦略に合った物件を選定し、長期的な視点で運用していくことが大切です。インフラ整備や経済成長の恩恵を活かしながら、健全なリスク管理を行うことで、日本人投資家にとって魅力的な収益機会を得られる可能性があります。ぜひ慎重かつ大胆に挑戦してみてください。

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

目次