【最新版】アブダビの不動産投資環境を徹底解説|日本人が知らないと損する成功ポイント

アブダビ首長国(UAEの首都)は近年、不動産市場の活況が目立ち、世界中の投資家から注目を集めています。特に日本人投資家にとって、アブダビの不動産投資環境は高い利回りや安定性といった魅力がある一方で、最新動向や成功のポイントを知らなければ機会損失につながりかねません。

本記事では、アブダビ不動産市場の最新動向や成長要因から、政府の長期ビジョン、注目エリアの開発計画、経済多角化戦略と不動産需要、最新データに基づく利回り・賃貸需要のトレンド、地政学的リスクと安定要因までを徹底解説します。

実務的で客観的な視点から、日本人投資家が押さえておくべき評価軸と中長期的な展望、そして成功のための実践ヒントを詳述します。アブダビ「不動産投資」の最新環境を理解し、知らないと損をするポイントをこの【最新版】ガイドで把握しましょう。

目次

アブダビ不動産投資環境の最新動向:市場拡大を支える主な要因

アブダビの不動産市場は2020年代に入り着実な拡大基調を示しています。例えば、2023年から2024年にかけて住宅価格が年間平均で約8%上昇するなど堅調な成長が記録されました。2024年の不動産投資総額は前年比34%増の5,620億ディルハム(約21兆円)と過去最高を記録し、市場の活発さがうかがえます。こうした市場拡大を支える主な要因として、以下のポイントが挙げられます。

UAE全体のGDP成長率推移
上記はUAE全体のGDP成長率(2018~2025見通し)を示した折れ線グラフです。これを見れば、2018年から安定的に成長が続いており、直近ではプラス幅が拡大傾向であることが分かります。

アブダビ不動産取引額の推移
こちらはアブダビの不動産取引額の推移(2018~2024推定)。市場が活況を呈している様子を、客観的なデータで実感できます。

外国人投資の拡大と規制緩和

アブダビ政府は2019年に不動産法を改正し、指定区域内であれば外国人も土地と不動産の完全所有権(フリーホールド)を取得できるようにしました。これにより海外資本の流入が進み、特に長期居住を可能にするゴールデンビザ(長期滞在ビザ)制度も相まって不動産投資需要が高まっています。

注目すべきは、200万AED(約8,000万円)以上の不動産投資を行うことで、10年間のUAEゴールデンビザを取得できる点です。実際、アブダビは2023年に世界各国の富裕層(HNWIs)から投資先として選好される都市の一つとなりました。

経済成長と人口増加

足元のUAE全体の経済は堅調で、2024年のGDP成長率は3.7%が見込まれています。特にアブダビ首長国では、石油収入を背景にインフラや産業への投資が活発化し、雇用機会の増大により人口も増加傾向です。公式統計によれば2023年時点の人口は約380万人と2011年から83%も増加しており、この急増する人口・労働力が住宅需要を下支えしています。

高い賃貸利回りと投資妙味

アブダビの住宅賃貸市場は世界的に見ても利回りが良好であり、物件によっては年間6~10%台のグロス利回りが得られます。特に、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)内に位置する「Muheira」などの高級不動産プロジェクトでは、年間賃貸利回りが10%以上と推定されており、高い賃料収入を目当てに投資する海外投資家が増えています。賃貸市場の好調さが、投資利回りの観点でも大きな魅力となっています。

政府による市場の安定化策

政府当局は不動産市場の長期的な健全性を確保するため、透明性向上や需給調整のための規制策にも乗り出しています。例えばオフプラン(完成前物件)の投機的売買をクールダウンさせる措置や、不動産取引プラットフォーム「DARI」の整備による市場データの透明化などが挙げられ、過熱や不透明さを防ぐことで持続的な市場成長を促しています。

このように、政策面から経済・人口動態、投資指標に至るまで複数の要因が相まって、アブダビの不動産市場は底堅い拡大トレンドを維持しています。まずは次章で、その具体的な投資チャンスを生む都市開発・インフラの進展について見ていきましょう。

都市開発とインフラ整備がもたらす投資チャンス

アブダビではここ数年、大規模な都市開発プロジェクトとインフラ整備が次々と進行しており、不動産投資の好機を生み出しています。新しい道路・交通網から空港拡張まで、インフラの改善は都市の価値向上と需要喚起に直結します。主なトピックを具体的に見てみましょう。

高速鉄道・交通インフラの整備

アブダビとドバイを結ぶ高速鉄道計画「Etihad Rail」により、都市間の移動時間が大幅短縮される予定です。最新の計画ではアルリーム島、ヤス島、サディヤット島、ザイード空港(アブダビ国際空港)などを含む6箇所に停車駅が設けられる見通しで、完成すればこれら島嶼部の利便性と地価が一層高まると期待されています。また市内交通でも将来的に地下鉄網の構想があり、公共交通インフラ拡充が不動産価値を底上げしています。

空港・港湾の拡張と経済特区

2023年11月には総工費30億ドル規模のアブダビ国際空港新ターミナル(ターミナルA)が開業し、年間数千万人規模の旅客受け入れ能力が整いました。これによりビジネス渡航や観光客の増加が見込まれ、空港周辺や観光拠点でのホテル・商業不動産需要が拡大しています。

同様にハリーファ港を中心とした工業・物流ハブの開発も進んでおり、巨大経済特区「KEZAD」では企業進出が相次いでいます。その影響で同地区の産業用不動産賃料はこの1年で約8%上昇するなど高い需要が生じています。港湾やフリーゾーンの発展は物流施設や労働者向け住宅への投資機会となっています。

都市再開発と生活インフラ

アブダビ市内では、持続可能なスマートシティ開発にも力が入れられています。代表例がマスダールシティで、再生可能エネルギーと環境技術の国際拠点として開発が続けられ、関連企業の誘致とともにオフィス・住居需要を生んでいます。

また教育・医療インフラも充実しており、ルーブル・アブダビ美術館に近接する地区やクリーブランド病院(世界水準の医療施設)周辺では高級住宅の開発が進行中です。都市の生活環境向上に資するインフラ投資は、結果的に長期的な不動産価値の押し上げにつながっています。

これらの開発・整備によって、アブダビは居住・ビジネス双方において魅力的な環境を備える都市へと進化しています。インフラの質が上がれば人・企業が集まり、不動産需要がさらに高まる好循環が生まれます。投資家にとっては、こうしたプロジェクトの進捗に注目し、その恩恵を受ける地域・セクターを見極めることが重要です。

アブダビ政府の長期ビジョンと不動産市場への影響

アブダビの不動産市場が安定した成長を描いている背景には、政府の明確な長期ビジョンと戦略があります。政府は経済全体の将来像を示す「アブダビ経済ビジョン2030」を策定し、これに沿って各種政策を推進してきました。このビジョンでは「石油収入への依存度低下」と「知識型産業への転換」が掲げられ、経済の多角化と持続可能な発展が目標とされています。具体的には次のような重点項目が不動産市場に影響を与えています。

インフラと都市計画の重視

ビジョン2030の優先課題の一つに「経済成長を支える十分で強靭なインフラの整備」があります。これを受けて政府は巨額の予算を道路、公共交通、公共施設に投入し、都市計画「アブダビ都市構想2030」に基づき持続可能な街づくりを推進しています。例えばサディヤット島の文化地区開発や新行政中心地ザイードシティの計画など、長期ビジョンに沿った開発は不動産市場に新たな需要と投資機会を創出しています。

ビジネス環境の整備と法制度改革

グローバルに統合されたビジネス環境を築くこともビジョンの柱です。この方針の下、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)の設立や、法人税・規制面での投資誘致策が講じられました。

ADGMは2025年までに1万件のライセンスを発行し、世界トップ5の金融センターを目指しています。ADGMでは英米法に基づく先進的な金融自由区を提供し、海外企業やスタートアップの誘致に成功しています。

さらに不動産に関する法制度整備(前述の外国人所有権解禁など)やデジタル化が進み、投資のしやすい環境が整えられています。透明で効率的な市場環境が、投資拡大の基盤となっています。

人材育成と人口戦略

アブダビは「高度技能を持つ生産的な労働力の育成」も目標に掲げ、教育機関の誘致や人材への投資を積極的に行っています。ニューヨーク大学やソルボンヌ大学の分校設置など教育インフラを拡充し、世界中から優秀な学生・研究者を惹きつけています。加えて、専門人材や富裕層を定住させるため長期ビザ発給や快適な生活環境づくり(医療・文化施設の充実)にも注力しており、これが中長期的な人口増と住宅需要の底上げにつながっています。

以上のように、政府の長期ビジョンは単なる経済政策に留まらず、インフラ、法制度、人材戦略など多方面に及んでいます。その総合的な推進が都市の付加価値を高め、不動産市場の発展を下支えしています。

言い換えれば、アブダビ不動産市場の安定成長は政府の計画的なビジョンに根ざした「必然」とも言えるでしょう。投資家にとって、このビジョンを理解して市場を見ることが成功への重要な視点となります。

注目エリアの成長性:サディヤット島・アルリーム島などの開発計画

アブダビには特に不動産投資の観点で成長性が注目されるエリアがいくつか存在します。その中でも代表的なのがサディヤット島とアルリーム島で、いずれも大規模開発計画が進行中または計画されています。それぞれの特徴と将来性を把握することで、投資戦略を立てやすくなります。

サディヤット島(Saadiyat Island)

アブダビ島の北東に位置するサディヤット島は、文化と高級リゾートの拠点として開発が進むエリアです。既にルーブル・アブダビ美術館が開館し、今後はグッゲンハイム・アブダビ美術館(2025年以降開館予定)やザイード国立博物館など世界的文化施設が順次オープン予定です。

これに伴い、島内では高級住宅やリゾート施設の開発ラッシュが続いています。最大手デベロッパーのアルダー社は高級ビラやビーチ沿いマンションを供給し、2023年には高級物件価格が前年比でアパートメントで約8.7%、ヴィラで12.9%も上昇しました。美しいビーチと一流施設の魅力から国内外の富裕層の需要が強いことが特徴です。

さらに高級ホテルブランドのマンダリンオリエンタルによるレジデンス計画など国際的プロジェクトも進んでおり、2028年の完成を目指しています。供給が限定的な島であることから中長期的にも資産価値の維持・向上が期待できるエリアです。

アルリーム島(Al Reem Island)とADGM

アブダビ本島の北東沖に位置し、2本の橋で本島と結ばれたアルリーム島は、住宅と商業の新都心として成長しています。高層マンション群やオフィスビルが林立し、日本人駐在員にも人気の「ゲートタワーズ」などがあるのもこの島です。特筆すべきは、近年アルリーム島がアブダビ国際金融センター(ADGM)の管轄区域に編入され、金融・ビジネス拠点としての位置付けが強化されたことです(ADGMは元々アルマリヤ島に限定されていましたが、2023年にアルリーム島へ拡大)。

ADGMは世界レベルの金融都市を目指しており、中心地には「Muheira」という高級不動産プロジェクトが開発されています。このプロジェクトでは年間賃貸利回りが10%以上と推定され、1~3ベッドルームの高級レジデンスが提供されています。

アルリーム島全体としても住宅市場では比較的手頃な物件から高級志向の物件まで幅広く、2023年のデータではアルリーム島の高級マンションは平均して約6.65%という堅調な賃貸利回りを示しました。島内には大型ショッピングセンター「リームモール」も開業予定であり、生活利便性がさらに向上する見込みです。今後も新規開発プロジェクトが計画されており、成長余地が大きいエリアと言えます。

その他注目エリア(ヤス島・ジュベイル島など)

サディヤット島とアルリーム島以外にも、アブダビには将来性の高い開発エリアがあります。ヤス島(Yas Island)はF1サーキットやテーマパーク群で有名なエンターテインメント島ですが、近年は住宅開発も進み「ヤス・エーカーズ」など大規模コミュニティが誕生しています。

2023年には世界最大級の水族館を備えたシーワールドがオープンし観光客が急増、島内不動産の需要に拍車をかけました。ヤス島の高級マンションも検索需要が高く、高利回りが見込める投資先として注目されています。

また、本島とサディヤット島の間に位置するアルジュベイル島(Jubail Island)では、マングローブ林を生かした環境調和型の高級住宅プロジェクトが進行中で、裕福なファミリー層から関心を集めています。この他にもアルガルビやサウスシャムハ(Al Shamkha)のように新興の郊外コミュニティも整備が進んでおり、各エリアが特色を活かした開発で競い合っています。

以上のように、アブダビには投資妙味あるエリアが点在しており、それぞれ開発計画に裏打ちされた成長ポテンシャルを持っています。投資家にとって重要なのは、各エリアのプロジェクト進捗や将来ビジョンを把握し、適切なタイミングで参入することです。

サディヤット島のように早期から投資した場合、価値高騰の恩恵を受けられますし、アルリーム島のように今後のビジネス拠点化で賃貸需要が伸びる地域も狙い目です。分散投資の観点でも、異なる特徴を持つエリアを組み合わせることでリスクとリターンのバランスを図ることができるでしょう。

■ エリア別の特徴と賃貸利回り比較

エリア名主な特徴推定賃貸利回り(%)主要プロジェクト・施設
サディヤット島文化施設・高級リゾート8.7~12.9ルーブル・アブダビ、美術館群など
アルリーム島住宅・商業中心 + ADGM拠点化6.65~10.0Muheiraプロジェクト、リームモール
ヤス島F1・テーマパーク・住宅開発7.0~10.0シーワールド、ヤス・エーカーズ

現地経済の多角化戦略と不動産需要の関連性

アブダビ首長国は長年にわたり経済の多角化戦略を推し進め、石油以外の産業育成に努めてきました。この戦略が功を奏し、昨今の不動産需要とも密接に関連しています。どのように経済多角化が不動産市場に影響を及ぼしているのか、具体例を挙げながら解説します。

まず、経済多角化の成果として顕著なのが観光・文化産業の発展です。政府は文化芸術や観光を重要分野と位置付け、サディヤット島の文化地区開発やヤス島のリゾート開発などに投資してきました。その結果、アブダビはビジネス客だけでなく観光客も増加し、ホテル稼働率は2024年1〜9月で79.4%と前年比+6.3%の伸びを示しました。

観光客増に伴うリゾート近隣の物件価値向上も見逃せません。例えばヤス島ではテーマパーク周辺の住宅賃料が上昇傾向にあり、バケーションレンタル物件への投資利回りも改善しています。

次に、金融・ビジネスサービス業の拡大も不動産需要を底上げしています。ADGMの創設以降、アブダビには海外から金融機関やスタートアップが進出しやすくなりました。

近年ではブラックロックやブレバン・ハワードといった大手資産運用会社がADGM内に拠点を設けるなど、国際金融ハブとして存在感を強めています。米資産運用大手アポロ・グローバル・マネジメントがアブダビ最大の上場不動産会社アルダー・プロパティーズに5億ドル(約18.4億ディルハム)の資金を提供した事例もあります。アルダー社はさらに90億ディルハム(約24.5億ドル)規模のサステナビリティ連動型融資枠を確保しており、今後の市場拡大に備えています。

テクノロジー分野でも起業支援拠点「Hub71」が設立され、世界中のテック企業・人材を誘致しています。その結果、オフィス需要が高まり、2024年末時点でアブダビのオフィス平均稼働率は94%以上、賃料も前年比15%上昇するなど活況を呈しています。これは多角化戦略が生み出したビジネス需要が直接、不動産セクター(オフィス市場)に波及した好例です。

さらに、工業・物流・エネルギー分野への投資も無視できません。アブダビは近代的な工業団地や物流センターを整備し、製造業・流通業の誘致に成功しています。例えば電気自動車関連の製造拠点誘致や、巨大倉庫型小売業(アマゾン等)の物流センター建設が進められており、それに伴い労働者向け住宅や商業施設の需要も生まれています。

またクリーンエネルギーにも注力しており、メガソーラープロジェクトや水素エネルギー研究施設の開発が進行中です。こうした新産業の育成は雇用を創出し、多様な層の人口流入をもたらしています。結果として単身労働者向けのアパートからファミリー層向けのヴィラまで幅広いタイプの住宅需要が増加し、市場全体の底上げにつながっています。

以上のように、アブダビの経済多角化は観光・金融・産業など複数の軸で進展し、それぞれ不動産市場の需要拡大要因となっています。政府高官も「アブダビは才能・投資・ビジネスの一流拠点として自らを位置づけ続けている」と述べており、非石油セクターへの投資がますます加速する見通しです。投資家にとっては、どの産業がどの地域で成長しているかを把握することで、不動産投資のチャンスを捉えやすくなるでしょう。

例えば観光業好調でホテル需要が伸びるならホスピタリティ向け物件に注目する、金融企業増ならオフィスビルや高級賃貸に着目するといった戦略が考えられます。経済構造の変化を敏感に捉え、自身の投資ポートフォリオに反映させることが、アブダビ市場で成功する鍵と言えます。

UAEの産業構成比2024年版円グラフ
こちらはUAEの産業構成比を示した円グラフ(推定)。石油・ガス部門に依存しつつも、非石油セクターが拡大中であることが読み取れます。

最新データから読み解く投資利回り・賃貸需要の動向

アブダビ不動産市場の収益性と賃貸需要について、最新のデータから具体的なトレンドを見てみましょう。投資判断の重要な指標である賃貸利回り(Yield)や家賃相場の動向は、日本人投資家にとっても関心が高いポイントです。

まず、賃貸利回り(ROI)の水準ですが、アブダビは主要先進国と比べても高水準を維持しています。2024年11月時点の調査によれば、アブダビの住宅賃貸利回りは平均で約6.75%に達しており、前年からさらに上昇しました。特にアパートメント物件の利回りが高く、平均で7.3%前後、一方で高額なヴィラ物件の利回りは約5%程度となっています。これは一般的にヴィラよりアパートの方が賃料対価格比が高い傾向によるものです。

特筆すべきは、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)内の「Muheira」プロジェクトのような高級不動産では、年間賃貸利回りが10%以上と推定されていることです。これは一般的な物件よりもさらに高い利回りを期待できるということで、投資家にとって注目すべき選択肢となっています。

いずれにせよ、5~10%台のグロス利回りは、日本の都市部の住宅利回り(2~4%台が一般的)と比べても魅力的であり、投資妙味があると言えます。ただし利回りは物件の所在地やグレードによって幅があります。例えば、市中心部から離れたアルリーフなどの手頃な郊外地区ではアパートの利回りが8%前後に達するケースも報告されています。

一方で超高級エリアのビラでは5%を下回ることもあります。投資家は狙うセグメントによって期待利回りを見極める必要があります。

次に賃貸需要と賃料相場のトレンドです。近年のアブダビでは賃貸市場が活況で、家賃は上昇傾向にあります。2024年第4四半期までの1年間で、アブダビのアパート平均賃料は前年比約12%上昇しました。ヴィラ(戸建住宅)の賃料も同期間で約4%上昇しており、市場全体としてオーナーに有利な賃料上昇局面となっています。

この背景には、前述の人口増加や経済成長による新規需要の流入があります。特に高級志向のテナントからの需要が強く、湾岸の島嶼部など富裕層に人気のエリアでは家賃上昇率が高めです。実際、2023年にはサディヤット島やアルリーム島などの高級住宅地で賃料が最大14%程度上昇したとのデータもあります。

一方で、郊外の中低価格帯アパートでは供給増もあって一部で家賃が数パーセント下落するエリアも見られ、セグメントによる温度差も存在します。総じて言えば、高級・好立地物件は需給タイトで賃料上昇、中低価格帯は横ばいという二極化が読み取れます。

また、空室率・稼働率の指標も堅調です。先述の通りオフィスでは稼働率90%台と満室に近く、住宅でも目立った空室過多の問題は現在ありません。むしろ大型プロジェクト完成前の移行期を除けば需給バランスはおおむね取れており、新規供給が吸収されやすい環境です。例えば、2024年Q4の指標では住宅の売買価格指数が対2021年初比で23ポイント上昇し賃貸指数も18ポイント上昇するなど、売買・賃貸ともに需要超過気味で推移しています。

最後に、利回りの将来動向について触れておきます。価格上昇と賃料上昇の競走によって利回り水準は変化しますが、直近では価格上昇に対して賃料上昇も大きいため利回りはむしろ改善傾向でした(前述の通り平均利回りは前年比+0.5ポイント程度上昇)。ただ、今後新規プロジェクトの大量供給があれば一時的に賃料が緩む可能性もあります。一部の市場予測では、2025年は供給競争により特定エリアで利回りがやや低下するとの見方もあります。

また、UAEを拠点とする不動産開発業者Prestige One Developmentsが2025年までに11の新プロジェクトを立ち上げる計画を発表しており、この供給増加がどう市場に影響するかも注視すべきポイントです。一方で人口と需要が堅調に伸びる限り、中長期的な利回り水準は依然として世界平均を上回る高いレンジを維持するとの予測もあります。投資家は最新データをウォッチしつつ、過度な楽観や悲観を避け、適切な利回り目標を設定することが重要です。

■ 主要エリアの平均賃貸利回り・賃料上昇率比較

エリアアパート
利回り(%)
ヴィラ
利回り(%)
2023年
賃料上昇率(%)
2024年
予測上昇率(%)
サディヤット島8.75.5127
アルリーム島6.75.0105
ヤス島7.05.296

地政学的リスクとグローバル市場との関連──アブダビの安定要因

中東地域への投資となると、政治・地政学リスクを懸念する声もあるでしょう。しかし、アブダビはその安定性と信頼性で群を抜いており、むしろ「安全な投資先」として世界の富裕層資金を引き寄せているのが現状です。ここでは地政学的リスクとグローバル市場との関係を整理し、アブダビ不動産市場の安定要因を確認します。

まず、アブダビを含むUAEの政治的安定性は特筆に値します。中東では政情不安な国もありますが、UAEは建国以来一貫して安定した政権運営が続いています。首長国連邦政府およびアブダビ首長国政府は強力な統治基盤を持ち、治安も極めて良好です。国際機関の指標でも、UAEは「生活の質指数」で中東1位、世界でも24位に位置付けられており、首都アブダビは多様な人々が安心して生活・ビジネスできる国際都市となっています。

次に、経済・財政面での強靭性も安定要因です。アブダビは世界有数の産油地帯であることから、国家として莫大な資金力を有しています。その象徴がアブダビ政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)である「ADIA(アブダビ投資庁)」です。ADIAは世界最大級の政府系ファンドであり、その運用資産額は約1兆米ドルに迫るとも言われます。この潤沢なオイルマネーにより、政府は景気循環に応じた財政出動を柔軟に行える余力があります。不動産市場が仮に景気後退局面で冷え込んだ際にも、インフラ投資や需要喚起策で下支えできる体力があるということです。

またディルハム通貨は米ドルにペッグ(固定)されており、為替の安定性も確保されています。高水準の外貨準備と信用格付けは、海外投資家に資産保全の安心感を与える材料です。

一方で、地政学的リスクそのものが皆無というわけではありません。中東情勢は近隣国の紛争や国際関係に左右される面があり、湾岸地域の安全保障リスクは完全には排除できません。ただUAEは周辺国とのバランス外交に長け、直近の地域紛争にも巻き込まれず安定を維持しています。

仮に地政学リスクが高まった場合でも、アブダビはその政治・財政的な強みから「クライシス時の資産逃避先」として機能する可能性が高いと指摘されています。実際、世界的な不透明感が増した2022〜2023年にはロシアや欧州、中国などから資産をUAE不動産に移す動きが見られ、UAE(特にドバイとアブダビ)はグローバルなマネーの避難先として需要が高まりました。これはアブダビの市場が世界の資本移動と連動しつつ、危機時にも資産価値を保ちやすい側面を示しています。

まとめると、アブダビ不動産市場は(1)政治的安定と治安の良さ、(2)強力な財政基盤と通貨安定、(3)国際分散投資の受け皿となる信頼感、といった複数の安定要因に支えられています。これらは他国には容易に真似できない強みであり、日本人投資家にとっても中長期で安心して資産を置ける環境と言えるでしょう。ただし投資判断においては、オイルマネーに依存する経済構造が完全には脱却できていない点や、世界的な金利動向(ドル金利)に為替がリンクしている点など、グローバルな視座でリスク管理を行うことも忘れてはなりません。

総合的に見れば、アブダビは安定性と成長性を兼ね備えた市場として、適切なリスクコントロールの下で投資対象に加える価値があると言えるでしょう。

執筆者

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