【徹底解説】2025年のベトナム経済とビジネス環境|有望なベトナム市場で成長を狙う戦略とは?

はじめに:2025年ベトナム経済の「有望」性を解説する理由
近年、ベトナム経済は驚異的な成長を遂げており、2025年も引き続き世界で注目される有望な市場です。約9,980万人(ほぼ1億人規模)を抱える国内市場と、安定した高成長率によって、ベトナムはASEAN内で存在感を高めています。実際、ベトナムの人口はインドネシア・フィリピンに次いでASEAN第3位で、名目GDPは2021年時点で第6位でしたが、今後数年でタイに次ぐ第3位に成長すると予想されています。
政府も2045年までの「高所得国」入りを目標に掲げ、2025年のGDP成長率目標を当初の6.5~7.0%から8%以上に上方修正しました。仮に8%成長が達成されれば、ベトナムの名目GDPは5,000億ドル規模に達し、一人当たりGDPも5,000ドルを超える見通しです。
この力強い成長はビジネス全般、とりわけ不動産投資に大きなインパクトを与えています。

本記事の目的は、日本人投資家を対象に2025年のベトナム経済とビジネス環境を包括的に解説し、その中で不動産投資に焦点を当てた戦略を探ることです。急速な経済成長に伴い、中長期的な資産形成の好機がベトナムには広がっています。とりわけ都市部の不動産市場は、経済発展とともに賃貸需要や資産価値が上昇する傾向にあり、成長市場であるベトナムで大きなリターンを狙える有望分野といえるでしょう。
以下では、マクロ経済指標から産業構造、不動産セクターの動向、法規制やインフラ整備、リスク管理まで、2025年のベトナムビジネス環境を徹底解説します。ベトナム市場の魅力と成功へのポイントを押さえ、将来の戦略立案にお役立てください。
主要指標から読み解く2025年のベトナム「ビジネス環境」
まず、ベトナムのマクロ経済指標を確認し、そのビジネス環境を俯瞰しましょう。2020年代に入ってからのベトナムは、新型コロナからの回復も早く、実質GDP成長率は2021年2.6%から2022年には8.1%へ急回復しました。2023年は世界経済の向かい風により5.0%増とやや減速したものの、それでも高成長を維持しています。
また一人当たりGDPは4,324ドル(2023年推計)まで向上しました。政府は前述のとおり2025年に8%成長という野心的な目標を掲げ、公共投資の拡大やビジネス環境の改善に注力しています。物価上昇率も3~4%台と安定しており、マクロ経済のファンダメンタルズは良好です。
加えて、約1億人規模という巨大市場は国内消費を支えると同時に、豊富な労働力供給という強みでもあります。最新データでは2023年末時点でベトナムの人口は約9,980万人、平均年齢は32.5歳と若く、都市部人口比率は41%程度に達しました。特筆すべきは、生産年齢人口(15~64歳)が全体の約7割を占める点です。
この「人口ボーナス」により、当面は労働力不足の心配が少なく、内需拡大と経済成長を下支えする有望な人口構造となっています。
産業構造の変化もビジネス環境の理解に欠かせません。かつて農業国のイメージが強かったベトナムですが、近年は製造業やサービス業がGDPの大部分を占めるようになりました。
直近の統計では、GDPに占める割合は第一次産業(農林水産)が約16%、第二次産業(鉱業・製造業・建設・電力)が約38%、第三次産業(サービス業)が合計で約46%に達しています。製造業は輸出を牽引する電子・電機分野を中心に成長し、サービス業も物流・金融・不動産など幅広いセクターで拡大傾向です。
例えば2023年は世界経済の不透明感がありつつも、ベトナムでは個人消費が堅調に伸び、特に建設業は引き続き二桁成長、不動産を含むサービス業も加速すると見込まれていました。経済全体として外需(輸出)だけでなく内需(消費・投資)がバランス良く成長を牽引している点が、ベトナムのビジネス環境の強みです。
さらに、海外企業の進出状況も確認しましょう。ベトナムは「世界の工場」としての地位を高めており、外国直接投資(FDI)の増加が経済成長を支える大きな要因となっています。
2023年の対内直接投資認可額は前年比32.1%増の約366億1,000万ドルに達し、実行額(実際に使われた額)も約231.8億ドルと過去最高水準を記録しました。これは製造業を中心に欧米やアジアの企業が生産拠点を積極的に移管・拡大しているためで、外資企業による輸出も全輸出額の7割近くを占めています。特に近年は中国+1戦略の受け皿としてベトナムに注目が集まり、日本企業を含む多くの外資系企業が新規進出や増資を行ってきました。
実際、在ベトナム日系企業数はASEANで最多水準の約2,000社に上り、ベトナムは日本企業にとっても米国に次ぐ有望な事業拡大先と位置付けられています。日本の対ベトナム投資額も2020年代に入り年々増加傾向にあり、2022年には約48億ドル、2023年も約38億ドルと高水準を維持しました。
こうした旺盛な海外からの投資は、ベトナムのビジネス環境が安定し魅力的である証左と言えるでしょう。もっとも、政府・企業にとっては今後、世界経済の変動や大国間の政治情勢といった外的リスクへの対応が成長維持の課題となると指摘されています。
総じて、強力なマクロ経済の追い風と投資マネーの流入により、2025年のベトナムは依然として「有望な市場」であり続ける見込みです。
不動産投資が注目される背景:経済成長のエンジンと国内需要の拡大
こうした経済全体の急成長と構造変化の中で、特に不動産投資が注目される背景を探ってみましょう。ベトナムでは不動産セクターが経済成長の一種の「エンジン」となっており、成長に伴う都市化や国内需要の拡大が不動産市場を強力に押し上げています。
まず、政策支援やインフラ整備による都市化の進展が挙げられます。政府は都市開発を国家戦略の重要項目に位置づけており、2022年に発表された「決議06」では2025年までに都市化率(都市部人口割合)を少なくとも45%、2030年までに50%以上に引き上げる目標を掲げました。
実際、2011年に約31%だった都市化率は2021年に38.05%へ上昇し、2023年末時点では約41~42%に達しています。政府の目標達成に向けて、各地で大規模インフラ投資が加速しており、都市鉄道(メトロ)や高速道路の建設、郊外ニュータウンの開発などが積極的に進められています。
2025年の国家公共投資計画では前年比40%増の約360億ドルがインフラ整備に充てられる予定であり、南北高速道路や新国際空港(ロンタイン空港)の早期完成も優先課題とされています。こうした政策的な後押しにより、地方から都市への人口流入が続き、高層住宅やオフィスビル建設ラッシュが都市部で起こっています。
つまり、急速な都市化が不動産市場の需要を底上げし、投資機会を次々と生み出しているのです。
次に、経済発展と人口動態の変化による賃貸需要・開発需要の増加が、不動産投資の魅力を高めています。所得水準の向上と中間層の台頭により、都市住民の住宅ニーズは量・質ともに拡大しています。若年層を中心に「マイホーム」志向が強まる一方、都市への人口集中で住宅不足感があり、住宅購入が難しい層の賃貸需要も伸びています。
さらに、製造業の進出増加に伴って外国人駐在員や専門人材が増え、都市部ではサービスアパートメント等の需要も高まりを見せています。ベトナム不動産仲介業者協会によれば、2025年にはハノイ市で約37,000戸、ホーチミン市で約18,000戸の新規マンション供給が見込まれるものの、中心部では依然として供給不足が続き賃貸ニーズが旺盛とのことです。
また、大型FDIプロジェクトやインフラ改善は将来の住宅需要をさらに押し上げると見られています。実際、ベトナムではサービスアパートの開発が安定して進んでおり、「大規模プロジェクトや交通インフラ改善によるFDIが将来の賃貸住宅需要にプラスの影響を与える」と報じられています。ホーチミン市やハノイ市でも、高度人材の流入やFDI増加を背景にサービスアパートや賃貸住宅の需要増加傾向が記録されています。
このように、経済成長がもたらす人口流入・所得増により国内需要が拡大し、不動産分野への資金流入が促進されているのです。
さらに、不動産市場そのものが投資家にとって魅力的な利益機会を提供している点も見逃せません。ベトナムでは土地や住宅の価格が長期的に上昇しており、キャピタルゲイン(資産売却益)狙いの投資が盛んです。加えて、賃貸利回り(インカムゲイン)もアジア新興国の中では比較的高水準を維持しています。
例えばホーチミン市の高級マンションでも、日本円換算で2,000万円程度の価格帯から購入可能で、賃貸に回せば年5%以上の利回りで運用できるケースが多いと指摘されています。実際に、ホーチミン市郊外の住宅地では住宅価格が四半期ごとに3~5%上昇する一方、賃貸料の年間上昇率は5~10%に達する例も報告されています。
このようにキャピタルゲインとインカムゲインの双方が見込める点で、ベトナム不動産市場は国内外の投資家にとって極めて魅力的な投資対象となっているのです。
インフラ開発がもたらす長期的メリット:新興エリアへの視点
ベトナムの不動産市場で中長期的に大きなチャンスを生み出す要因の一つが、国家的なインフラ開発プロジェクトです。前述の通り政府はインフラ整備に巨額の公共投資を投じており、新たな交通網や都市機能の拡充が各地で進んでいます。
これにより、これまで注目度の低かった新興エリアが投資先として浮上し、不動産価格の上昇余地が生まれています。本章では、主要インフラ計画の現状と、新興エリアの将来性について展望します。
■大規模交通インフラ整備の状況
まず、大規模交通インフラの現状から見てみましょう。都市鉄道(メトロ)については、ハノイ市とホーチミン市で長年計画・建設が進められてきました。ハノイでは2021年に2A号線(カットリン〜ハドン)が開業し、続く3号線(ニョン〜カットリン)も2023~2024年に部分開業しました。
ホーチミン市では日本の支援で建設されたメトロ1号線(ベンタイン市場〜スオイティエン駅)が2024年12月22日に待望の開業を迎え、ベトナム初の地下鉄として大きな話題となりました。同路線は19.7km・14駅を結び、開業後最初の2週間で約170万人もの乗客を乗せる盛況ぶりでした。この成功を受け、ホーチミン市では2号線(ベンタイン〜タムルオン)の建設も加速すると見られており、今後10年で都市鉄道網が充実していく見通しです。
高速道路網に目を向けると、国家南北高速道路(計画全長2,000km超)の整備が段階的に進行中です。既にホーチミン市〜中部ニャチャン付近までの区間や、ハノイ〜ヴィン市付近までの区間が開通済みで、2025年末までにさらに延伸する計画です。高速道路の整備により、従来は移動に数時間かかっていた地方都市間のアクセスが飛躍的に改善されつつあります。
また、長年準備されてきた南部ロンタイン新国際空港の建設もいよいよ大詰めです。ホーチミン市中心部から東へ40km、ドンナイ省に位置するロンタイン空港は、2025年中の一部供用開始を目指し滑走路やターミナル建設が進行しています。開港すれば年間1億人規模の旅客を捌く東南アジア有数のハブ空港となり、周辺地域のみならずベトナム全土の経済に波及効果をもたらすでしょう。
その他にも、各地で新港湾の拡張(ハイフォン港の国際ターミナル増設等)や都市高速道路・環状道路の建設が活発です。これら交通インフラ革命とも呼べる動きが、ベトナムの都市構造と不動産市場を大きく塗り替えようとしています。
■新興エリアの将来性と不動産価格の上昇余地
インフラ開発が進む中で、新興エリアが次々と脚光を浴びています。ここでは、いくつか代表的な地域とその将来性を紹介しましょう。

ホーチミン市・トゥードゥック市(旧9区など)
ホーチミン市東部のトゥードゥック市は、2020年末に3つの区を合併して誕生した新都市で、「イノベーションシティ」と位置付けられています。ハイテクパークや有名大学が集積し、メトロ1号線や環状道路の整備で都心とのアクセスも飛躍的に向上しました。
この地区では既に不動産価格が急騰しています。メトロ沿線の住宅地では、開業前から投機的な動きで2年間で地価が2.4倍になった例もあるほどです。ロンタイン空港にも近接することから、今後さらなる開発が見込まれます。広大な未開発地が残っており、若く成長著しい都市として長期的な投資妙味があります。
ドンナイ省・空港周辺エリア
ロンタイン空港予定地を擁するドンナイ省は、ここ数年で驚異的な地価上昇を経験しています。同省ロンアン村では、3年前に㎡あたり20万ドン(約940円)だった土地が現在は200万~300万ドンにまで高騰しました(10倍以上)。空港計画区域周辺では年間15~25%もの値上がりが常態化し、一攫千金を狙う投資家も殺到しています。
地元当局はバブル抑制に乗り出したほどですが、空港開港後は大規模な都市開発(空港都市)が予想され、長期的な不動産価値の上昇余地は依然大きいと見られます。ただし短期的には投機的過熱に注意が必要な地域でもあります。
ハノイ市郊外・次世代都市
首都ハノイでも、新興エリアが続々と台頭しています。西側のナムトゥリエム区やホアラックハイテクパーク周辺、東側のロンビエン区やザーラム県など、インフラ新設で中心部との距離が縮まった地域が注目です。
近年、ハノイ市は中心業務地区の拡張を抑制し、周辺衛星都市への機能分散を図っています。その一環で高速道路網・都市鉄道を整備し、郊外に新CBD(中央業務地区)や大規模住宅開発を誘導しています。例えばナムトゥリエム区のミーディンエリアは既に主要企業の本社や高級住宅が林立し、「新都心」となりました。
今後開通予定の鉄道線路沿いや、新バスターミナル周辺などもポテンシャルが高いです。都市化率75%を目標に掲げるハノイ市では、2030年までに市内人口が約800万人から1,300万人に増加すると予測され、郊外の宅地開発の余地は計り知れません。
地方主要都市・工業ハブ
ハイフォン市、ダナン市、カントー市といった地方の大都市も、新インフラの恩恵を受けています。ハイフォンはハノイから高速道路で2時間弱と近く、深海港の拡充で工業団地開発がブームです。外国企業の大型投資も相次ぎ、不動産価格指数は急上昇しています。
中部ダナンはリゾート開発とIT産業育成で人口流入が続き、コンドミニアム価格が上昇中です。メコンデルタ最大都市のカントーでも近年ショッピングモールや高層住宅の建設が増えています。
さらに、工業団地が立地するバクニン省・ビンズオン省などの省都も商業施設の進出が始まり、地方都市の不動産市場が活性化してきました。これらの地域は大都市に比べ現時点の地価水準が低いため、今後の伸びしろに期待する投資が有効でしょう。
以上のように、インフラ開発は「点と点を線で結ぶ」だけでなく、その沿線・周辺の広大なエリアを新たな投資フィールドへと変貌させています。
短期的にも、例えば都市鉄道駅周辺のマンション価格は今後も上昇が続く可能性が高いですし、高速道路IC周辺の土地も商業施設や物流センター誘致で需要が増すでしょう。長期的には、郊外に広がるスマートシティ開発や、都市圏の拡大に伴う郊外ベッドタウン形成など、大きなトレンドが予想されます。
ベトナム政府は「持続可能な都市化とスマート都市ネットワークの構築」を掲げており、各地で都市インフラと経済インフラを統合した新都市計画が進んでいます。不動産投資家にとって、こうした新興エリアの早期発掘と参入は非常に大きなメリットとなり得ます。もちろん新規開発ゆえのリスク(計画変更や完成遅延)はありますが、成長余地を考えれば魅力が勝ります。
重要なのは、インフラ計画の動向にアンテナを張り、どのエリアが「次のホットスポット」になるか見極めることです。加えて、開発情報に精通した現地の専門家ネットワークを持つことで、有望地域の用地・物件をいち早く確保できるでしょう。
総じて、インフラ開発はベトナム不動産市場の地図を塗り替えるゲームチェンジャーであり、投資戦略を考える上で欠かせない視点です。