【完全版】フィリピン不動産購入マニュアル:手順から注意点まで徹底解説

フィリピンでの外国人所有権制限:基本の再確認
フィリピン不動産:外国人所有フローチャート
不動産を購入したい外国人
(コンドミニアムか、土地付き物件か)
外国人所有
可(最大40%)
外国人名義OK
原則
外国人名義不可
配偶者名義 / 法人設立など
土地所有は原則禁止、ただし建物はOK
フィリピン憲法では外国人の土地所有を厳しく制限しており、外国籍個人は土地を直接所有できないという原則があります。一方、建物(コンドミニアム等)については所有が可能で、特にフィリピンの分譲マンションに相当するコンドミニアムは、外国人でも区分所有権を取得できます(物件全体で外国人所有比率40%までという規定あり)。
代表的な所有形態
- コンドミニアム
外国人が単独名義で取得可
敷地(土地)部分は管理組合(Condominium Corporation)が所有
建物区分(ユニット)に対してCCT(Condominium Certificate of Title)が発行される - 戸建て(土地付き)
外国人単独名義では所有不可
フィリピン人配偶者名義、現地法人名義、長期リース契約などで間接的に保有
こうした制限は投資戦略にも大きく影響するため、「自分が本当に欲しいのはコンドミニアムか、それとも土地を含む戸建てか?」を明確にし、必要があればフィリピン人パートナーや法人スキームを活用することになります。
どうしても土地付き物件を買いたいなら
外国人がフィリピン土地付き物件を取得する手段比較
通常は不可
フィリピン人配偶者名義
- メリット: 手続きが比較的簡易
- デメリット: 法的所有権は配偶者にあり、離婚・相続リスク
- 注意: 事前にリスク共有・契約書などで保護策を
現地法人(外資40%以下)
- メリット: 法人名義で土地所有可能
- デメリット: 共同出資者が必要、運営コスト増
- 注意: 外国人出資比率は40%まで
長期リース(最大50年+25年)
- メリット: 所有権なしでも長期利用可
- デメリット: 期間終了で返還義務、転売が難しい
- 注意: 契約内容を細部まで確認
外国人が買える物件タイプ:コンドミニアム vs. 戸建て
コンドミニアム(Condominium)の特徴
土地を共有持分として扱うため、外国人名義取得が可能
建物区分所有権を証明するCCT(Condominium Certificate of Title)が発行
転売・賃貸がしやすい(流動性が高い)
管理組合(Condominium Corporation)が共用部を管理し、管理費が毎月発生
デベロッパーの信用度によって建物品質や資産価値が大きく左右される
市街地中心部(マカティ、BGC、オルティガスなど)では表面利回り5〜8%前後も狙える
注意点:外国人所有比率40%ルール
人気エリアの物件では既に外国人枠が埋まっており、購入が難しい例もあります。事前に「外国人枠がまだ残っているか」を確認しましょう。
戸建て・タウンハウスの特徴
外国人単独名義はNG(原則)
「コンドミニアム形式のタウンハウス」であれば可能なケースもあるが数は少ない
都市中心部よりも郊外に多く、セキュリティや利便性を考えると投資物件としてはハードルが高い
フィリピン人配偶者名義や法人名義での取得には人間関係や会社管理のリスクが伴う
権利証(タイトル)の種類:TCTとCCTを正しく理解する
TCT(Transfer Certificate of Title)
土地に関する権利証
一戸建てや土地売買時に発行
外国人名義では基本的に発行されない(例外は法人または配偶者名義など)
土地の所有者が誰か、抵当権や差押えがないかを示す最終的な証拠書類
CCT(Condominium Certificate of Title)
コンドミニアムの区分所有権証書
各ユニットごとに発行され、外国人購入者にも名義登記が可能
コンドミニアム法人が土地を所有し、各オーナーは専有部分の建物権利と敷地共有持分を所有
チェックポイント
- 名義人は正しいか(スペル、婚姻後の姓変更など)
- 担保・抵当権や差押えの履歴(Liens and Encumbrances欄)
- 共有名義かどうか(売却には共有者全員の同意・署名が必要)
- 最新原本か(登記所でCertified True Copyを取り寄せ)
- Tax Declaration(固定資産税申告書)との整合(名義や評価額、未納税がないか)
- 管理組合の未納費用やテナントの有無(CCT購入時には管理費滞納がないか必ず確認)
信頼できるデベロッパー・仲介業者をどう選ぶか
デベロッパー選定基準
- 実績と信用度
大手(Ayala Land, SMDC, Megaworld, Robinsons, DMCIなど)は倒産リスクや工事遅延リスクが比較的低い
新興や無名デベロッパーは価格が安い場合があるが、工事中断や違法販売の可能性がある - 許認可(License to Sell)の確認
DHSUD(旧HLURB)が発行する販売許可の有無
これが未取得のプロジェクトには注意 - 財務状況・資金繰り
上場企業なら財務諸表を確認
未完成物件の場合は「完成引渡しまで自己資金が潤沢か」もリスク判断材料 - 契約書の透明性
売買契約(Contract to Sell)の支払いスケジュールや遅延時補償、引渡し時期の取り決めが明確か
仲介業者(ブローカー)選定基準
- ライセンス(PRC発行)保持
正式な不動産ブローカーかを確認。名刺や免許証番号の提示を求める
「日本語対応」を謳う無資格エージェントには注意 - 実績と得意エリア
マカティ、BGCなど主要ビジネス街を主に扱うブローカーか、郊外中心かで情報の質が変わる
管理・賃貸も一貫サポートしてくれるところなら購入後も安心 - 資金取り扱いの透明性
予約金や手付金を「仲介業者の個人口座」に振り込ませるケースは要注意
原則、売主またはデベロッパー名義の正式口座へ直接送金するのが安全
フィリピン不動産購入手順【徹底ガイド】
フィリピン不動産購入 手順イメージ
・投資目的(賃貸 or 売却益?)
・自己資金 + ローン枠を確認
・ネット/ブローカーから情報収集
・エリアと予算を絞って内覧
・希望価格提示(LOI)
・売主と合意 → 予約金支払い
・CTS or DOSを公証人前で署名
・支払い条件 & 契約内容を確認
・残金入金 & 領収証受領
・鍵や書類を引き渡してもらう
・BIRで税金納付
・Registry of Deedsで名義書換え完了
ここからは、実際の購入フローをステップ形式で解説します。日本と比べて手続きが複雑に見えますが、一度流れを押さえればスムーズに進行可能です。
ステップ0:購入目的・資金計画の明確化
- 目的:賃貸収入かキャピタルゲインか、それともセカンドハウス的利用か
- 予算:自己資金+ローンを含めた総額はいくらまで可能か
- 期間:完成前物件か完成済物件か、いつから運用収益を得たいか
ステップ1:物件情報収集・現地視察
- エージェントやポータルサイトで情報収集(価格相場や利回り、エリア人気度を比較)
- 現地視察・内覧(オンライン内覧も可)
- 建物設備、周辺環境、治安、交通利便性などをチェック
- 賃貸に出す場合はターゲット層(駐在員かローカル富裕層か)を想定し内装・間取りを検証
- デューデリジェンス(法務・物理調査)
- 売主提出のCCT/TCTや納税証明を仮確認し、所有者や担保の有無をチェック
- 必要に応じてエンジニアや弁護士に詳細調査を依頼
ステップ2:購入申し込みと手付金支払い
- 希望条件の提示(LOI:Letter of Intent)
- 購入金額、支払いスケジュール、その他条件
- 売主との交渉・合意
- 価格交渉が決着したら、Reservation Fee(予約金)やEarnest Money(手付金)を支払い優先交渉権を確保
- 予約合意書の署名
- 予約金は多くの場合返金不可
- 期日までに本契約(Contract to Sell等)を締結しないとキャンセル扱いになることも
ステップ3:正式売買契約の締結
- 新築・分割払いの場合:まずContract to Sell (CTS)を交わし、契約解除条件や分割支払いスケジュールを明確化
- 完成済物件 or 中古物件:最終的にはDeed of Absolute Sale (DOS)を公証人の前で署名し、公証手続きを実施
- 支払い方法・税金負担区分・引渡し期日・遅延や不履行時のペナルティなどを細かく確認
ステップ4:決済と物件引き渡し
- 残金支払い
売主指定の口座に送金し、領収証(Official Receipt)を受領。ローン利用の場合は銀行が直接売主へ支払い - 鍵・設備・書類の引き渡し
CCT/TCT原本、管理費滞納なし証明、最新の固定資産税領収書などを受領。
テナントがいる場合、賃貸契約の引き継ぎなども確認
ステップ5:登記・名義変更
- BIR(国税局)での税金納付
売主負担の6%キャピタルゲイン税(CGT)と買主負担の1.5%印紙税(DST)
納付後にCAR(Certificate Authorizing Registration)を取得(1ヶ月程度) - 地方税(Transfer Tax)と固定資産税の手続き
市役所で譲渡税(0.5〜0.75%)を納付し、Tax Clearanceを得る - Registry of Deedsで登記申請
CCT/TCTの名義書換え申請→約1〜2ヶ月後に新タイトルが発行 - Tax Declarationの名義変更
地方自治体のAssessorで固定資産税の納税名義を更新
これにて正式に所有権が買主へ移転し、物件を自由に売却・賃貸できるようになります。
購入時の注意点【リスク回避チェックリスト】
契約相手と書類の真正性
- 売主本人確認:パスポートやID(政府発行)で照合。共有名義なら全員の同意署名が要る
- CCT/TCTの真正性:登記局発行のCertified True Copyを取り寄せ、「偽造」や「二重売買」がないか確認
契約書内容の精査
- 英語契約書の理解:専門用語がわからないまま署名しない。専門家の翻訳・リーガルチェックを活用
- 遅延・未払い時のペナルティ:何回分割滞納すると没収か、違約金はいくらか
- 譲渡税等の負担区分:売主6%CGT・買主1.5%DSTが一般的だが、新築時に買主に転嫁するデベロッパーもある。契約書で明記
送金・支払いの安全性
- 正式名義人の口座へ振り込む
- 海外送金時のレート・手数料をチェックし、送金証明を保管
- エスクロー利用:大口取引や不安要素がある場合は、弁護士や第三者機関を通す
マセダ法の理解(分割払い中途解約の救済制度)
- 24ヶ月以上支払った場合:最大50〜90%の返金を受けられる
- 実務では返金請求に手間と時間がかかるため、最初から支払い計画を無理なく設定する
為替リスク・政治リスク
- ペソ建て投資のため円安時には返済負担増や送金額増の可能性
- 政権交代や不動産税改正など、長期的にウォッチが必要
代表的な契約書のポイント:Reservation・CTS・Deed of Sale
Reservation Agreement(予約申込書)
- 予約金支払いでユニットを押さえる
- キャンセル時の返金ポリシーが厳しく、通常「返金不可」
- 名義変更やユニット変更には手数料がかかることが多い
Contract to Sell(CTS)
- 将来の譲渡を約する契約。主に未完成物件・分割払い購入時に締結
- 支払いスケジュールや引渡し時期、デベロッパー側の遅延対応などが詳しく書かれる
- 違約解約時の返金率やマセダ法適用の有無を要チェック
Deed of Absolute Sale(DOS)
- 所有権が最終的に移転することを確定する譲渡契約書
- 公証人(Notary Public)による認証が必要
- 売買金額や当事者氏名に誤りがないか厳重に確認
- 実際の売買価格より低く記載する(脱税目的)は厳禁。将来売却時に不利益が発生する
登記手続きの詳細:BIRからRegistry of Deedsまで
BIR(国税局)での税金納付とCAR取得
- CGT(6%)・DST(1.5%)を納付
- 必要書類:公証済DOS、売主・買主ID、評価証明書など
- 処理期間:通常1ヶ月前後(地域による差大)
地方税(Transfer Tax)と固定資産税手続き
- 市役所で譲渡税(0.5〜0.75%)を支払い
- 未納の固定資産税があれば売主が精算
Registry of Deedsでの名義変更
- 前オーナー名義のTCT/CCT原本、CAR、公証DOSなどを提出
- 登録料(約0.25%)を支払い
- 1〜2ヶ月後に新CCT/TCTが発行
Assessor(地方自治体)でTax Declaration名義変更
- 取得した新タイトルを提示して、所有者を買主に更新
- 翌年以降の固定資産税通知が買主宛になる
全行程で2〜3ヶ月、遅れると半年以上かかることもあるため、専門家のサポートを得るのがおすすめです。
税金・諸費用をイメージする:具体的な例
項目 | 負担者 | 税率 / 計算方式 | 具体例(800万ペソ) |
---|---|---|---|
キャピタルゲイン税(CGT) | 売主 | 売買価格の6% | 800万 × 6% = 48万 |
印紙税(DST) | 買主 | 売買価格の1.5% | 800万 × 1.5% = 12万 |
譲渡税(Transfer Tax) | 買主 | 売買価格の0.5〜0.75% | 800万 × 0.75% = 6万(マカティ例) |
登記料(Registration Fee) | 買主 | 売買価格の約0.25% | 800万 × 0.25% = 2万 |
公証料(Notary Fee) | 買主 | 売買価格の0.5〜1%が目安 | 800万 × 0.5% = 4万 〜 8万 |
たとえばマカティにある中古コンドミニアムを800万ペソで購入する場合を想定してみます(2024年時点)。
- 売主負担
キャピタルゲイン税(CGT):6% → 800万ペソ × 6% = 48万ペソ - 買主負担
印紙税(DST):1.5% → 800万ペソ × 1.5% = 12万ペソ
Transfer Tax:0.75%(マカティの場合) → 6万ペソ
登記料:0.25% → 2万ペソ
公証料:売買価格の0.5〜1%(約4万〜8万ペソ)
合計買主負担例:12万 + 6万 + 2万 + 5万(仮の公証料) = 25万ペソ程度(約物件価格の3%前後)
さらに管理費や税務申告費用など運用コストも見込む必要があります。新築や高級物件ではVAT(12%)が加算される場合もあるので、購入前に諸費用を必ず試算しましょう。