【2025年最新版】アブダビの不動産の購入マニュアル|日本人が必見の手順・注意点を一挙公開

アブダビ首長国(UAEの首都)の不動産市場は近年、外国人投資家にとって魅力的な投資先として急速に注目を集めています。実際、2024年にはアブダビにおける不動産取引件数が前年から24.2%増加し28,249件に達しました。さらに海外からの不動産投資額も前年比125%増の約78.6億AED(約2,900億円)に上り、市場は国際的な投資マネーの流入によって活況を呈しています。
こうした市場拡大の背景には、2019年の法改正による外国人の不動産所有解禁などの規制緩和に加え、売却益・賃貸収入が非課税である点や通貨ディルハム(AED)の米ドル連動による高い安定性など、投資環境の良さが挙げられます。 一定額以上の不動産投資によって長期滞在ビザ(いわゆるゴールデンビザ)を取得できる制度も整備されており、日本国内でもアブダビ不動産への関心が高まっています。
もっとも、海外不動産投資には現地特有の法制度や手続きがあります。日本と異なる環境で安全かつ成功裡に取引を完了させるには、専門的な情報収集と慎重な準備が不可欠です。
本記事では「アブダビ不動産購入マニュアル」と題し、日本人投資家の皆様に向けて、物件検索から契約・登記に至るまでの具体的な手順と押さえておくべき注意点をステップごとに解説します。 プロフェッショナルな視点から最新の知見を交えていますので、アブダビでの不動産購入を検討する際のガイドとしてぜひご活用ください。
アブダビ不動産購入における基本情報|法規と所有権形態
まず、アブダビにおける不動産購入に関する基本的な法規制と所有権の形態について整理します。 アブダビでは、長らく外国人による不動産の直接所有(特に土地の所有)は認められていませんでした。
しかし2019年4月の法改正によって状況が大きく変わり、外国人投資家も政府指定の投資区域(インベストメント・ゾーン)に限り、土地を含めた不動産をフリーホールド(完全所有権)で購入できるようになりました。 この規制緩和により、アブダビは外国人にとってより競争力のある投資先となっています。
所有権形態の種類
アブダビで不動産を購入する外国人には、フリーホールド以外にもいくつかの権利形態が法的に認められています。代表的なものとして以下のような形態があります。
オーナーシップ(Ownership)
完成物件の区分所有権を99年間取得できる形態です。アパートやヴィラなどの建物部分を自由に利用・処分できますが、土地そのものの権利は含まれません。 実質的には長期リース権(借地権付き区分所有)と考えると分かりやすいでしょう。
ムサタハ(Musataha)
開発目的の地上権にあたるもので、最長50年間(当事者合意により同期間の延長可)土地を利用し、上に建物を建設・改良する権利です。 期間内であれば開発や増改築が可能なため、再開発や商業プロジェクト向けの形態です。
ユースフルクト(Usufruct)
日本語でいう用益権に近く、既存の建物を改変せずに利用する権利です。 最長99年間設定でき、期間中は賃貸などで物件を使用収益できます。大規模修繕など構造に関わる部分は所有者(地主)が負担しますが、日常的な維持管理は権利保有者が行います。 権利期間が長く相続も可能なため、実質的に終身利用にも耐え得る枠組みです。
長期賃借権(Long-term lease)
25年以上の賃借契約によって不動産を利用する形態です。リース期間内は物件を占有・使用できますが、期間満了時に権利が消滅します。
上記のように、2019年の改正前は外国人が取得できるのは最長99年の利用権(リースホールド)のみで、土地の所有権は与えられませんでした。 しかし改正後は指定投資エリアに限り土地付きの完全所有権(フリーホールド)取得が可能となっています。
指定エリアとは行政当局が定めた外国人購入可能地域のことで、アブダビ市内には主要なものだけでもヤス島、サディヤット島、リーム島、マリヤ島、アル・ラハ・ビーチ、アル・リーフ、マスダール・シティなど9地域が該当します。 例えば高級住宅地のサディヤット島や投資人気の高いヤス島、中心業務地区のアル・マリヤ島などが挙げられ、それぞれ特色ある開発が進められています。
形態 | 最長契約期間 | 取得対象 (建物・土地) | 維持管理の範囲 | 相続可否 | 適した投資スタイル |
---|---|---|---|---|---|
オーナーシップ (Ownership) | 99年 | 建物区分所有 (土地は除く) | 専有部と日常修繕 (大規模修繕は原則オーナー) | 可能 | 中長期保有や賃貸運用に向く (所有権に近い形で利用可能) |
ムサタハ (Musataha) | 50年 (+延長可) | 土地利用権+ 建設・改良権 | 建物の開発・ 大規模改修を行う | 当事者合意により可 | 再開発や大規模プロジェクト向け (長期的な事業投資に適する) |
ユースフルクト (Usufruct) | 99年 | 建物の用益権 | 日常管理や軽微な修繕 (構造部分は地主負担) | 期間内であれば可能 | 長期賃貸や居住用投資 (実質的に終身利用にも対応) |
長期賃借権 (Long-term lease) | 25年以上 | 賃借物件 | 基本的な修繕は借主 大規模修繕は貸主負担 | 不可 (契約期限まで) | 短~中期保有向け (権利取得コストが比較的低め) |
関連法制度
アブダビの不動産市場では、透明性と投資家保護のための制度整備も進んでいます。 例えば、オフプラン物件(完成前の物件)を販売する際にはデベロッパーに対してエスクロー口座の開設が義務付けられており、購入者の支払った資金は物件完成まで信託保全されます。 これは資金流用やプロジェクト頓挫によるリスクを抑える仕組みです。
また、不動産取引の電子化が推進され、DARIと呼ばれるオンラインプラットフォーム上で権利証明書の取得や売買申請が可能になっています。さらに、区分所有物件ではオーナーズ・アソシエイション(管理組合)制度が導入され、共有部分の管理や維持が適切になされる枠組みが整備されています。
以上が基本的な法制度と所有権形態の概要です。 要約すれば、外国人投資家は指定エリア内であれば土地付きの不動産を購入可能であり、エリア外でも一定の利用権を取得して不動産を活用する道が開かれています。
税制面では個人に対する不動産取得税・固定資産税は無く、賃貸収入や売却益にも課税がないため、投資利回りを高めやすい環境と言えます。 ただし、日本の居住者は海外不動産から得た所得に対して日本で納税義務を負います(後述)ので、この点は留意が必要です。 それでは具体的な購入手順に沿って、ポイントを見ていきましょう。
【手順①】物件検索と仲介業者の選定|情報収集のコツ
アブダビで理想の不動産を見つける第一歩は、徹底した情報収集から始まります。 投資対象を問わず(居住用・収益物件・商業用いずれの場合も)、市場動向やエリアの特性、物件価格の相場観を把握することが重要です。
物件情報の集め方
現地の主要な不動産ポータルサイトを活用すると、市場に出ている物件の概要を効率的に把握できます。 例えば「Bayut」や「Property Finder」といったサイトでは、エリアごとの販売中物件リストや価格帯、写真、利回り情報などが掲載されており、日本に居ながらでもある程度の情報収集が可能です。
気になる物件が見つかったら、掲載している仲介業者(ブローカー)に問い合わせて詳細資料を取り寄せたり、オンライン内見を依頼したりできます。また、アブダビ現地の不動産会社が開催するウェビナーや、日本国内で開催される海外不動産セミナーに参加するのも有益です。 そうした場では最新の開発プロジェクト情報や市場トレンド、法改正動向などを専門家から直接聞くことができます。
仲介業者(ブローカー)の選定
現地で信頼できる仲介業者を選ぶことは、成功する取引の要となります。 幸いアブダビでは、不動産業者および仲介担当者には公的なライセンス取得が義務付けられており、無許可業者が蔓延しているような状況ではありません。 しかし、中には不正な経歴を持つ者が紛れている可能性もゼロではないため、業者選びにおいては以下の点に注意しましょう。公的ライセンスの確認
仲介会社がアブダビ自治体(DMT)に正式登録されているかを確認します。企業のトレードライセンス(営業許可証)上に記載された社名や代表者名をオンラインで検索し、信頼に足る実績があるか調べてください。 必要に応じてDMTのライセンス検索システムで該当業者の登録状況を照会します。過去の実績と専門性
選択したエリアや物件タイプ(例:高級ヴィラ、オフィスビル等)の売買実績が豊富にある仲介会社を選ぶと安心です。 日系企業や日本人スタッフが在籍する仲介会社であれば、日本語でのコミュニケーションや日本人特有のニーズへの対応力という点でメリットがあります。手数料(コミッション)の確認
仲介手数料は通常、物件価格の2%程度+VAT(5%)が相場です。 売主・買主のどちらが負担するかは契約条件によりますが、一般的に買主が支払うケースが多い点を念頭に置き、契約前に必ず確認しましょう。現地での視察対応力
日本在住の場合、購入前に現地訪問して物件を見ることが難しいケースもあります。そのため、代理で現地視察しビデオ通話等で内覧を中継してくれるなど、遠隔からの投資家支援に慣れた業者だと安心です。 購入検討段階で必要に応じて現地の写真・動画、周辺環境のレポートなどを提供してもらいましょう。
以上のような基準で信頼できる仲介パートナーを見つけることができれば、以降の手続きが格段に進めやすくなります。 実際の取引に入る前に、気になる点は納得いくまで質問し、コミュニケーションを密に取ることが大切です。
情報収集のコツとしては、複数の情報源を照合して鵜呑みにしない姿勢も重要です。開発業者の宣伝する将来予測やパンフレット上の完成予想図だけに惑わされず、現実的なリスク評価(為替変動リスク、政治・経済動向、流動性リスクなど)も行いましょう。
例えば、アブダビの住宅賃貸市場は2024年時点で平均利回り約6.75%(アパートは7%超)と堅調ですが、物件タイプや立地により差があります。 魅力的な表面利回りだけでなく、維持費や空室リスク、日本での税負担を考慮したネット利回りをシミュレーションし、投資判断することをお勧めします。 物件検索と情報収集のフロー(アブダビ不動産購入)
ポータルサイトで検索
(例: Bayut, Property Finder等)
仲介業者へ問合せ
(免許登録済み業者を選定)
現地視察 or
オンライン内見
(JETROなどで現地制度を確認)
比較・検討
(物件条件・費用・契約リスク)
【手順②】購入交渉と契約時の要チェックポイント
希望する物件が見つかったら、次は売主との価格交渉と契約手続きに進みます。 購入申込から契約締結にかけてのプロセスでは、いくつか注意すべき重要ポイントがあります。
価格交渉と申込金支払い
基本的に中古(完成済)物件の売買では、提示価格に対して値引き交渉が行われます。 市場動向や類似物件の成約事例を参考にしつつ、仲介業者を通じて適切なオファー価格を売主に提示しましょう。 価格合意に至ったら、口頭または書面で購入申込(オファーレター)を行い、売主の了承を得ます。
一般にこの段階でデポジット(手付金)を支払いますが、金額は物件価格の5~10%程度が目安です。 手付金は売主の要求や交渉力によって増減し、契約不成立の場合の返金条件なども事前に取り決めておく必要があります。 仲介業者がエスクロー機能を提供する場合、手付金は一旦仲介業者名義の信託口座に預けられ、契約成立時に売主へ充当されます(買主都合でキャンセルした場合は違約金として没収されるのが通常です)。
売買契約(SPA)の締結
手付金の支払い後、仲介業者が売主・買主間の売買契約書(Sales and Purchase Agreement, SPA)を準備します。 契約書は英語またはアラビア語で作成され、双方が署名することで法的拘束力を持ちます。 契約内容で特にチェックすべき主なポイントは次の通りです。
- 物件詳細と権利証明
契約書に記載された物件の所在地、面積、間取り、権利形態が、事前の説明と完全に一致しているか確認します。 また、売主が提示する所有権証書(タイトルディード)が正式なものであるか、仲介業者とともに公簿で検証することが重要です。 - 支払い条件
物件代金の支払いスケジュールを明確にします。 中古物件の場合、契約締結時に手付金を充当し、残額を登記時(名義移転時)に一括支払いするケースが一般的です。 オフプラン物件では開発業者の提示する分割払いスケジュール(建築進捗に合わせた数回の分割払いや引渡し時のバルーン支払い等)を確認します。 いずれの場合も支払通貨(通常AED)と為替レートの留意、送金手数料の負担先を取り決めておきます。 - ローン利用の有無
買主が現地銀行融資を利用する場合、契約書にローン特約条項を入れることも可能です。 ローン審査が否決された場合に手付金を返金して契約解除できるよう定めておくことで、万一の資金調達失敗リスクに備えます。 日本の居住者でもUAEの銀行で融資を受けることは可能ですが、頭金割合や金利条件は銀行によって異なるため、事前に仮承認を得ておくと安心です。 - 物件の引渡し条件
引渡し日(決済日)に物件を空室の状態(Vacant)で受け取るのか、それとも既存テナント付きで引き継ぐのかを明確化します。 投資用物件で賃借人ごと引き継ぐ場合、現行賃貸借契約の内容(賃料、契約残存期間、敷金の扱い等)を確認し、賃料収入の引渡し日以降の按分計算も取り決めます。 自ら居住する目的で購入する場合は、引渡しまでにテナント退去完了を売主側で保証させる条項を入れるべきです。 - デベロッパーからの承諾(NOC)
中古物件で、かつ物件がデベロッパーから完全に引き渡されていないケースでは、所有権移転に先立ちデベロッパーからの譲渡同意書(No Objection Certificate, NOC)取得が必要になります。 売主が開発業者からNOCを取得し未払金が無いことを証明する手続きで、NOC発行手数料がかかる場合は通常売主負担です。 - 契約不履行時の取り扱い
万一売主または買主が契約義務を履行できなかった場合の措置も記載されます。 一般的に買主都合のキャンセルでは手付金没収、売主都合の場合は手付金返還 + 同額のペナルティ支払い、などが定められます。
契約書の内容は専門的かつ分量も多いため、不明点があれば遠慮なく仲介業者や弁護士に質問し、理解した上で署名してください。 特に日本人在住者の場合、英語の法律文書に不慣れなことも多いので、重要箇所については日本語で説明を受けるか、日本語翻訳版(参考用)を用意してもらうと良いでしょう。
また、売買契約締結のタイミングで名義変更料(譲渡登録料)の負担者についても合意しておきます。 アブダビでは不動産の所有権移転時に物件価格の2%相当の登録料が発生し、慣行的には買主・売主で折半するケースが多いですが、取引条件として買主が全額負担することもあります。 どちらが支払うか曖昧にすると後のトラブルとなりかねませんので契約時に明記しておきましょう。
以上が契約段階での主なチェックポイントです。契約締結後は物件の引渡し(決済)と登記手続きに移ります。
チェック項目 | 内容・注意点 |
---|---|
物件詳細 |
物件所在地、面積、間取り、権利形態が 事前説明と完全一致しているか確認する |
支払い条件 |
物件代金の支払いスケジュール(手付金・ 残額の支払時期、ローン審査期間など) |
名義変更料 |
不動産所有権移転時に課される登録料 (物件価格の2%程度を折半 or 買主負担など) |
デベロッパーからのNOC |
開発業者に未払金が無いことを証明する 譲渡同意書(No Objection Certificate) |
契約不履行時のペナルティ |
買主都合のキャンセルで手付金没収、 売主都合で手付金返金+追加賠償などの条件 |
【手順③】登記・所有権移転手続き|必要書類と流れ
売買契約が締結されたら、最終段階として不動産の名義変更=登記手続きを行います。 アブダビでは土地・不動産の登録を担当する土地登録局(Land Registration Department, LRD)が登記業務を管轄しており、買主への所有権移転はLRDにて公式に登録することで完了します。
必要書類の準備
登記申請にあたっては、あらかじめ以下の書類を揃えておきます。
- 当事者双方の身分証明書(個人購入の場合はパスポートのコピーとUAE居住者であればエミレーツID、法人購入の場合は商業登記証明書など)
- 売買契約書(SPA)の原本
- 支払い完了を証明する書類(手付金や中間支払いの領収書、残代金の支払い証明)
- 物件の所有権証明書(タイトルディード)または中間登録証明(オフプラン物件の場合)
- モーゲージを利用する場合、金融機関からの融資承認書や抵当権設定予定証明
- 売主による管理費・光熱費等の未納がないことの証明(管理組合の発行する完納証明)
- デベロッパーからのNOC(必要な場合、上述)
また、買主または売主が当日立ち会えない場合は、委任状(Power of Attorney)を事前に作成して代理人に権限を譲渡しておく必要があります。 委任状は日本で公証の上、UAE大使館での認証手続きを経て現地で有効化します。 特に海外在住者がアブダビに渡航せずに手続きを完了させたい場合、このPOAの準備に時間を要するので早めに対応しましょう。
登記申請と所有権移転の流れ
必要書類が整ったら、いよいよLRDでの名義書換となります。当日は買主・売主双方(またはその代理人)が土地局窓口に出向き、公式な手続きを進めます。 一般的な流れは以下の通りです。
- 登記申請フォームの提出
用意した必要書類一式とともに、所定の不動産名義変更申請書を提出します。 ここで係官が書類を確認し、不備がなければ次のステップに進みます。 - 登記手数料の支払い
前述の登録料(物件価額の2%)を支払います。 通常は買主・売主で折半するため、それぞれ1%ずつ負担します(契約で買主全額負担とした場合は買主が2%全て支払い)。 支払い後、領収証を受け取ります。 - 名義移転の承認
土地局の担当官立ち会いのもと、売主・買主双方が最終合意書類に署名します。 売主は買主への権利譲渡に同意し、買主は物件の権利と義務を引き継ぐことを確認します。 その後、係官が書類一式を審査し、問題なければ登記を承認します。 場合によっては物件の簡易な現地調査(インスペクション)が行われることもあります。 - 新所有権証書(タイトルディード)の発行
登記完了後、新たな名義人である買主の名前が記載された権利証明書(タイトルディード)が発行されます。 これにより正式に所有権移転が完了し、買主は法的な所有者となります。 タイトルディード発行手数料として1,000AED程度が別途課されます。
以上で不動産の売買手続きは完了です。 登記が済んだら、必要に応じて購入物件の電気・水道など公共料金の契約名義を自分に変更します(賃貸に出す場合は物件登録システム「TAWTHEEQ」に賃貸契約を登録し、テナントが公共料金を使用できるようにします)。
また、購入物件を第三者に賃貸する予定であれば、現地の賃貸借法に従って正式な賃貸契約書を作成し、デポジットの受け渡しなど所定の手続きを行います。 商業用物件を購入した場合は、事業ライセンスとの関連手続き(例えばオフィス購入なら自社ライセンスの所在地変更登録等)も必要に応じて行ってください。
なお、行政サービスのデジタル化により、近年は政府統合プラットフォーム「TAMM」や不動産ポータル「DARI」を通じて一部手続きをオンラインで進めることも可能です。 売買当事者間で条件合意済みの場合、事前にオンライン申請しておくことで窓口での処理時間を短縮できます。
アブダビ不動産購入で押さえるべき注意点
最後に、アブダビで不動産を購入する際に留意すべきポイントを整理します。 中級~上級の投資家であれば既にご存知の事項も含みますが、リスク管理の観点から再確認しておきましょう。外国人購入規制の遵守
繰り返しになりますが、外国人が完全所有権を取得できるのは指定投資エリア内の不動産に限られます。 投資検討段階で対象物件がそのエリアに該当するか必ず確認してください。 指定エリア外でも長期リース権等で購入できる場合はありますが、権利内容が限定されるため慎重な判断が必要です。仲介業者・関係者の信頼性
現地には無許可で違法に仲介行為を行う者や、過去に不正を働いた経歴を隠して営業している者が存在しないとは言い切れません。 必ず公式にライセンス登録された業者を利用し、担当者個人についてもできれば背景を調べておきましょう。 特に、日本人投資家を狙った詐欺的な勧誘には注意が必要です。 華やかな宣伝文句や将来予測に惑わされず冷静に対応し、怪しいと感じたら契約しない勇気も大切です。 現地法律や取引実務に詳しい日系の不動産コンサルタント等をセカンドオピニオンとして活用するのも一案です。為替リスクと送金
投資通貨は基本的にAED建てとなるため、日本円で運用している資金を現地通貨に両替・送金する際のレート変動リスクがあります。 ディルハムは米ドルにペッグ(固定)されていますが、日本円から見た為替相場は日々変動します。 可能であれば契約から決済までの間に為替予約を行ったり、複数回に分けて送金して平均レートを平滑化するなど、適切な為替リスクヘッジを検討してください。 また、海外送金には銀行手数料がかかるため、大口資金を送る際は手数料の安い方法を選ぶなどコスト管理も重要です。法務・税務の専門家相談
アブダビでの不動産購入自体には所得税やキャピタルゲイン課税はありませんが、日本の居住者である限り海外不動産から生じた所得には日本で課税されます。 具体的には、賃貸収入は日本の総合課税所得となり確定申告が必要ですし、将来売却して利益が出れば譲渡所得として課税対象となります。 日本とUAE間には所得に関する租税条約が存在しないため、外国税額控除等も使えず、日本で二重課税される形になります(もっともUAE側で税金がないため厳密には「二重」ではありませんが)。
従って、購入前に日本の税理士や国際税務に詳しい専門家に相談し、税引後ベースでの収益シミュレーションを行うことを推奨します。 また、物件購入に関連して日本から資金を送金する際の贈与税や、相続発生時の財産承継ルール(UAEではイスラム法に基づくため、非イスラム教徒の場合は遺言登録が必要)についても確認しておくと安心です。物件管理と運用
購入後の物件管理プランも事前に考えておきましょう。 自分で現地に居住し使用する場合を除き、第三者に貸し出すならプロパティマネジメント会社を起用することを検討します。 遠隔地から賃貸運営をする場合、入居者募集から契約、日常の修繕手配、退去清算まで管理会社に任せるのが一般的です。 管理委託料は年間賃料収入の5~8%程度が目安ですが、管理内容によります。
特に日本と比べ入居者の入れ替わりが多い市場ですので、現地の慣習に沿った迅速な対応ができる体制を整えておくことが大切です。 また、区分所有物件ではオーナーズ・アソシエイションにより共用部管理費(いわゆる管理費・修繕積立金)が定期的に徴収されます。 こうした維持コストも計算に入れ、キャッシュフローに無理がないようにしましょう。出口戦略
投資である以上、将来的な売却(エグジット)戦略も視野に入れておくべきです。 アブダビ不動産市場は流動性が高まっているとはいえ、物件タイプや市場状況によって売却まで時間を要する場合もあります。 売却時にも名義変更料(2%)や仲介手数料(2%前後)が発生します。 購入時点でこれらコストを念頭に入れ、目標とするリターンを得るにはどの程度の価格上昇や運用期間が必要か逆算しておくと良いでしょう。 無理のない出口計画を立てておくことが肝要です。