【2025年最新】マレーシアの法人設立ガイド:手続き・費用から税制までを完全解説

目次

2025年最新!マレーシアで法人設立を行う意義とは

マレーシア法人設立の基本的なメリット

日本人がマレーシアで不動産投資をする場合、現地法人を使うことで外国人名義では取得しにくい物件を法人として購入できる可能性が広がります。外資100%保有が比較的容易という環境や、安定した政治・経済基盤が特徴です。また、リスク分散効果(有限責任)や、銀行融資の活用もしやすく、個人名義よりも規模を拡大しやすい利点があります。

ポイントは、外国人でも設立できる非公開有限会社(Sdn. Bhd.)という枠組みがあること。最低資本金が緩和され、手続きがオンライン化された結果、設立しやすさは東南アジアでもトップクラスと言えます。さらに、マレーシア政府が外資を積極誘致しており、不動産投資ビザや税制面での優遇策も随時検討されています。

日本人投資家が注目する背景と理由

東南アジアでの成長性と親日的な国民性から、マレーシアは日本企業や個人投資家に好まれる国の一つです。実際、マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)制度により、資産要件を満たせば長期滞在ビザを取得しやすく、物件の現地視察や法人経営にも取り組みやすくなります。

この制度は2024年6月に条件が大幅に変更され、「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」の3段階クラスが導入されました。プラチナ(預金額500万リンギット、約1億6000万円)は永住権取得の可能性があり、ゴールド(200万リンギット、約640万円)は15年、シルバー(10万リンギット、約320万円)は5年のビザ有効期間が設定されています。

また、マレーシア不動産・住宅開発協会(REHDA)によると、2025年の不動産取引額は1,800億リンギット(約6兆1,200億円)と高水準を維持する見通しです。2023年は1,968億リンギット、2024年は2,232億リンギットと2年連続で過去最高を更新しており、首都圏や主要都市ではオフィス需要や住宅需要が堅調で引き続き活況が予想されています。

マレーシア経済成長や投資動向に関するグラフ

マレーシア法人の主要形態:不動産投資に適した選択肢

外資系法人の種類と特徴

マレーシアで外国人が設立可能な法人としては、以下が主な形態です。

法人形態設立要件外資比率法人税制主なメリット・デメリット
Sdn. Bhd.
(私立有限会社)
最低資本金1リンギット(実務上は数万リンギット以上推奨)
取締役1名以上(うち1名はマレーシア居住)
会社秘書役の選任必須
100%24%
(中小企業優遇あり)
メリット:ライセンス取得しやすく、外資100%出資可
デメリット:ローカル取締役要件や年次報告など、コンプライアンスが必須
ブランチオフィス
(支店)
親会社の登記書類を提出しローカル登記
支店責任者の選任
N/A24%メリット:新規法人を作らずに活動可能
デメリット:親会社が直接責任を負う/銀行融資が不利になる場合あり
ラブアン法人
(Labuan Company)
ラブアン島で登記/オフショア事業が中心
会計・監査要件は簡易
100%3%または0%
(オフショア税制)
メリット:オフショア税制など税優遇が大きい
デメリット:本土不動産取得時は規制が厳しく、投資対象が限定される
LLP
(有限責任パートナーシップ)
パートナー2名以上
マレーシア居住代表者の選任
業種による24%
(通常法人と同様)
メリット:柔軟な経営形態で設立手続きが容易
デメリット:不動産投資では認知度が低く、利用例が少ない

不動産投資に有利な法人形態の選び方

不動産を取得・賃貸するだけなら、Sdn. Bhd.が第一選択肢です。

  • 資本要件も実質的に緩やかで、初期費用や手間を抑えられる。
  • 物件所有名義人として州政府の認可を得やすい。
  • 金融機関からのローン審査でも一般的な形態として認知されている.

もし大規模な開発プロジェクト(分譲マンションを建設して販売など)を想定している場合は、住宅開発業者ライセンスなど別途の許認可が必要になるため、法人形態だけでなくブミプトラ割当やJV(合弁)などの検討も含め、より入念な計画が求められます。

事前準備と要件:日本人投資家がチェックすべきポイント

資本金要件と出資比率の確認

マレーシア会社法で最低資本金は1リンギットとなりましたが、実務上は数万~数十万リンギットほど用意するのが一般的です。特に、就労ビザ(Employment Pass)を取る際には、給与額に応じた条件があります。就労ビザは以下の3つのカテゴリーに分類されています。

  • カテゴリーI:月給10,000リンギ以上、5年まで有効、家族帯同可
  • カテゴリーII:月給5,000~9,999リンギ、2年まで有効、家族帯同可
  • カテゴリーIII:月給3,000~4,999リンギ、1年以下有効、家族帯同不可、更新は最高2回まで

不動産投資・賃貸をする法人の外資出資比率には、基本的に上限はないと言われています。

ただし、建設業や特定の戦略産業に踏み込む場合は別途規制があり、ブミプトラ資本比率を一定以上確保する必要が生じることも。投資対象や将来展開を専門家と相談し、最適な資本構成を組んでください。

取締役・株主要件とローカル代理人の有無

Sdn. Bhd.には、最低1名のマレーシア居住取締役が必要です。これは国籍ではなく居住要件なので、MM2Hや他の長期滞在ビザを持つ日本人でもOK。ただ、適任者がいない場合は、信頼できる現地パートナーやプロの「名義取締役」を紹介してもらうケースもあります。

また, 会社秘書役(Company Secretary)もマレーシア在住で資格保有者でなければならず、設立後30日以内に選任が義務付けられています。秘書役はSSM(会社委員会)への年次報告や書類提出を代行するため、しっかりとコミュニケーションがとれる専門家を選んでください。

必要書類と専門家(会計士・弁護士)の選定

以下のような書類・専門家選定が必要となります。

  • パスポートコピーや住所証明(英語翻訳付)、取締役就任承諾書などの書類
  • 会社の基本情報(社名、事業目的、資本金額、株主構成など)を英語でまとめておく
  • 弁護士や会計士を通じて定款(Memorandum & Articles of Association)を作成する場合もある
  • 不動産投資専門の弁護士や会計士を選定し、購入予定物件の法的調査やライセンス取得を一貫して任せられる体制を整える

マレーシア法人設立の手続きフロー:最新2025年版

会社名確認からSSM登録までのステップ

社名のネームサーチ
SSMのオンラインシステムで希望社名を申請。類似名や公序良俗に反しないか審査される。
通常1営業日程度で結果が出る。

設立登記申請(スーパー・フォーム)
会社情報(資本構成・役員リスト等)をオンラインで入力し、登録料を支払う。
添付書類として取締役宣誓書、パスポートコピーなどが必要。

登記完了通知の受領
申請に問題がなければ数営業日で完了通知が発行される。
これで正式に法人格が付与され、Company No.が付与される。

マレーシア法人設立のオンライン申請フローチャート

ステップ1:
会社名検索(ネームサーチ)
SSMのオンラインシステムで希望社名を検索・予約
ステップ2:
設立登記申請(スーパー・フォーム)
MyCoID/MBRSにログインし、会社情報・役員リスト・資本金額を入力
ステップ3:
登記完了通知の受領
数営業日後にSSMから通知が発行され、正式に法人格が付与

オンライン申請の流れと注意点

  • MyCoIDやMBRSなどSSMのポータルサイトで行う
  • 書類の不備があると再申請になるので、事前に弁護士や会社秘書役のチェックを受けるとスムーズ
  • 電子署名や実質的所有者(BO)の申告など、2024年以降の改正点に留意

設立にかかる期間・費用の目安

期間:書類準備含めて1~2週間ほど。追加照会や繁忙期で長引く場合もある。

費用:

  • 会社名申請料:50リンギット
  • 登録料:1,000リンギット(小規模Sdn. Bhd.の場合)
  • 秘書役・代行手数料:数千リンギット~(サービス内容により変動)
  • バーチャルオフィス利用料なども考慮

総額としては数十万円程度を見ておくと安心です。

コンプライアンスと法務リスク:投資家が避けるべき落とし穴

会社法・不動産法に関する主要規制

会社法(Companies Act 2016)
年次財務諸表と年次報告(Annual Return)の提出が義務。
実質的所有者(BO)の登録義務もあり、違反時の罰則が厳しい。

不動産関連法(州政府の承認)
州によって外国人の最低購入価格が異なる。
購入物件がその基準を下回る場合は承認が得られず契約無効になるリスクがある。

住宅開発法
分譲開発を無免許で行うと罰金や懲役の可能性。保証金や販売広告の許可も必要。

違反時のリスク・処罰例

  • 年次報告未提出:罰金や会社の強制抹消(Strike Off)の恐れ
  • 無許可の住宅開発:デベロッパーライセンスなしで分譲を開始し、高額罰金・刑事処分になった外国企業の事例あり
  • RPGT過少申告:追徴課税や100%相当のペナルティが科されることも

リスク回避のための実務ポイント

  • 専門家チームとの定期監査:会社秘書役・会計士・弁護士と四半期ごとに状況確認
  • 書面と記録の徹底:州政府許可書類や契約書類を全てファイリング
  • 正規ルートで手続き:不透明な口利きや賄賂は厳禁
  • 継続的な情報アップデート:政府や業界ニュースをチェックし、最新規制に即応

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

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