日本人のリタイア先としてエジプトは人気?移住で気になる治安・物価・教育等のポイント

目次

日本人のリタイア先としてエジプトは人気?概要と注目度【図解あり】

日本人にとってエジプトはリタイア先として人気があるのか

エジプトと東南アジア主要国の日本人在留者数比較(2024年)
国名 人数 比較
タイ 70,421
100%
シンガポール 32,565
46%
マレーシア 24,545
35%
ベトナム* 21,819
31%
インドネシア* 15,972
23%
フィリピン* 14,522
21%
エジプト 804
1%

注記:*印は2022年データ。タイのデータを100%として相対比較。
出典: 外務省「海外在留邦人数調査統計」、JETRO「エジプト概況・基本統計」

エジプトは現在、日本人のリタイア先としては限定的な人気にとどまっています。外務省の最新データによると、2024年時点でエジプトに在住する日本人は804人となっており、東南アジア諸国と比較すると決して多くありません。一方で、2022年には11,000人の日本人がエジプトを訪問しており、観光地としての魅力は認知されています(*1)。

エジプトに進出している日本企業は65社を数え、ビジネス面での関係は徐々に深まっています。

しかし、リタイア移住先としては、まだ一般的な選択肢になっていないのが実情です。これは言語の壁文化的な違い、さらには情報不足が主な要因として挙げられます。

近年の国際的な退職移住研究では、日本人が海外リタイアを検討する際の主要な動機として、生活費の削減と温暖な気候が重要視されることが明らかになっています。

この点においてエジプトは条件を満たしているものの、東南アジア諸国ほど情報が豊富ではないため、検討対象になりにくいという現状があります。

人気が高まっている理由とその背景

エジプトがリタイア先として注目を集める理由は、主に3つの要素に集約されます。

第一に、年間を通じて温暖で乾燥した気候が挙げられます。エジプトの紅海沿岸地域では年間300日以上が晴天となっており、関節炎や呼吸器系の疾患を抱える高齢者にとって理想的な環境です(*2)。

第二に、生活費の安さが大きな魅力となっています。最新の調査によると、エジプトの生活費は日本と比較して68%安く、月額生活費はエジプトが384ドル(約57,600円)に対し、日本は1,183ドル(約177,450円)となっています(*3)。年金生活者にとって、この大幅な生活費削減は非常に魅力的です。

エジプト(ニューカイロ)と日本(東京)の生活費比較
💰 節約効果
レストラン: 51%安 ディナー: 47%安 ビール: 56%安 カフェ: 47%安 水: 79%安

注記:コースディナーは2名分(前菜・メイン・デザートの3コース)の料金
出典: World Invest「エジプト物価調査」

第三に、歴史的・文化的な豊かさも注目される要因の一つです。古代エジプト文明の遺跡群や博物館、さらには地中海と紅海という異なる魅力を持つ海岸線へのアクセスが可能で、退職後の充実した生活を送るための環境が整っています。

また、近年は高級リゾート地域での外国人向け住宅開発も進んでおり、より快適な生活基盤が構築されつつあります。

エジプト移住が注目される最新の傾向

2025年現在、エジプト移住への関心は新たな段階に入っています。

特に注目すべきは、リタイア専用コミュニティの開発が本格化していることです。紅海沿岸のサハル・ハシーシュなどの高級リゾート地域では、外国人リタイア者向けの住宅プロジェクトが相次いで立ち上がっており、医療施設やレクリエーション施設を完備した総合的な生活環境が整備されています。

経済面では、エジプトポンドの為替レートが外国人投資家にとって有利に働いています。平均的な生活費は月額412ドル(約61,800円)程度とされ、快適な気候環境も相まって、平均気温22度という過ごしやすい環境が年間を通じて維持されています(*4)。

日本企業のエジプト投資額推移(2020-2024年度)
📈 投資増加の分析
2020→2023年: 4.2倍増 最大成長: 2023年 累計投資: 128億円

注記:直接投資フロー(業種・地域別)による集計値。2024年度は暫定値。
出典: 外務省「海外在留邦人数調査統計」、JETRO「エジプト概況・基本統計」

また、デジタルノマドやリモートワーク可能なプレリタイア世代からの関心も高まっています。カイロやアレクサンドリアといった主要都市では、インターネット環境の整備が進んでおり、海外との通信環境も改善されています。

これにより、完全退職前の移住トライアルや、段階的な移住プランを検討する日本人も増加傾向にあります。

エジプト移住で気になる治安と安全対策

エジプトの治安状況と日本人が知っておきたい実情

エジプトの治安状況は、日本と比較すると注意が必要な水準にありますが、適切な対策を講じれば安全に生活できる環境です。

最新の犯罪統計によると、エジプトの犯罪指数は47.26で、日本の22.79と比較すると約2倍の数値となっています。一方、安全指数はエジプトが52.74、日本が77.21となっており、この差は主に軽犯罪や詐欺事件の発生頻度の違いを反映しています(*5)。

米国国務省は2025年7月にエジプトに対してレベル2の渡航勧告(注意喚起)を発出しており、テロリズム、犯罪、健康上の懸念事項について言及しています。しかし、同勧告では、エジプト政府の効果的な治安対策についても認めており、観光地域や主要都市では比較的安定した治安が維持されていることを示しています(*6)。

英国政府の渡航情報でも、観光地域における犯罪率は一般的に低いとされており、2025年9月の更新情報では地域別の詳細な安全推奨事項が提供されています(*7)。

特に、カイロ、アレクサンドリア、紅海沿岸のリゾート地域では、外国人居住者向けの治安対策が強化されており、日常生活における安全性は確保されています。

日本人が暮らす際に注意すべき地域や場面

日本人がエジプトで生活する際に特に注意が必要な地域として、北シナイ半島西部砂漠地域が挙げられています(*8)。これらの地域では高度の注意が必要とされており、一般的な居住や観光は推奨されていません。

一方、カイロ首都圏、アレクサンドリア、紅海沿岸のリゾート地域は比較的安全な居住地域として認識されています。

日常生活における注意事項として、観光地域における詐欺や客引きトラブルが最も頻繁に発生する問題です。

特に有名な観光地周辺では、過度に親切な現地住民による商品販売や案内サービスの強要が報告されています。また、タクシーやウーバーなどの交通手段利用時には、料金トラブルや遠回りによる過剰請求に注意が必要です。

金融面では、ATM利用時のスキミング被害や偽札の流通も報告されています。大きな商店や銀行以外での現金取引では、特に注意深い確認が必要です。

また、夜間の外出人通りの少ない路地での一人歩きは避けることが推奨されており、これは特に女性の居住者にとって重要な安全対策となっています。

日本人が安全に生活するための具体的な対策

エジプトで安全に生活するための基本対策として、まず居住地域の選択が重要です。

国際的な治安専門家の評価によると、2025年3月時点で外国人居住者にとって最も安全とされるのは、新行政首都、ニューカイロ、マアディ地区、ザマレク地区などの計画都市や高級住宅地域です。これらの地域では24時間警備体制が整っており、外国人コミュニティも形成されています。

日常的な安全対策では、現地の緊急連絡先の把握と通信手段の確保が不可欠です。エジプトの警察は122救急車は123消防署は180となっており、これらの番号は携帯電話に登録しておくことが推奨されます。また、日本大使館の緊急連絡先も必ず控えておき、定期的な在留届の更新も忘れずに行う必要があります。

観光業界の安全統計によると、2024年には1,170万人以上の観光客がエジプトを訪問し、重大な事件は大幅に減少しています(*9)。これは政府の治安対策強化の成果を示しており、適切な予防措置を講じている外国人居住者の安全性も向上していることを裏付けています。

保険加入、信頼できる現地ネットワークの構築、そして現地の法律や慣習の理解が、長期的な安全確保の鍵となります。

日本人リタイア生活に必要な物価と生活費の実態

エジプトの物価水準と生活費の目安

エジプトの生活費は、リタイア世代にとって非常に魅力的な水準にあります。

2025年9月の最新調査によると、100平方メートルの家具付きアパートの月額賃料は4,500エジプトポンド(約13,500円)(*10)となっており、これには基本的な生活家具や家電が含まれています。食費については、現地の市場で食材を購入する場合、月額2,000-3,000エジプトポンド(約6,000-9,000円)程度で十分な栄養バランスの取れた食事が可能です。

交通費は非常に安く設定されており、カイロ市内の地下鉄は片道7エジプトポンド(約21円)、タクシーの初乗りは25エジプトポンド(約75円)程度です。医療費については、私立病院での一般的な診察料が200-500エジプトポンド(約600-1,500円)、薬代も日本と比較して大幅に安くなっています。

エジプトの平均月給は14,317エジプトポンド(約42,951円)で、中央値は7,840-7,870エジプトポンド(約23,520-23,610円)となっています(*11)。これらの数値は、外国人リタイア者が現地の生活水準を上回る快適な生活を送ることが可能であることを示しています。

公共料金については、電気代が月額300-600エジプトポンド(約900-1,800円)、水道代が50-100エジプトポンド(約150-300円)程度が目安となります。

日本と比べた場合の生活費の違い

日本とエジプトの生活費格差は圧倒的で、総合的にエジプトの方が3.9倍安いという結果が出ています。

住居費に関しては、日本がエジプトより4.7倍高く、特に都市部での賃貸住宅費用の差は顕著です。交通費についても日本の方が4.9倍高く、エジプトでの移動コストの安さが際立っています(*12)。

具体的な都市間比較では、カイロと東京の生活費格差がより明確に示されています。カイロの生活費は東京より75%安く、月給の比較では、カイロの175ドル(約26,250円)に対し東京は2,599ドル(約389,850円)となっています(*13)。

この大幅な差により、日本での年金受給額でエジプトでは非常に余裕のある生活が可能になります。

食費については、レストランでの外食でも大きな差があります。エジプトでの中級レストランでの食事は1人あたり150-300エジプトポンド(約450-900円)程度で、これは日本での同等の食事の3分の1から4分の1の価格です。

日用品や衣料品についても同様の価格差があり、特に現地生産品や中東・アフリカ地域からの輸入品は日本より大幅に安価で購入できます。

生活費を抑えるための工夫と実例

エジプトでの生活費をさらに抑制するための実践的な方法として、まず住居選択の工夫が重要です。新開発地域よりも伝統的な住宅地域を選ぶことで、賃料を30-40%削減することが可能です。また、長期契約による割引交渉や、複数年契約による賃料固定化も効果的な手段となります。

食費については、現地の市場や卸売市場での直接購入により、さらなるコスト削減が実現できます。特に野菜や果物は産地直送の市場で購入することで、スーパーマーケットの半額程度で入手可能です。また、現地の食文化を取り入れることで、輸入食品への依存を減らし、月間食費を1,500エジプトポンド(約4,500円)程度まで抑制することも可能です。

近年のインフレ状況については注意が必要です。エジプトのインフレ率は2023年に30%に達しましたが(*14)、2025年6月には14.9%まで低下しており(*15)、物価上昇の圧力は緩和されつつあります。

エジプトポンドの為替変動も生活費に影響するため、円建ての資産を段階的にエジプトポンドに両替するタイミングの調整や、複数通貨での資産保有による為替リスクヘッジが推奨されます。

教育環境は安心できる?エジプト移住での実情

エジプトの教育制度と学校の特徴

エジプトの教育制度は多様性に富んでおり、国際的な教育基準を満たす選択肢が豊富に用意されています。

カイロだけで103校の国際学校が運営されており、イギリス式、アメリカ式、国際バカロレア(IB)プログラムなど、様々なカリキュラムから選択可能です(*16)。これらの学校では英語を主要な教授言語として使用し、多文化的な学習環境を提供しています。

国際学校の認証状況も良好で、多くの学校が国際的な教育認定機関からの承認を受けています。フランス式、ドイツ式の教育プログラムも提供されており、ヨーロッパの大学進学を考える家庭にとっても適切な選択肢があります。これらの学校では、現地のエジプト人学生と外国人学生が混在する環境で学習が行われ、国際的な視野を養うことができます。

教育の質については、多くの国際学校が高い学術水準を維持しており、卒業生は世界各国の有名大学に進学しています。施設面でも、最新の教育技術や設備を導入している学校が多く、図書館、科学実験室、スポーツ施設なども充実しています。

ただし、これらの高品質教育には相応の費用が必要で、年間授業料は学校により大きく異なります。

日本人家庭が選べる教育機関とその実態

日本語教育については、エジプトでの関心が急速に高まっています。

国際交流基金の報告によると、エジプトでは日本語学習への熱意が増大しており、大学レベルでの日本語プログラムも拡充されています(*17)。複数の大学で日本語学科が設置され、日本文化や経済についても学習できる環境が整っています。

特筆すべきは、エジプト・日本学校プロジェクトの急速な発展です。2025年9月現在、55校のエジプト・日本学校が運営されており、2027年までに100校への拡大が予定されています(*18)。これらの学校では、日本の教育手法と現地のカリキュラムを組み合わせたユニークな教育プログラムが提供されており、日本人家庭にとって魅力的な選択肢となっています。

国際協力機構(JICA)との連携による教育協力事業も活発で、2023年3月時点で20,000人の学生が日本式教育を受けています(*19)。これらのプログラムでは、日本の道徳教育、集団活動、清掃時間などの特色ある教育手法が導入されており、日本人の価値観に親しみやすい教育環境が構築されています。

子育て世代が感じやすい教育面での課題

言語習得の課題は、多くの日本人家庭が直面する主要な問題です。子供が現地のアラビア語と国際的な英語、さらに家庭での日本語という3言語環境に適応する必要があり、特に年少の子供にとっては学習負担が大きくなる場合があります。

また、日本の学習指導要領に基づいた教育を完全に再現することは困難で、帰国後の日本の学校制度への適応に不安を感じる保護者も多くいます。

費用面での課題も無視できません。質の高い国際学校の年間授業料は、一般的に15万-30万エジプトポンド(約45万-90万円)程度となっており、複数の子供がいる家庭では相当な教育費負担となります。さらに、課外活動、教材費、制服代などの追加費用も考慮する必要があります。

しかし、解決策も存在します。ガラーラ大学の日本語プログラムでは、広島大学との連携により、日本への留学機会も提供されています(*20)。

このような高等教育レベルでの日本との連携は今後さらに拡大する見込みで、長期的な教育プランニングにおいて有効な選択肢となっています。また、日本人コミュニティによる補習校の設立や、オンライン教育プラットフォームの活用により、日本語教育の継続も可能になっています。

エジプト移住で知っておきたい医療と生活インフラのポイント

エジプトの医療体制と日本人に利用しやすい施設

エジプトの医療制度は、2027年までに国民皆保険制度の実現を目指して急速な改革が進行中です(*21)。

現在は公立医療機関と私立医療機関が併存しており、外国人居住者の多くは私立医療機関を利用しています。私立病院では多言語対応の医療スタッフが配置されており、英語でのコミュニケーションが可能な施設が多数存在します(*22)。

主要都市部の私立病院では、国際的な医療基準を満たす設備と技術が提供されています。特にカイロとアレクサンドリアには、JCI(Joint Commission International)認定を受けた病院もあり、心臓外科、整形外科、眼科などの専門医療も高水準で受けることができます。救急医療体制も整備されており、24時間対応の緊急医療サービスが利用可能です。

医療費については、私立医療機関での診察料は一般的に日本より安く設定されています。一般診察で200-500エジプトポンド(約600-1,500円)、専門医診察で500-1,000エジプトポンド(約1,500-3,000円)程度が相場となっています。

薬代についても、多くの医薬品が日本より大幅に安価で購入でき、特にジェネリック医薬品の選択肢が豊富です。

水道・電気・交通など生活インフラの整備状況

エジプトの生活インフラは近年大幅な改善が見られています。

2024年度には交通セクターに321億エジプトポンド(約963億円)の投資が行われ、道路、鉄道、空港などの近代化が進んでいます(*23)。電力網についても安定供給のための設備更新が継続的に実施されており、主要都市部での停電は大幅に減少しています。

水道インフラについては、主要都市部では24時間の供給が基本となっていますが、地域により水質に差があります。多くの外国人居住者は浄水器の設置やボトルウォーターの利用を併用しています。下水処理システムも改善が進んでおり、新開発地域では最新の処理施設が導入されています。

交通インフラの発展は目覚ましく、カイロでは地下鉄網の拡張が継続中で、新行政首都への高速鉄道建設も進行しています。道路網についても、主要都市間を結ぶ高速道路の整備が完了し、都市部での交通渋滞緩和のための環状道路建設も進んでいます。空港インフラも強化されており、カイロ国際空港の拡張により国際便の利便性が向上しています。

医療やインフラ利用で日本人が注意すべき点

医療保険については、外国人専用の民間保険への加入が強く推奨されます。エジプトの公的医療保険は外国人居住者には適用されないため、私立医療機関での治療費をカバーする包括的な保険プランの選択が必要です。

緊急時の医療搬送サービスも保険プランに含めることが重要で、特に持病を持つ高齢者にとっては必須の保障となります(*24)。

地方部での医療アクセスについては慎重な検討が必要です。地方の医療施設では設備や医療スタッフの質に限界があり、重篤な疾患の場合はカイロやアレクサンドリアの専門医療機関への搬送が必要になることがあります。このため、居住地選択の際には最寄りの高度医療機関へのアクセス時間を考慮することが重要です。

インフラ利用については、停電や断水に備えた準備が推奨されます。非常用電源や水の備蓄、懐中電灯などの基本的な防災用品は常備しておく必要があります。

また、インターネット環境についても、複数のプロバイダーとの契約や、モバイルデータ通信の併用により、通信の安定性を確保することが重要です。特に医療機関との連絡や緊急時の通信手段として、信頼性の高い通信環境の確保は不可欠です。

エジプトに移住を考える日本人が抱える不安とその解決策

日本人が抱えやすい不安とは

エジプト移住を検討する日本人が最も頻繁に抱く不安は、文化的適応に関する問題です。

国際的な研究によると、日本人とエジプト人の間には仕事と家庭のバランスに対する考え方に大きな違いがあることが明らかになっています(*25)。特に時間の概念、社会的な約束の重要度、宗教的慣習への理解などについて、多くの日本人が適応困難を感じる傾向があります。

言語の壁も重大な不安要因となっています。アラビア語は日本人にとって習得困難な言語の一つとされており、日常的な買い物、医療機関での受診、行政手続きなどで意思疎通に苦労することが予想されます。

また、英語が通じる場面でも、現地特有の表現や慣用句により、細かなニュアンスの理解が困難な場合があります。

経済的な不安については、為替変動リスク現地でのインフレ進行が主な懸念事項です。日本からの年金や貯蓄に依存する場合、エジプトポンドと円の為替レートの変動により生活水準が大きく左右される可能性があります。

また、医療費や居住費の予期しない上昇により、計画していた生活予算を超過するリスクもあります。

不安を和らげるためにできる対策

文化的適応の不安を軽減するための最も効果的な方法は、現地の日本人コミュニティとの関係構築です。カイロ日本人クラブでは、文化的イベントやサポートサービスを定期的に開催しており、コミュニティ情報誌「パピルス」を通じて生活に必要な情報を日本語で入手できます(*26)。

このような既存のコミュニティを活用することで、孤立感を回避し、現地での生活ノウハウを効率的に習得できます。

技術協力の分野では、AOTSエジプト同窓会が重要な役割を果たしています(*27)。1994年設立で4,000名以上のメンバーを擁するこの組織は、日本・エジプト間のビジネスと文化交流を促進しており、日本人の現地適応を支援する豊富な経験とネットワークを有しています。

言語の課題については、段階的なアプローチが有効です。まず英語でのコミュニケーション能力を向上させつつ、基本的なアラビア語の日常会話を習得することで、多くの生活場面に対応できるようになります。現地の語学学校やオンライン学習プラットフォームを活用し、実践的な言語スキルの習得を目指すことが重要です。

移住前に準備しておくと安心なこと

移住前の準備として、まず両国間の外交関係と協力枠組みについて理解を深めることが重要です。2023年4月には日本・エジプト戦略的パートナーシップが格上げされ、経済協力と文化交流の枠組みが強化されています(*28)。

これにより、日本人の現地での活動や生活に対する支援体制も充実しつつあります。

2025年9月には12の投資・貿易協定が新たに締結され、教育、再生可能エネルギー、技術協力などの分野での連携も拡大しています(*29)。これらの協力関係は、日本人の長期滞在や事業活動にとって有利な環境を創出しており、移住計画の策定時には最新の協力状況を確認することが推奨されます。

実践的な準備としては、現地での銀行口座開設手続きの理解、国際送金システムの確認、現地の法律相談サービスの把握などが重要です。また、日本の年金受給手続きの海外居住者向け変更、住民票や各種保険の取り扱い変更なども事前に確認しておく必要があります。

緊急時の連絡先リスト作成重要書類のデジタル化と複数箇所での保管現地の医療機関情報の事前収集なども、安心できる移住実現のための重要な準備項目となります。

FAQ|日本人のリタイア移住でよくある質問

エジプトの治安は本当に大丈夫?

エジプトの治安は観光地や主要都市では比較的安定しており、適切な注意を払えば安全に生活できます。

犯罪指数は47.26で日本の22.79より高めですが、観光地域では犯罪率が低く抑えられています。2024年には1,170万人以上の観光客が訪問し、重大事件は大幅に減少しており、政府の治安対策強化の効果が現れています。

生活費は日本と比べてどのくらい安い?

エジプトの生活費は日本より68%安く、月額生活費は384ドル(約57,600円)程度です。

住居費は日本の4分の1程度で、100平方メートルの家具付きアパートが月額4,500エジプトポンド(約13,500円)で借りられます。食費、交通費、医療費すべてが大幅に安く、年金生活者にとって非常に魅力的な生活費水準となっています。

日本語が通じる教育環境はある?

エジプトでは日本語教育への関心が高まっており、55校のエジプト・日本学校が運営中で2027年までに100校に拡大予定です。

JICAとの連携により20,000人の学生が日本式教育を受けており、ガラーラ大学では広島大学との連携による日本語プログラムも提供されています。また、カイロ日本人クラブなどのコミュニティが日本語での生活サポートを行っています。

まとめ|日本人のリタイア先としてエジプト移住の要点

エジプトは日本人のリタイア先として、コスト面と気候面で大きな魅力を持つ新興の選択肢です。

生活費は日本より68%安く、年間300日以上の晴天という理想的な気候環境が整っています。在住日本人は804人とまだ少数ですが、日本・エジプト戦略的パートナーシップの強化により、生活基盤となる制度やコミュニティも充実しつつあります。

治安面では注意が必要ですが、観光地域の犯罪率は低く、適切な対策により安全な生活が実現できる環境です。

出典元

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オクマン編集部のアバター オクマン編集部 中東担当チーム

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