【2025年最新】カンボジアのビジネス環境を徹底解説!有望な投資先としての魅力とは?

カンボジア ビル 夜景
目次

カンボジア2025

急成長の新興市場

カンボジアは、東南アジアの新興国として近年、目覚ましい経済成長を遂げています。人口は約1,700万人(2025年推定)とされ、若年層が多い構造が大きな強みです。労働力の供給が豊富であることから、製造業やサービス業など、さまざまな産業分野で人材確保がしやすいのが特徴です。また、ASEAN諸国の一員として域内経済の統合が進んでおり、地理的にも周辺国へのアクセスが容易であることは大きなアドバンテージとなっています。

政治・経済の安定

カンボジアは過去30年ほどで社会情勢が安定化に向かい、政治面でも一定の安定性を維持するようになりました。もっとも、2023年8月には長年首相を務めたフン・セン氏が退任し、フン・マネット氏が新首相に就任するなど、政権内で大きな変化も見られます。 以前は政情不安やインフラの脆弱さなどが投資の障壁となっていましたが、ここ10年ほどは国際的な資金流入を背景に、建設や不動産などの分野を中心に急成長が続いています。政府主導の投資誘致活動や新たな投資法の整備なども進み、外国資本の参入がしやすくなっている点が特筆されます。

2025年現在、IMF(2025年1月27日発表)による予測ではGDP成長率は5.8%、ADB(2024年4月11日発表)による予測では6.0%とされています。 観光需要など外部要因次第では、これらの水準からさらに上振れする可能性もあります。カンボジア経済を支える中心都市である首都プノンペンは、ビジネスや金融のハブとしてますます重要度を増しています。さらに、観光地として著名なシェムリアップや沿岸部のシハヌークビルも、リゾート開発と産業開発を同時に進めることで、新たなビジネスチャンスが生まれています。

カンボジアのGDP成長率推移

カンボジアのGDP成長率(2015年~2024年)の推移を示すグラフ

とはいえ、政治リスクが完全になくなったわけではなく、汚職や法整備の不透明さなど注意点は依然残ります。 周辺の大国との関係を安定的に維持している現状や、海外からの援助・支援を積極的に取り込む姿勢から、政治・経済の急激な崩壊リスクは現時点で比較的低いと考えられています。ただし、政権交代や選挙の動向には常に注視が必要です。

プノンペン市街地
カンボジア主要都市

主要産業

繊維からIT・サービス

カンボジアを代表する産業は、やはり繊維・縫製業です。特に欧米市場向けのアパレル製品を大量生産している現状があり、海外企業の生産拠点が多数進出しています。低い人件費と若年労働力の豊富さが強みとなり、衣料品の輸出額は国全体の輸出を牽引してきました。

カンボジアの繊維工場
産業 輸出額シェア(%) 従事者数(万人) 備考
繊維・縫製 45 120 カンボジアを代表する主要輸出産業
IT 8 10 スタートアップやデジタルサービスが台頭中
サービス 20 90 観光客増加によりホテル・飲食店などが拡大
農業 10 300~400 米を中心に輸出拡大。統計によっては300万以上が従事

IT・観光の可能性

一方で、近年はIT・デジタル分野への投資機会も高まりを見せています。カンボジア政府はスタートアップ支援やIT人材の育成を掲げ、技術教育機関の拡充を図っています。プノンペンを中心にコワーキングスペースや起業インキュベーション施設が増え、AIやブロックチェーン技術を活用するベンチャー企業が少しずつ台頭してきました。ただし、IT分野の多くは国内サービスに注力しており、輸出型産業としての確立にはまだ時間がかかるともいわれています。

さらに、サービス業、特に観光関連では、アンコール・ワットなどの世界遺産を背景に外国人観光客の増加が続いています。ホテル、レストラン、交通などの周辺サービスは拡大傾向にあり、中間層の増加に伴う国内需要の伸びも合わさって、内需型サービス業にもチャンスがあります。例えば、小売業や外食産業などは国内市場の所得水準が上がるにつれ需要が増しており、特に若年層をターゲットとしたファッション・飲食分野は大きな可能性を秘めています。

インフラと物流

道路・港湾・通信のビジネス機会

カンボジアが経済成長をさらに加速させるためには、インフラ整備が欠かせません。2020年代に入ってから、政府や国際機関、外国企業による投資が大幅に増加し、道路・港湾などの物流インフラが改善されてきました。特に注目されるのが、中国の「一帯一路(Belt and Road Initiative)」構想と連動した大規模プロジェクトです。カンボジア国内の国道や高速道路の整備、主要港湾の拡張工事などが進み、輸送コストの削減とサプライチェーンの効率化が期待されています。

シハヌークビル港は、カンボジアで最も重要な深水港として位置づけられ、東南アジア地域の貿易拠点化を目指す拡張工事が続いています。 この港湾整備は国外からの直接投資だけでなく、物流関連企業や倉庫業、さらには加工貿易企業などの進出を促進しており、製造業やサービス業にも波及効果をもたらしています。

シアヌークビルの街並み

通信インフラ

通信インフラの面でも、携帯通信やインターネット環境は以前と比べ大きく向上しました。首都プノンペンだけでなく地方都市でも4Gや5G通信を活用できるエリアが拡大しており、都市部ではスマートフォンやSNSの普及率が急上昇しています。政府や民間企業によるデジタル化推進の一環で、Eコマースやオンラインサービスの市場はまだまだ伸びしろが大きいのが現状です。

ただし、インフラの整備度合いは地域によって大きな差があります。都市部以外では依然として道路が未舗装の地域も多く、通信速度が安定しないことも珍しくありません。この地域差をどのように克服していくかが、カンボジアでのビジネス展開の鍵となるでしょう。しかし逆にいえば、地方インフラの未整備領域はビジネスチャンスの宝庫ともいえ、物流企業や建設業などが積極的に参入しているケースが増えています。

カンボジアの空港

投資優遇・税制

新投資法の注意点

カンボジア政府は、外資誘致を強化するために数々の投資優遇策を打ち出しています。代表的なものとしては、特定事業に対する法人税の免除や減免、機械設備や建築資材の輸入関税の優遇などがあります。また、経済特区(Special Economic Zone, SEZ)の活用により、インフラの整った地域でスムーズに工場を設立できる仕組みを用意している点も大きな魅力です。

2021年10月15日に施行された新投資法(Law on Investment in the Kingdom of Cambodia)は、2025年2月現在も有効で大きな改正は行われていません。ただし、実施細則の整備やオンライン登録システムの導入、優先分野の拡大など、重要な展開がありました。これにより、投資プロジェクトの審査・承認が従来より迅速化され、税制面でも一定期間の法人税免除や輸入関税の優遇が拡大されています。特に製造業・農業関連・インフラ開発・IT分野など、政府が「優先分野」と定める業種においては優遇措置が手厚いです。

一方で、注意すべき点もあります。カンボジアの税制や法制度はまだ整備途上であるため、各種許認可の取得や税務当局とのやり取りに時間や手間がかかるケースがあります。 また、汚職や不透明な取引慣行が懸念されることもあるため、信頼できる現地パートナーや法律事務所・会計事務所との連携が不可欠です。投資優遇策を最大限活用するには、最新情報を常に把握するとともに、法令改正や政令の発布などに応じて柔軟に対応できる体制づくりが求められます。

投資に伴うリスクマネジメントを怠らず、現地の制度や慣習を理解したうえで正しく活用することで、カンボジアの優遇策は大きなアドバンテージとなるでしょう。

ASEAN

地域経済統合の存在感

カンボジアはASEANの一員として、地域経済統合の恩恵を受けています。ASEAN経済共同体(AEC)は、加盟国間の関税撤廃やサービス・投資の自由化を推進しており、域内物流や資本移動を円滑化する枠組みを整備しています。これにより、カンボジアは低コスト労働力の供給地であるだけでなく、東南アジア全体のサプライチェーンの一端を担う重要拠点になりつつあります。

2025年までにAECが達成した主な成果としては、各種関税の撤廃やサービス貿易自由化のさらなる推進が挙げられます。一方で、非関税障壁の削減や規制の調和などの課題は依然として残っており、加盟国間の経済格差をいかに縮小するかが大きなテーマです。カンボジアはまだ経済規模が小さく、インフラ整備が遅れている部分があるため、AECによる恩恵を最大限享受するにはさらなる改革が必要とされています。

課題・チャンス

ただし、AECは各国の経済格差や産業構造の違いにより、その統合度合いにばらつきがあるのも事実です。 カンボジアはまだ経済規模が小さく、インフラ整備も遅れている部分があるため、AECによる恩恵を最大限享受するにはさらなる改革が必要とされています。しかし、逆にいえば成長の余地が大きいともいえ、AECと連携した輸出型ビジネスやサービス産業は大きなポテンシャルを秘めています。

また、ASEAN域内の人材移動が活発化すれば、カンボジアの若年労働力に対する需要がさらに高まる可能性があります。地域統合が進むほど、カンボジアの比較優位が際立ち、ビジネス拡大の機会が増えると考えられます。

雇用・人材

若年労働力と人材育成

カンボジアは平均年齢が20代と若く、アジアの中でも若年人口の比率が高い国の一つです。この豊富な若年労働力は製造業やサービス業において大きな強みとなり、労働集約型産業の発展を後押ししてきました。最低賃金は周辺国と比較しても低めとされてきましたが、都市化が進むにつれコスト構造は変化しつつあります。

専門人材不足

一方で、専門的な技術や高度なマネジメントスキルを有する人材は、まだ不足しているという現実があります。こうした人材ギャップを埋めるために、カンボジア政府や民間セクターは職業訓練校の拡充や大学教育の強化に力を入れています。特にIT分野やビジネス英語の習得支援などが注目されており、今後はホワイトカラー人材の裾野が少しずつ広がっていくことが期待されます。

日系企業では、現地スタッフの育成を積極的に行う例が増えており、研修プログラムや日本への留学支援などを通じて、優秀な人材の登用を図るケースも見られます。ローカル人材への信頼とモチベーション向上を促進することで、長期的な企業成長につなげる戦略が鍵となります。

賃金上昇

2025年現在、カンボジアの最低賃金は月額208ドルで、2024年の204ドルから2%引き上げられたものです。 これはベトナムの最高額(196ドル、地域I)よりやや高いものの、タイの主要都市部(372ドル)よりは低い水準にあります。近年の都市部では生活コストの上昇に伴い、最低賃金も上昇傾向にあります。

繊維・縫製業の国際競争力を維持するためには、生産性向上策や人材教育がますます重要となるでしょう。カンボジアでの雇用・人材活用を成功させるには、若い労働力を活かしつつ、技術力とマネジメント力の向上を同時に図る必要があります。

日系企業

製造・サービス・スタートアップ

カンボジアには、製造業を中心に多くの日系企業が進出しています。典型的な例としては、繊維・縫製業や靴・バッグなどの軽工業を手がける工場がプノンペン近郊や経済特区において操業しており、安価な労働力と政府の投資優遇策を組み合わせることで、日本国内や第三国向けに競争力のある製品を出荷できるのが魅力です。

サービス・ITの新潮流

サービス業においても、コンビニエンスストアや飲食チェーンなど日系企業の進出が活発化してきました。カンボジア国内で増加する中間層をターゲットに、食の安全性や品質管理に強みを持つ日本ブランドが徐々に受け入れられています。加えて、観光客向けのホテルや旅行代理店なども、カンボジアの観光需要拡大に合わせて進出を加速させています。

スタートアップ分野では、ITやFinTech、スマート農業などの領域で、日本の技術やノウハウを活かしながら現地ニーズに適応したビジネスモデルを展開する企業が増えています。たとえば、カンボジアの銀行口座普及率がまだ低いことに着目し、モバイル送金サービスやデジタルウォレットの開発を行うベンチャー企業が活躍しています。

成功要因

成功要因としては、以下のような点が挙げられます。

  • 現地パートナーとの良好な関係構築
  • 人材育成に対する長期的視点
  • 最新の投資法や優遇策の活用
  • リスクマネジメントと柔軟な経営判断

リスク・課題

政治リスク・インフラ不足

新興市場である以上、カントリーリスクは常に存在します。カンボジアの場合、過去の内戦から立ち直りつつあるとはいえ、政治体制や法整備には不安定な要素が残っています。選挙や政局の変動に伴い、経済政策が急に変更される可能性や、汚職・不正取引への対処が十分でないケースも考えられます。

法整備

カンボジアは法令の整備や運用がまだ十分でない分野があり、契約の履行や知的財産権の保護においてトラブルが発生することもあります。対策としては、ビジネス契約を作成する際に日系の法律事務所や実績のあるローカル弁護士を活用することが有効です。

インフラ対応

道路や電力、通信といったインフラは改善傾向にあるものの、地方ではまだまだ不十分です。製造拠点を都市部に絞るか、経済特区など設備が整った地域での操業を行うことで、インフラ不足によるリスクを軽減できます。

汚職リスク

カンボジアでは汚職が依然として残るとの指摘があり、企業活動の妨げになる恐れがあります。グローバル企業では内部統制の強化や監査を徹底し、不当な要求に応じない方針を明確にすることで対処しています。

在住外国人

生活インフラ

カンボジアの首都プノンペンや主要都市シェムリアップ、シハヌークビルには在住外国人コミュニティが形成されています。日系企業の進出に伴い、日本人駐在員や経営者、長期滞在者も増えており、日本人学校や日本食レストラン、医療サービスなどが整備される傾向にあります。生活面では、以前に比べて格段に快適な環境が整いつつあるといえるでしょう。

高級コンドミニアムやサービスアパートメントが都市部で次々に建設されており、一定の家賃を支払えば欧米や日本に近いクオリティの住居を確保できます。 ただし、地方都市や郊外における住環境はまだ整備が遅れているため、赴任者の生活拠点としては都市部が中心となるでしょう.

医療・教育

医療水準は都市部で急速に向上しているものの、地方ではまだ十分とはいえません。プノンペンでは国際水準を掲げる私立病院やクリニックが増え、英語や日本語に対応した医療機関も徐々に見られます。教育面ではインターナショナルスクールや日本人学校も存在し、駐在員の子女が通うケースが増えています。

治安・物価

カンボジアの治安は以前と比べて大きく改善されているものの、スリやひったくりなどの軽犯罪は都市部でも依然として発生します。政治デモなどが発生した際には集会場所に近づかないなど、リスク管理を徹底する必要があります。また、都市部では物価が上昇しており、特に外国人向けサービスは高額化する傾向にありますが、ローカル市場を利用すれば比較的安価に生活可能です。

まとめ

投資は“今”がチャンス

ここまで述べてきたように、カンボジアは2025年時点で急速な経済成長を続け、投資先としての魅力が増しています。繊維・縫製などの伝統的製造業だけでなく、ITやサービス業、観光産業など多様な分野でビジネスチャンスが存在します。若年層人口の多さと積極的な投資優遇策、さらにASEAN経済共同体(AEC)の恩恵を受けられることなど、投資家にとって注目度の高い国であることは間違いありません。

一方で、法整備の不十分さやインフラ格差、政治リスクなど、新興国特有の課題があるのも事実です。しかし、これらのリスクは現地の実情を正しく理解し、パートナー選定やコンプライアンスを徹底することで、ある程度コントロールすることが可能です。また、インフラ開発の進行や人材育成の取り組みによって、これまで以上にビジネスがしやすい環境が整いつつあります。

日本を含む先進国市場が成熟化するなか、アジア新興国へのシフトは企業成長の大きなカギとなります。カンボジアはその中でも、政治・社会情勢が安定化してきたことや低水準の人件費など、多くの魅力を兼ね備えています。 実際、多くの日系企業が繊維・縫製だけでなくサービス業やIT分野などでも成功事例を生み出しつつあります。

カンボジアへの投資タイミングとしては、まさに“今”が好機といえるでしょう。インフラが完全に整う前の段階で参入することで、先行者利益を得る可能性が高まります。特に、若年労働力を活かした生産拠点の確立や、急拡大する消費市場への参入を狙う企業にとっては、ビジネスチャンスが豊富に存在します。

とはいえ、短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点でカンボジアの成長に寄り添いながら事業を展開することが重要です。 人材教育やインフラ整備への協力を行い、現地社会と共存共栄を図ることで、信頼関係を築きながら安定した成長を目指すことができます。リスクをしっかりと把握しつつ将来のポテンシャルを見据えて投資を検討する企業にとって、カンボジアは確実に有望な選択肢となるでしょう。

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

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