マレーシアの入国ビザ手続きガイド:日本人向けの最適なビザの種類と取得方法(2025年最新版)

マレーシアは多くの日本人に人気の移住先として知られ、安定した経済成長(政府予測でGDP年成長率4.5~5.5%)と多文化で生活しやすい環境から、不動産投資家の間でも大きな注目を集めています。不動産価格が周辺国と比較して割安で、平均利回り4.5~6.5%という魅力的な投資市場であることに加え、外国人の不動産購入に対する比較的寛容な政策も日本人投資家の関心を高める要因となっています。
こうした魅力を最大限に活かすには長期滞在ビザの取得が不可欠です。本ガイドでは2025年最新のマレーシアビザ手続き情報を踏まえ、日本人投資家に最適なビザの種類と取得方法を解説します。
新設されたビザ制度や条件改定なども含め、投資成功に向けたビザ活用のポイントを紹介します。
日本人投資家向けマレーシアビザの主要種類と特徴
日本人がマレーシアで不動産投資を行う際に利用できる主なビザには、長期滞在用のMM2H(Malaysia My Second Home)、富裕層向けのプレミアム・ビザ・プログラム(PVIP)、業務目的の就労ビザ(Employment Pass)、そして投資準備向けの投資家パスなどがあります。それぞれ特徴が異なるため、目的に合わせた選択が重要です。
ビザ名 | 最低預金額 | 滞在年数 | 対象年齢 | 家族帯同 | 就労可否 |
---|---|---|---|---|---|
MM2H | ゴールド:50万USD シルバー:15万USD プラチナ:100万USD | シルバー:5年 ゴールド:15年 プラチナ:20年 | 25歳以上 | 配偶者・子(21歳以下/条件により34歳まで) 両親(帯同可) | プラチナのみ就労可 (他は原則不可) |
PVIP | 100万リンギ | 最長20年 | 年齢制限なし | 配偶者・20歳以下の子 両親・家事代行1名 | 就労・起業可 |
就労ビザ (Employment Pass) | 資本金 最低50万リンギ (外資100%の場合) | 最長5年 (カテゴリーI) | 18歳以上 (実務経験者) | 配偶者・子 帯同可 | 就労可 (企業または自社法人) |
投資家パス (Investor Pass) | ― (申請時500リンギ +ビザ代90リンギ) | 6か月 (延長含め最大12か月) | 18歳以上 | 帯同不可 (本人のみ) | 投資活動は可 (別途要確認) |
S-MM2H (サラワク州) | 50万リンギ | 最長5年 (更新可) | 30歳以上 (2025年改定後) | 配偶者・子・両親 (条件付き) | 原則不可 (特例要相談) |
MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)
外国人が家族と長期滞在できるビザで、不動産投資やリタイアメント目的で人気があります。2024年に制度が改定され、現在はプラチナ・ゴールド・シルバーの3カテゴリーに分かれています。
- プラチナ:預金100万米ドル・不動産購入200万リンギ以上で20年のビザ(就労可)
- ゴールド:預金50万米ドル・不動産100万リンギで15年(就労不可)
- シルバー:預金15万米ドル・不動産60万リンギで5年(就労不可)
いずれもマレーシア国内での不動産購入が必須となり、取得後10年間は物件を売却できない条件付きです。以前必要とされた収入証明や資産証明は撤廃されましたが、大型の定期預金と不動産購入が要求される点でハードルは高めです。その分、家族での滞在や子どもの現地校就学など幅広いメリットがあります。
すべてのカテゴリーで共通の条件として、主申請者は25歳以上であること、年間90日以上のマレーシア滞在義務があることが挙げられます。また、配偶者、21歳以下の子供(未婚かつ就業していない場合は最大34歳まで)、主申請者および配偶者の両親が帯同申請可能です。
PVIP(プレミアム・ビザ・プログラム)
2022年に開始された比較的新しい長期ビザ制度です。年齢制限無し・滞在義務無しで最長20年滞在でき、就労や現地での起業も許可されている点がMM2Hと大きく異なる特徴です。
申請要件は「月額4万リンギ以上(または年48万リンギ以上)の海外収入」と「100万リンギの定期預金」です。さらに申請時に主申請者20万リンギ、同行家族1名につき10万リンギという高額な参加費用も必要です。
資金要件は厳しいものの、配偶者・20歳以下の子・両親・家事代行1名まで帯同可能で、かつ就労制限がないため、マレーシアで積極的にビジネス展開したい富裕層投資家には魅力的な選択肢です。MM2Hより費用負担は大きいものの、不動産購入義務が無い点やビザ期間の長さ(20年)など柔軟性が高いプログラムと言えます。
就労ビザ(Employment Pass)
マレーシアの企業に就職したり、自ら現地法人を設立して役員として働く場合に取得するビザです。カテゴリーⅠ~Ⅲに分かれ、給与額や任期によって異なります。例えばカテゴリーIは月給1万リンギ以上で最長5年の滞在が可能(家族帯同可)です。
日本人投資家がこのビザを活用するケースとしては、現地に会社を設立して自身を雇用する方法があります。ただしその場合、最低資本金(100%外資の会社なら50万リンギ以上)を投入し、現地ビジネスとしての実態が求められます。
就労ビザは実務的に現地で事業運営する方向けで、不動産投資そのものを目的とする場合はハードルが高めです。一方で取得できれば給与所得者としてマレーシアに滞在しつつ投資活動も行えるメリットがあります。
投資家パス(Investor Pass)
2025年初頭に新設された最新のビザで、外国人投資家向けの長期ソーシャル・ビジットパスです。マレーシアへの投資を計画している18歳以上の個人が対象で、有効期間は6か月(必要に応じさらに6か月延長可)となっています。
いわば「投資準備ビザ」のような位置付けで、対象者は現地の投資機関や当局を通じてビジネス提案を行い、このパスの発給を受ける形になります。申請要件は(1)自国または他国での事業プロフィール、(2)具体的な事業・投資のオファーレター、(3)投資の所有証明とされ、起業家・取締役・株主・経営幹部などが想定されています。
家族帯同用のパス(ディペンデントパス)は申請不可であくまで本人のみ有効です。手続費用500リンギ+ビザ代90リンギと比較的低コストで、申請はデジタル化されたXPats Gatewayシステム経由で行い、書類不備がなければ5営業日以内に処理される迅速さが特徴です。
これまで外国人投資家は最長でも90日の観光ビザしか使えませんでしたが、この投資家パスにより最大1年間の滞在が可能となり、投資案件の準備・管理がしやすくなりました。不動産を含む投資案件下見のため短期的に腰を据えて活動したい場合に有用でしょう。
S-MM2H(サラワク・マレーシア・マイ・セカンドホーム)
マレーシアの東部に位置するサラワク州が独自に発行する長期滞在ビザで、2025年1月1日から新要件が施行されています。
主な要件変更点は以下の通りです。
- 定期預金額が単身・家族とも申請1件につき50万リンギット以上に引き上げられました(以前は単身15万リンギット、夫婦30万リンギット)。
- 収入証明も引き上げられ、単身者はRM1万(約34万円)、家族での申請の場合はRM1.5万(約52.5万円)の月収が必要となりました。
- 不動産購入は30歳代以上の任意申請条件で、クチン地区では60万リンギット以上、その他サラワク州内では50万リンギット以上の物件を購入できます(居住用として5年間売却不可)。
重要なのは、既存のS-MM2H取得者は申請時の要件での更新が可能である点です。西マレーシアのMM2Hと比較して条件が緩和されている部分があり、特定の条件下では選択肢となり得ます。
マレーシアビザ手続きフローと必要書類(2025年版)
ビザ申請の具体的な手続きフローと必要書類について、2025年最新情報を踏まえて解説します。各ビザによって要件や手順が異なりますが、共通して言えるポイントは「最新の要件を満たす準備」と「公式に認可された申請経路を使う」ことです。
ビザ取得の流れ(2025年版)
必要書類(パスポート、無犯罪証明書、健康診断書、収入証明など)を揃える
認可エージェントを選定し、申請手続きを依頼する(MM2H・PVIPなどの場合)
提出書類をマレーシア入国管理局や関連機関が審査。仮承認が出るまで数週間~数か月
資金要件があるビザ(MM2H/PVIPなど)の場合、マレーシア国内の銀行で定期預金口座を開設・入金
定期預金残高や各種条件を確認のうえ、最終承認が下りる
ビザのステッカー(パス)がパスポートに貼付され、滞在開始が可能に
ビザ取得で押さえるべき注意点とよくある質問
審査で落とされやすいケースとは
ビザ申請が却下される主な原因としては、提出書類の不備・不足と要件未達が挙げられます。具体的には、銀行残高証明の額が要件に満たない、収入証明が不十分(例:月収4万リンギ要件を満たせていない)、無犯罪証明に不備がある(氏名や生年月日の不一致、期限切れ)などです。
また健康診断で重大な感染症が見つかった場合や、過去にビザ違反履歴がある場合もリジェクトの可能性があります。特に2021年以降MM2Hの審査は厳格化しており、「説明不足な資産」があると追加証明を求められることがあります。
書類は公証や認証も含めて完璧に整えること、そして不明瞭な点は補足説明やカバーレターを添付するなどして審査官に伝わりやすくする工夫が大切です。一度却下されると再申請時に不利になる場合もあるため、最初から専門家のチェックを受けるのも有効でしょう。
申請後~取得後における注意事項
ビザ申請後、仮承認がおりるまで数ヶ月待つケースでは、その間にパスポートの残存期限が短くならないよう注意してください。仮承認後にマレーシアに渡航して行う手続き(例:定期預金口座開設や健康診断など)も期限内に行う必要があります。
またビザ取得後も、条件の維持に留意しましょう。MM2HやPVIPでは一定の預金額を維持する義務があり、一部引き出しは認められるものの残高不足にならないよう管理が必要です。MM2Hの場合、年間の最低滞在日数(90日)を満たしていないと更新時に問題となる可能性があります。
就労ビザで滞在中の方は、雇用契約が終了した場合に速やかにビザの種類変更や出国を行わないと不法滞在となる点にも注意が必要です。また住所やパスポート更新等の届出を怠ると罰金対象となることもあります。取得後はビザごとのルールを再確認し、遵守することが大切です。
不動産投資に絡むビザ関連のトラブル事例
マレーシアで実際にあったトラブルとして、「不動産を購入すれば自動的にビザが取れる」と誤信してしまったケースがあります。他国では投資額に応じて居住ビザが発給される制度(いわゆるゴールデンビザ)がありますが、マレーシアの場合、不動産購入だけではビザは付与されません。必ず別途MM2HやPVIP等の申請が必要です。
悪質な業者が「この物件を買えばMM2H取得保証」などと宣伝している例も報告されていますが、そのような公式制度はありません。結果として物件を買ったのにビザが取れず困る、といったことがないよう注意しましょう。
また、「代理申請を任せた業者が手続きを怠りビザが下りなかった」というトラブルも時折耳にします。必ず信頼できる認可代理店かつ進捗状況を逐一報告してくれる業者を選定してください。申請料やデポジットの扱いについて契約書で明確に取り決めることも重要です。
さらに、不動産投資と絡む範囲ではMM2Hの不動産購入義務に関する注意点があります。2024年改定後、MM2H申請者はマレーシア国内で不動産購入が必須ですが、取得前に既に購入していた物件でも条件を満たすことが可能です。ただしビザ取得前に買った物件の場合、定期預金の引き出し用途に不動産購入が適用されないなど細かな制約があります。
このような制度上の細則も知らずにいると後で困惑するため、事前によく確認してください。
よくある質問 Q&A
MM2HやPVIPビザでマレーシア現地で働けますか?
MM2Hは基本的に就労不可ですが、2024年改定後のMM2Hではプラチナカテゴリーのみ就労可能です。PVIPは主申請者・配偶者共に就労が認められており、雇用されるだけでなく現地起業も可能です。
就労ビザや投資家パスはそれぞれ別途条件下で働ける性質があります。自分のビザで就労が許可されているかを確認し、必要なら適切な許可申請を行いましょう。
家族を帯同する場合、子供の教育や配偶者の活動に制限はありますか?
MM2HやPVIPでは配偶者と扶養子女(年齢制限あり)を帯同家族としてビザに含めることができます。子供は留学生ビザなしでもインターナショナルスクール等に通学可能です。PVIPでは20歳以下の子供、申請者および配偶者の両親、さらにメイド1名まで帯同許可されています。
配偶者について、MM2Hでは就労不可、PVIPでは就労可能となっています。帯同家族それぞれの活動制限について事前に把握しておきましょう。
ビザ保持者にはどんな優遇措置がありますか?
長期ビザ保持者は銀行口座開設や運転免許取得など生活面での手続きが簡素化されます。またMM2HやPVIP所持者向けに税制上のメリットが用意されていたこともありますが、現行制度では大きな免税特典はありません。
ただし、マレーシア国外所得が非課税である点は資産運用上のメリットです(※個人の海外所得非課税措置は2026年まで延長中)。不動産購入に関してはビザ保持の有無で税率が変わることはありませんが、住宅ローンの取得可否に影響する場合があります。銀行によってはMM2H所持者に住宅ローンを提供する実績があり、長期ビザが信用力の補完となるケースがあります。
将来的にマレーシアの永住権取得や市民権取得は可能ですか?
マレーシアの永住権(Permanent Resident)は非常に取得ハードルが高く、長期ビザ保持年数に関係なく容易には与えられません。特別な貢献や政府推薦など限られた場合にのみ許可されるのが実情です。また二重国籍を認めないため市民権取得も日本人には現実的ではありません。
従って多くの日本人投資家はMM2HやPVIPを更新しながら長期滞在する形を選択しています(MM2Hは所定条件を満たせば5年ごとの延長可、PVIPも5年毎更新で最長20年)。将来的に制度変更で永住権への道が開ける可能性もゼロではありませんが、現時点では長期ソーシャルビザを継続更新しながら暮らすのが現実的な選択肢でしょう。