日本人必見!マレーシア不動産賃貸市場の最新動向と投資チャンスを探る

マレーシア不動産賃貸市場は、日本人投資家にとって魅力的な投資先として近年注目を集めています。 安定した経済成長や人口増加を背景に賃貸需要が拡大し、さらに都市部の再開発やインフラ整備が進むことで新たな投資チャンスが生まれています。
本記事では、マレーシアの賃貸市場が注目される理由からエリア別の家賃動向、物件タイプごとの利回り、賃貸契約の実務ポイントまでを包括的に解説します。将来的な見通しやリスク管理のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
マレーシア不動産賃貸市場が注目される理由とは?
賃貸需要が高まる背景
マレーシアの不動産賃貸市場は近年、需要が著しく増加しています。その背景には、若い世代の都市部への流入や人口増加による住宅需要の拡大があります。
また、新型コロナ禍以降、経済的不安から「まずは賃貸」を選ぶ人が増えました。例えば2021年第四四半期には賃貸需要が前年同期比で約57.9%増加したとの報告があり、ローン取得が難しく購入を断念した人々が賃貸に流れていることが要因とされています。さらに、マレーシア国内の住宅価格高騰や金利上昇も相まって「手持ち資金不足で買えないから賃貸する」層が増えています。
ある調査では、高い物件価格や金利を理由に購入を諦め、約65%もの人が賃貸を選択しているとの結果も報告されています。
マレーシア特有の住宅供給事情
マレーシアの住宅供給は国特有の事情を抱えています。一つは需要と供給のミスマッチです。都市部では高級コンドミニアム開発が盛んで、外国人投資家からの需要も取り込みつつ価格上昇が続いていますが、一方で地元中間層向けの手頃な住宅は不足気味です。
クアラルンプール都心のコンドミニアム価格は過去5年で20%以上も上昇したのに対し、新興エリアのジョホールバルでは開発ラッシュによる供給過多で価格停滞も見られます。また、マレーシアでは州ごとに外国人購入規制(物件価格の最低基準など)があり、高額物件に供給が偏る傾向も指摘されています。
政府も「Affordable Housing(手頃な住宅)」プロジェクトを進めていますが、需給ギャップの是正には時間がかかる状況です。
現地の経済成長や都市開発との関係
マレーシアは安定した経済成長を背景に都市化が進み、不動産市場全体が発展しています。GDP成長率は年4~5%台を維持(政府予測)し、特にクアラルンプール首都圏では再開発やインフラ整備が活発です。経済成長に伴う雇用機会の増加や可処分所得の向上が住宅ニーズを押し上げ、賃貸需要を底支えしています。
また、観光業やサービス業の発展によって外国人駐在員・長期滞在者も増加傾向にあり、彼らが賃貸市場に新たな需要をもたらしています。経済成長と都市開発の相乗効果で「住みたい場所」が増え、結果として不動産賃貸市場への注目度が高まっているのです。
エリア別に見る賃貸需要の特徴と家賃水準
都市部主要エリア(クアラルンプール、ジョホールバル、ペナン等)の概況
マレーシアの賃貸需要はエリアによって特徴が大きく異なります。首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)はビジネスと外交の中心地であり、国内外から人材が集まるため常に高い賃貸需要があります。特に都心部や人気の高いモントキアラ、バンサーなどでは外国人駐在員や富裕層ファミリーの需要が旺盛です。
一方、ジョホールバル(Johor Bahru)はシンガポールとの国境都市として注目されています。イスカンダル計画など大型開発により近代化が進み、シンガポールで働く人々がより安価な住宅を求めてジョホールバルに居住するケースも増えています。近年発表されたフォレストシティ特区構想や、2026年開業予定のシンガポールとの直結鉄道(RTSリンク)によって、更なる人口流入と賃貸需要増が期待されています。
ペナン(Penang)は観光地であると同時に電気・電子産業の集積地で、現地勤務の技術者や外国人居住者による賃貸ニーズが安定しています。ペナン州政府はLRT(軽量鉄道)の建設や街の再開発に積極的で、こうしたインフラ強化が賃貸市場を押し上げる要因となっています。
賃料相場の動向とエリアごとの賃貸ニーズ
地域によって家賃相場にも違いがあります。一般的にクアラルンプールの家賃水準が最も高く、国家平均を大きく上回ります。
2024年時点でクアラルンプールの平均月額家賃は約2,863リンギ(約7.8万円)と全国平均(約1,995リンギ)より44%も高く、隣接するセランゴール州の平均(約1,899リンギ)よりも51%高い水準でした。これは都心への集中や高級物件の多さが影響しています。
一方、地方都市や郊外では家賃相場は全国平均を下回るケースが多く、例えばジョホールバルではクアラルンプールより低い賃料で広い物件を借りられる傾向にあります。ただし、ジョホールバルでもシンガポール通勤圏となる一部エリア(JBセンターやヌサジャヤなど)では需要に応じて家賃が上昇する動きも見られます。ペナンはクアラルンプールほどではないものの、企業進出や富裕層移住により安定した賃料上昇が見られます。
クアラルンプールは高級コンドミニアムを好む外国人駐在員需要、ペナンは長期滞在する外国人や現地富裕層、ジョホールバルは手頃な価格で広めの住居を求める中間層のニーズが中心となっています。
主要エリア別 賃貸相場一覧
以下はマレーシアの主要都市(クアラルンプール、ジョホールバル、ペナン)での賃貸相場の目安です。
実際の家賃は物件の場所・築年数・設備・階数などによって変動しますので、あくまで参考値としてご覧ください。
項目 | クアラルンプール(KL) | ジョホールバル(JB) | ペナン |
---|---|---|---|
一般的な家賃相場(3LDK) | RM2,000~4,000 (約7~14万円) | RM1,800~3,500 (約6.3~12.3万円) | RM1,800~3,500 (約6.3~12.3万円) |
高級コンドミニアム(3LDK) | RM7,000~13,000 (約24.5~45.5万円) | RM3,000~6,000 (約10.5~21万円) | RM4,000~7,500 (約14~26.3万円) |
超高級物件(4LDK以上) | RM15,000~36,000 (約52.5~126万円) | RM6,000~16,000 (約21~56万円) | RM5,500~10,000 (約19.3~35万円) |
サービスアパート相場 | RM3,500~8,000 (約12.3~28万円) | RM3,000~7,000 (約10.5~24.5万円) | RM3,000~6,000 (約10.5~21万円) |
地域別特性 | 市中心部のKLCC、ブキッビンタンは高級 モントキアラは日本人に人気 | イスカンダル開発地域は新築物件多数 モレック地区は高級住宅街 | ガーニードライブ周辺、タンジュンブンガは高級 ジョージタウン近郊は文化的魅力 |
1LDKの相場 | RM1,500~3,000 (約5.2~10.5万円) | RM1,000~2,000 (約3.5~7万円) | RM1,200~3,000 (約4.2~10.5万円) |
45㎡コンドミニアム相場 | ローカルエリア:RM1,641(約5.8万円) 外国人エリア:RM2,500(約8.8万円) | 市中心部:RM1,600~2,000(約5.6~7万円) | 一般エリア:RM1,300~2,000(約4.6~7万円) |
※上記は為替レートを 1RM ≒ 35円(目安)で換算。実際の相場や為替レートにより変動する場合があります。
※物件の築年数や設備、立地によって家賃は大きく上下することがあります。
賃貸利回りに注目:物件タイプ別で異なる収益モデル
物件タイプごとの平均的な利回り目安
不動産賃貸投資において重要な指標の一つが賃貸利回り(Yield)です。マレーシアでは物件の種類やエリアによって利回り(年間家賃収入÷物件購入価格)が異なります。一般にコンドミニアムのグロス利回り(表面利回り)は4~6%前後が目安とされ、地域平均では約5%強と言われます。
首都圏の中級コンドミニアムであれば概ね5%前後、高いケースでは6%台に届くこともあります。サービスアパートなど家具家電付きで賃料が割高な物件は、同クラスのコンドミニアムよりやや高い利回りを見込める傾向があります。
一方、戸建て住宅の利回りは低め(3~4%程度)で、高級物件ほど価格に対して賃料が追いつかないため表面利回りが低下しやすいです。高級コンドミニアム(高価格帯)の場合、表面利回りが3~4%台に留まる例も多く、中価格帯物件の方が投資採算上有利なケースがあります。
*注釈:賃貸利回り(Yield)=物件購入価格に対する年間賃料収入の割合。グロス利回り(Gross Yield)は諸経費控除前、ネット利回り(Net Yield)は管理費や税金などを差し引いた実質利回り。

高級物件と中間層向け物件で違う投資戦略
高級物件は富裕層や駐在員をターゲットに長期賃貸契約が期待できる一方、購入価格も高額なため利回りは低めになりがちです。高級物件は景気変動や供給過多の影響を受けやすく、空室期間が発生すると収益性が一気に下がるリスクもあります。資産価値の上昇(キャピタルゲイン)を重視し、賃料収入はローン返済や維持費をまかなう程度と割り切る戦略が一般的です。
中間層向け物件は、地元の中流層や若い働き手向け需要が見込め、購入価格に対する家賃収入のバランスが良い傾向があります。安定的なインカムゲインを狙いたい投資家には、中価格帯のコンドミニアムが適しているケースが多いと言えます。
空室対策と賃貸管理会社の活用術
ローカルの賃貸管理会社を利用するメリット
日本人が海外で賃貸物件を運用する際、現地のプロパティマネジメント会社(賃貸管理会社)を活用するのは有力な選択肢です。言語や文化の違いによるトラブルを回避できるうえ、相場に合った賃料設定やテナント選定を任せられる点が大きなメリットです。
入居者からのクレーム対応や修理手配、家賃の督促などオーナーが担いきれない業務も任せられるので、遠隔での投資でも安心感が高まります。管理手数料は家賃の5~10%ほどですが、空室リスクやトラブルリスクを大幅に減らせるなら十分に検討する価値があるでしょう。
日本人投資家が取り入れたい空室リスク軽減策
マレーシアで物件を賃貸運用する上で、空室期間をいかに短縮するかは収益を左右する重要事項です。以下のような工夫が有効です。
- 物件の付加価値を高める:家具・家電を完備した「家具付き物件」として提供し、高速インターネットやエアコン清掃サービスなども備えて差別化。
- 柔軟な賃貸プラン:1年契約が基本だが、6カ月契約や月極めのサービスアパート的運用に対応できると、企業研修や短期プロジェクト等の需要も取り込める。
- 家賃設定の見直し:強気の賃料設定で空室が続くより、周辺相場に合った家賃設定の方が長期的に安定収益を得やすい。
- 仲介業者ネットワークの拡充:複数の不動産仲介会社に声をかけ、より多くの潜在入居者にリーチする。
メンテナンスや家賃徴収などの実務面のポイント
賃貸経営の実務では、物件の維持管理と家賃回収が基本にして重要です。エアコンの清掃・点検は年1~2回、水回りや電気設備の点検、迅速な修理対応など、マレーシアの高温多湿な気候に合わせたメンテナンスが欠かせません。
家賃徴収は銀行振込や自動引き落としが主流で、遅延があれば早めに催促することが大切です。契約時に遅延利息や猶予期間を定めておくことで、トラブルを未然に防げます。
退去時の原状回復に関しては、事前にルールを定め敷金精算をスムーズに行えるよう写真記録を残しておくと安心です。日々の管理業務は煩雑ですが、これらを徹底することで物件価値と収益を長期的に維持できます。
最新データから読み解くマレーシア賃貸市場の見通し
今後の人口動態や経済成長率の影響
マレーシアの人口は2025年時点で約3,300万人、年1%弱のペースで増加しており、2060年頃までは増加基調が続くと予測されています。若年層の生産年齢人口が豊富で、住宅需要が底堅く推移する見込みです。
ただし、少子高齢化が徐々に進むリスクもあり、中長期的には需給バランスの変化に注意が必要です。2024年の経済成長率は4~5%程度が見込まれており、雇用と所得環境が安定すれば賃貸需要は依然として堅調と考えられます。

インフラ整備・都市再開発の進捗と賃貸需要
政府主導のインフラプロジェクトや都市再開発計画も、不動産賃貸市場に大きな影響を与えます。MRTやLRTなどの公共交通の新路線開業に伴い、沿線エリアの不動産価値や賃貸需要が向上するケースが見られます。
クアラルンプール旧市街地やジョホールバルの海沿い開発、ペナン島の歴史地区再生プロジェクトなど、再開発が成功すれば周辺の賃貸需要も高まるでしょう。ただし、プロジェクトの遅延や供給過多になるリスクもあるため、最新情報の収集が欠かせません。
外国人投資家向け優遇策や新規施策のチェックポイント
マレーシア政府は海外資本誘致のため、外国人投資家に有利な施策を打ち出しています。代表的なものとしては長期滞在ビザ「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)」があり、近年要件が厳しくなったものの、2024年度予算での緩和が検討されています。
また、ジョホール州のフォレストシティを特別金融ゾーンに指定し、外国人向けに所得税減税や長期ビザ発給などの優遇策を提供する動きもあります。
さらに、不動産取得にかかる印紙税免除や中古住宅の譲渡益税(RPGT)の長期保有分撤廃など、投資を促す措置も取られてきました。政策が変われば規制強化や緩和が一気に進む可能性もあるため、政府発表の予算案や開発計画を定期的に確認しておく必要があります。
賃貸市場での投資チャンスを探る
安定収益を狙う物件タイプ・エリアの特徴
マレーシア賃貸市場で成功している投資家は、適切な物件選定とエリア選定を行っているのが特徴です。クアラルンプールのモントキアラ地区で日本人学校のスクールバス路線沿い物件を購入し、日本人駐在員ファミリーを継続的に確保している事例や、ペナン島のBayan Lepas地区で工場勤務者向けの中価格帯コンドを購入して高稼働率を保つ事例などがあります。
いずれもターゲットとなる借り手層が明確で、ニーズが持続しやすい物件を選んでいる点が共通しています。
リスク管理(空室率・修繕費・為替変動など)
不動産投資には常にリスクが伴いますが、成功する投資家はあらかじめシナリオを想定し対策を打っています。
- 空室リスク:エリアや時期によって空室率が20%超に達する場合もあるため、差別化や適正賃料設定、複数チャネルでの募集が重要。
- 修繕費・維持費:築年数が経つほど設備交換などの費用がかさみ、高級物件では管理費も高い傾向。
- 為替変動リスク:リンギット建ての家賃を円に換金するタイミング次第で実質的な収益が変わる。分散送金や為替ヘッジを活用する例も。
- 金利変動リスク:現地ローンを組む場合は、中央銀行の金利政策により返済額が増減する可能性がある。
- 法制度リスク:賃料統制や外国人購入規制などの突発的な法改正が行われるリスクは否定できない。
*注釈:為替変動リスク(Exchange Rate Risk)とは、投資先通貨と自国通貨のレート変動によって利益が増減するリスク。リンギット安・円高が進めば円転時に収益が目減りする。
まとめ:マレーシア不動産賃貸投資の可能性と次の一手
物件選定から管理体制構築までの流れ
ここまで見てきたように、マレーシアの不動産賃貸市場には大きな可能性がありますが、成功には周到な準備と戦略が欠かせません。以下は投資を進める際の基本的な流れです。
- 市場調査とエリア選定:投資スタイル(高利回り重視か将来値上がり重視か)を明確にし、適した地域と物件タイプを絞る
- 現地視察と物件比較:複数の候補を検討し、賃料相場や管理状況を確認
- 賃貸運用の準備:必要に応じリフォームや家具家電の導入を行い、賃料設定を決定
- テナント募集と契約:信頼できる管理会社・仲介会社と連携し、契約時の条件を細かく詰める
- 運用・メンテナンス:定期的な点検と迅速な修理対応で入居者満足度を高め、家賃収入を安定化
- 資金管理・リスク管理:家賃入金の確認、ローン返済、税金支払い、為替動向の監視などを継続的に行う
- 拡大戦略:運用が安定したら追加投資、物件の買い替え、別エリアへの進出などを検討
想定外の出来事(天災・経済ショックなど)が起きる可能性もありますが、上記の流れを把握しておけば柔軟に対応しやすくなります。
専門家との連携の重要性
海外不動産投資では、現地の専門家とのネットワーク構築が成功を左右します。物件購入時の価格査定や法的手続き、賃貸運営における管理業務・修繕手配、税務処理などを専門家に任せることでリスクと手間を大幅に軽減可能です。マレーシアは州政府の承認(Consent)が必要となる場合もあり、適切なエージェントや弁護士の存在が欠かせません。
遠隔投資では、現地の管理会社を“代理人”にすることでスムーズな運営が期待できます。JETROなど公的機関や日系デベロッパーからの情報も役立つでしょう。
日本人投資家が得られるメリットと今後の展望
マレーシアの不動産賃貸投資は、日本国内の低利回りとは違い5%超の収益を狙いやすいほか、通貨分散効果で円の為替リスクを緩和できるのが大きな魅力です。将来的に自身や家族が現地で長期滞在する目的でも活用でき、温暖な気候や物価の面でマレーシアをロングステイ先とする日本人も増えています。
2030年の高所得国入りを目標に掲げるマレーシアは、不動産市場の中長期的な成長が期待される一方、供給増加や市場成熟化に伴う選別も進む見込みです。
リスクとチャンスが共存するマレーシア不動産賃貸市場で、的確な情報収集と専門的な知見をもって投資に踏み出せば、安定したインカム収入とグローバルな資産形成の両立という大きな果実を得ることができるでしょう。