【最新版】ロンドン不動産賃貸市場を徹底解説|日本人が押さえるべき最新動向

ロンドンの不動産賃貸市場は2025年に入り、力強い成長を続けています。2025年の英国不動産市場は約334億2,000万米ドル(約5兆円)の規模に達しており(*1)、2030年には387億5,000万米ドル(約6兆円)へ拡大すると予測されています(*2)。
政府統計によるとロンドンにおける直近の賃料は前年同月比+10%以上となっており(*3)、インフレ率を大幅に上回るペースで上昇している状況です。本記事では、最新の市場データと投資指標を基に、ロンドン賃貸市場の現状と投資戦略を包括的に分析します。
ロンドン賃貸市場の規模・特徴を図解で把握
年間取引額と賃貸在庫数で見る市場規模
注釈:
- 英国住宅用不動産市場規模は2025-2030年で年平均成長率5.75%の堅調な拡大を予測
- ロンドン人口は2026年9.54百万人から2031年9.84百万人へ継続的増加(点線で補助表示)
- 出典:Mordor Intelligence “UK Real Estate Market Analysis”、London.gov.uk人口統計データ
- 市場規模とCAGRの組み合わせにより、投資機会の「現在の規模」と「将来の成長性」を同時評価可能
ロンドンの賃貸市場は英国最大規模を誇り、2025年現在の総人口は984万人に達しています(*4)。年間人口増加率は0.95%と安定した成長を維持し(*5)、継続的な住宅需要を創出しています。
市場全体では、利用可能な賃貸物件数が前年比18%増加し(*6)、過去10年で最大の供給増を記録しました。中央ロンドンのオフィス市場では、年間取引面積が320万平方フィートに達し(*7)、214件の取引が成立しています。
金融・保険セクターが全体の34%を占め、テック・メディア業界が16%と続いており(*8)、これらの業界従事者が賃貸需要の中核を形成しています。2023年10月の時点で、賃貸が可能な物件の数は、コロナ禍前と比べて3割以上減少しており(*9)、手ごろな部屋を見つけることは、より困難な状況になっています。
賃貸需要を支える人口・雇用・学生動向
ロンドンの人口・雇用・学生動向分析
総人口
失業率
学生数
🏠 賃貸需要への影響分析
データ出典:
- 人口データ:London.gov.uk GLA人口統計(2026年推計)
- 失業率:Trust for London労働市場分析(2024年実績)
- 学生数:Wikipedia英国高等教育統計、各大学公式データ
- 賃貸需要分析:上記3要素の複合的影響を投資家向けに要約
ロンドンの学生人口は約40万人に達して(*10)、40以上の高等教育機関が集積する世界有数の学術都市としての地位を確立しています。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)やキングス・カレッジ・ロンドンなど名門大学が200以上の国から学生を受け入れており(*11)、安定した賃貸需要を創出しています。
雇用面では、内ロンドンの失業率が5.8%、外ロンドンが4.5%と(*12)、コロナ後の経済回復期における労働市場の堅調さを示しています。若年層(16-24歳)の雇用者数は375万人に増加し、雇用率50.7%を維持しています(*13)。
特に20代女性の声として「1人暮らしをしたいけど、あまりにロンドンの家賃が高いので、今も両親と住んでいる。私の友人たちも同じ状況だよ」という現実があり、住宅需要の潜在的な高さを示しています。
日本人投資家にとって魅力的な理由を整理
日本人投資家向けロンドン投資メリット
円高メリット活用
透明な税制環境
大手企業の先行事例
競争的融資条件
🎯 投資判断のポイント
データ出典:
- 為替レート:ECODB.net ポンド/円推移データ(2014-2025年平均)
- 日系投資事例:野村不動産プレスリリース(2025年4月22日発表)
- 税制情報:経済産業省「英国税制概要」、英国秋季予算2024
- 投資環境分析:JETRO「英国拠点設立ガイドブック」を参考に作成
日本の大手不動産会社によるロンドン投資が活発化しており、野村不動産がリーガル&ジェネラル(L&G社)と組んで英国での賃貸住宅(BTR)事業に参入する(*14)など、機関投資家レベルでの投資拡大が顕著です。野村不動産は第1号案件として、ロンドン南部ハーン・ヒルエリアにて200戸超規模を開発する計画を発表しており、英国の社会課題である住宅不足解消に向け、ロンドン中心部への通勤圏に継続的に賃貸住宅を供給予定です。
日本企業は特に、ロンドンの安定した法制度と透明な取引環境を評価しています。為替面では、ポンド/円レートの変動により、日本人投資家にとって割安感のある投資機会が生まれています。
また、英国の金融市場における競争的な融資条件により、レバレッジを活用した投資戦略の実行が可能となっています。
2025年最新動向|ロンドン賃貸市場の変化
家賃上昇率とインフレ差をグラフでチェック
📊 分析ポイント
- 2023年のピーク: ロンドン賃料(9.7%)がUK CPI(10.1%)とほぼ同水準に到達
- 2024-2025年の乖離拡大: インフレ沈静化の中、賃料上昇は加速継続
- 投資機会: 賃料がインフレを大幅に上回る構造的な需給逼迫を示唆
データ出典:
- ロンドン賃料上昇率:ONS (Office for National Statistics) IPHRP London データ
- UK CPI上昇率:ONS Consumer Price Index 年間変化率
- 分析期間:2021年-2025年(2025年は推計値)
- 賃料データはロンドン全域の平均値、CPIは英国全体の総合指数を使用
2025年1月時点で、ロンドンの年間家賃上昇率は11.0%に達し(*16)、英国全体の7.8%を大幅に上回っています(*17)。イギリスの不動産会社によりますと、2024年7月から9月の賃貸住宅の家賃の平均は月2,627ポンド(約51万円)となり(*18)、2022年の同じ時期より12%値上がりしたとしています。
ロンドン内でも地域差が顕著で、ブロムリーやクロイドンなどの外縁部では二桁成長を達成している一方、中心部では供給制約により成長が抑制されています。この傾向は、テナントの価格感応度上昇と住宅購入者の賃貸市場への流入が影響しています。
2021年以降、家賃は急上昇しており、特にコロナ禍が収束したことで、住宅の”都心回帰”ともいえる動きが拍車をかけました。
再開発エリアや新路線開通が与える影響
エリザベス線の開通により、アビーウッドなどの終点駅周辺では家賃と物件価格が大幅に上昇しました(*19)。同様に、ストラトフォード周辺では2012年ロンドンオリンピック後の再開発効果が継続し、5.8%の利回りを維持しています。
カナリーワーフやナインエルムスでは大規模BTRプロジェクトが進行中で、特にナインエルムスの旧ロイヤルメール跡地では894戸の大型開発が進行しています。これらの開発により、従来のオフィス街が居住エリアとしても機能する複合都市への転換が加速しています。
ストラトフォードは、イーストロンドンの中枢的地位を持つものとされ、ストラトフォードとリーバレーの大規模再生機会は、East London and the Lee Valley ERDF Objective 2 Area とテムズゲートの双方のエリアに含まれています。
市政の新規規制と投資家への影響
2025年後半に施行予定の借家人権利法(Renters’ Rights Bill)により、セクション21条による無過失退去通知が廃止され、家賃上昇は年1回に制限されます(*20)。これにより家主の柔軟性は制約される一方、安定した長期テナンシーによる空室リスク軽減効果が期待されます。
2019年テナント料金法(Tenant Fees Act 2019)により、不動産業者が賃貸契約で入居者に請求できる手数料は50ポンド(約1万円)に制限されることになりました。海外投資家に対しては、非居住者には購入価格の2%の追加課税が継続されており、投資コスト計算における重要な要素となっています。
また、商用不動産に対しては、2023年4月からFランク以下の建築物は全面的に賃貸することが禁止されており、現在、ロンドン中心部におけるオフィスストックのうち、いまだ10%弱(物件数ベース)がFランク以下の格付となっています。
エリア別賃料相場|ロンドン不動産の価格帯を一覧で確認
ゾーン1〜6別の平均家賃と想定利回り
ゾーン1の家賃相場は、スタジオで月額£1,720-2,500(約33万-48万円)、1ベッドルームで£2,400-3,200(約46万-62万円)、2ベッドルームで£3,000-4,500(約58万-87万円)となっています。中心部では利回りが3-4%台と低めですが、キャピタルゲインの期待値が高く、プライム物件への投資魅力が維持されています。
外縁部では、イーストハム(E6)が6.0%の最高利回りを記録し、月額£2,055(約40万円)の家賃で£410,000(約7,900万円)の平均物件価格となっています。テムズミード(SE28)やアビーウッド(SE2)も5.8-5.9%の高利回りを実現し、投資効率の観点から注目されています。
タワーハムレッツはロンドンで賃貸物件投資に最適な場所で、この地区は5.9%という素晴らしい賃貸利回りを誇り、サザーク、ニューハム、バーキング & ダゲナム、グリニッジがそれに続きます。
主要ポストコード別の家賃推移チャート
主要ポストコード別家賃推移と利回り比較
💡 投資判断のポイント
- 最高利回り: RM19パーフリート(7.3%)が投資効率でトップ
- バランス型: IG11バーキング(6.8%)は家賃水準と利回りのバランスが良好
- 成長期待: E6イーストハムは利回り6.0%ながら交通インフラ整備で将来性あり
データ出典:
- 家賃・価格・利回りデータ:Property Investments UK 2025年第1四半期レポート[1]
- グロス利回り = (年間家賃収入 ÷ 物件購入価格) × 100
- 対象:各ポストコード内の1-2ベッドルーム物件平均値
- データ更新:2025年3月時点の市場価格を反映
東ロンドンでは、パーフリート(RM19)とバーキング(IG11)が7%の最高利回りを記録し、再生事業と交通インフラ整備が投資魅力を高めています。ダゲナム地区(RM8-10)では6-6.5%の安定した利回りを維持し、ディストリクト線によるアクセス性が評価されています。
W1地区のメリルボーンでは、2ベッドルームの平均家賃は5,664ポンド(約109万円)、中央値は4,333ポンド(約84万円)となっています。メイフェアでは2ベッドルームの平均家賃は9,344ポンド(約180万円)、中央値は7,497ポンド(約145万円)と、さすがロンドンの中心地というだけあって高額な水準を示しています。
WC2地区では、WC1地区と比べて1ベッドルームで500ポンド(約10万円)、2ベッドルームで1,000ポンド(約19万円)ほど高くなっており、川沿いに近い地区の価格プレミアムが確認できます。
中心部と郊外で変わる住環境と投資妙味
プライムセントラルロンドンでは、メイフェア、ナイツブリッジ、ベルグレイビアといった伝統的高級住宅地が富裕層テナントを引き付けています。これらのエリアでは月額£7,000-15,000以上(約135万-290万円以上)の家賃設定が可能で、コンシェルジュサービスや最新設備が投資価値を支えています。
対照的に、郊外エリアでは家族向け住宅の需要が堅調で、特に3-4ベッドルームの戸建て住宅は空室期間が短く、安定した賃貸収入を確保できます。駐在員家族や長期滞在者のニーズに対応することで、持続可能な投資リターンが期待できます。
ロンドン平均住宅価格は依然として約50万ポンド(約9,650万円)と国内最高水準を維持しており、㎡単価にすると約270万円超という世界屈指の高さです。これは2010年代に海外資本の流入で価格が急騰した名残でもあり、ロンドンの不動産の持つ国際的な希少性を示しています。
物件タイプ別に見るロンドン賃貸需要と家賃傾向
スタジオ・1ベッドが高稼働率を維持する背景
スタジオアパートの需要は2025年に71%の驚異的な増加を記録し、全物件タイプの中で最高の成長率を達成しています。この背景には、ポストコロナの働き方変化により、平日用住居として小規模物件を求める需要が急増していることがあります。
1ベッドルームアパートも23%の需要増加を達成し、若手プロフェッショナルとカップルからの安定した需要を獲得しています。ショーディッチ、ソーホー、カムデンなどのトレンディなエリアでは、月額£2,400-3,200(約46万-62万円)の家賃設定が可能で、短期間での入居者確保が実現しています。
20代男性の声として「職場に近いところにアパートを探したいけど、手頃な物件に空きが出ても、内覧の応募者が数十人単位で集まり、あっという間に埋まってしまう」という状況があり、需要の高さを物語っています。
ファミリー向け戸建ては空室リスクが低い理由
ファミリー向け戸建て住宅は需要増加率こそ5%と控えめですが、空室リスクの低さと長期契約の安定性で投資家から評価されています。駐在員家族や現地の富裕層世帯が主要テナントとなり、月額£5,000-9,000(約96万-174万円)の家賃水準で2-3年の長期契約が一般的です。
ゾーン2-3の閑静な住宅街では、庭付き戸建て住宅に対する根強い需要があり、特に子育て世代からの人気が継続しています。学校区の評判や公園へのアクセス性が家賃水準を左右する重要な要素となっています。
最もパフォーマンスが良かったのはテラスハウスで、これらの物件は5.37%という最高の賃貸利回りを実現しており、平均物件価格は579,743ポンド(約1億1,200万円)で、月額家賃は2,594ポンド(約50万円)に達します。
高級プライム物件が富裕層に選ばれる要因
高級プライム物件セグメントは10%の需要増加を記録し、富裕層テナントからの安定した需要を獲得しています。メイフェア、ケンジントン、ベルグレイビアでは、文化施設、高級ショッピング、グルメレストランへの近接性が投資価値を支えています。
これらの物件では、最新のフィットネス設備、プライベート屋外スペース、24時間コンシェルジュサービスが標準装備となっており、月額£7,000以上(約135万円以上)の高額家賃設定を可能にしています。非居住者税制変更の影響にも関わらず、ロンドンの国際都市としての魅力が富裕層の投資意欲を維持しています。
ロンドンは不動産市場の需給バランスが良く、低い空室率と高い利回りを誇り、また、超富裕層の移住先としても注目されています。バイテックスは、ロンドンの安定した経済と不動産市場に大きな可能性を見出し、強固な金融基盤と最先端技術への投資が進むこの都市で、安全な投資環境を提供しています。
ロンドン賃貸市場を支える入居者層とニーズ分析
学生・ヤングプロ向け市場規模と成長性
ロンドンの学生市場は約40万人の安定した需要基盤を有し、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)、キングス・カレッジ・ロンドン、インペリアル・カレッジなどの名門校が200以上の国から学生を受け入れています。この多様性が年間を通じた安定した賃貸需要を創出し、特にスタジオと1ベッドルーム物件への集中的需要となって現れています。
ヤングプロフェッショナル層では、金融・保険業界従事者が賃貸需要の34%を占め、テック・メディア業界が16%と続いています。これらの高所得層は、通勤利便性と生活環境の質を重視し、ゾーン1-2の物件に対して月額£2,500-4,000(約48万-77万円)の家賃支払い能力を有しています。
シェアハウスの場合、600ポンドから750ポンド(約12万-14万円)で、お部屋探しができる水準となっており、若年層にとって現実的な選択肢となっています。
駐在員・デジタルノマドが求める物件条件
駐在員層は家族構成に応じて2-4ベッドルームの物件を選好し、学校区の質と交通アクセスを重視します。特に日系企業駐在員の場合、シティやカナリーワーフへの通勤利便性と、日本人コミュニティへのアクセス性が立地選択の主要因となっています。
デジタルノマド層の増加により、高速インターネット環境、コワーキングスペース、ジム設備を備えた新築BTR物件への需要が拡大しています。これらのテナントは柔軟な契約条件を求める傾向があり、6ヶ月から1年の中期契約を好む傾向が見られます。
イギリスには、家具付き(Fully furnished)の賃貸物件が多く存在し、ベッドやソファ、ダイニングテーブルに加え、冷蔵庫や洗濯機、薄型テレビなどが最初から備え付けられていることもあります。単身赴任や短期滞在の場合は、こうしたフラットを借りることで初期費用を抑えられます。
家族世帯・長期滞在者のニーズと賃料傾向
家族世帯は住環境の安定性を最優先し、3年以上の長期契約を締結する傾向があります。ロンドン・リビング・レント制度では、2ベッドルーム物件の平均月額家賃が£1,350(約26万円)に設定され、市場家賃の約64%の水準となっています。
長期滞在者は地域コミュニティとの結びつきを重視し、近隣の商業施設、医療機関、教育機関へのアクセス性を重要な選択基準としています。これらのテナントは家賃の安定性を求める一方、物件の維持管理状況に対する要求水準が高く、継続的な投資が必要となります。
契約の際はデポジットも必要になり、デポジットは大体一か月分を支払うことが多く、こちらは退去の際、部屋に破損がない場合、返金してもらえます。家賃にその他光熱費が含まれているか含まれていないか確認する必要があり、稀に、セントラルヒーティングなどの暖房器具や洗濯機など別途支払いが必要なことがあります。
ロンドン賃貸市場の供給状況と空室率の推移
新築供給戸数と区域別分布
2025年第1四半期において、新規物件供給数は前年同期比11%増加し、18%の在庫増加を記録しました。これは過去10年で最大の供給増加となり、供給制約の段階的解消を示しています。地域別では、ロンドン外縁部での新築供給が中心部を上回り、アフォーダブル住宅の供給拡大が進んでいます。
BTR(Build-to-Rent)セクターでは、2024年に18,000戸が完成し、イングランド・ウェールズ全体の新築完成戸数の8%を占める規模に成長しました。2018年の0.6%から着実に拡大しており、機関投資家による組織的な住宅供給が市場の安定化に寄与しています。
Build to Rentの英国全体での市場シェアは、2018年の0.6%から2023年には1.8%まで拡大し、ロンドンでは同期間に1.8%から4.2%へと大幅に増加しています。
過去10年の空室率推移と季節変動
ロンドンの空室率は過去3年間の慢性的な供給不足から段階的に改善しており、2025年第1四半期には不動産エージェント1社あたりの在庫物件数が13戸まで回復しました。これはパンデミック前の平均を22%下回る水準ですが、2023年の最低水準10戸からは明確な改善を示しています。
季節変動では、3月の新規物件供給が前年同月比11%増加し、従来の春季需要期における供給制約が緩和されています。一方、テナント需要は前年比7%減少しており、住宅購入市場の活性化が賃貸需要の一部を吸収している影響が見られます。
根強いインフレが続くイギリスでは金利が上昇しており、その結果、銀行から資金を借りている賃貸物件のオーナーが返済に困り、物件を手放すケースが相次いでいます。また、コロナ禍が収束したことで、住宅の”都心回帰”ともいえる動きが拍車をかけました。
今後の開発計画が賃料に与える影響
Build-to-Rentパイプラインでは、建設中が56,500戸、計画段階が126,000戸と堅調な供給予定が確保されています。特にロンドンとグレーター・マンチェスター以外の地域が建設中物件の60%近くを占め、供給の地理的多様化が進んでいます。
2025年には記録的な60億ポンド(約1兆1,600億円)の投資が見込まれており、この資金流入により中長期的な供給拡大が期待されます。ただし、建築安全基準の厳格化により一部プロジェクトで遅延が発生しており、短期的な供給制約要因となっています。
政府は今後5年間で160万戸の新規供給という、前回総選挙時の水準を超える野心的な目標を掲げており、供給増に向け、ブラウンフィールドにおける開発を重点的に行う方針で、開発手続きの簡素化も実施する予定です。インナーロンドンなどの大都市市街地では、高層建築物を伴う再開発事業を進めることで人口密度を高めていく方針も記されています。
ロンドン賃貸市場の投資指標|利回り・コスト早見表
エリア別グロス・ネット利回り平均値
📊 エリア別利回り比較表
📈 利回り分析サマリー
データ出典:
- 利回りデータ:Blue Square Capital “London Property Investment Guide 2025”
- グロス利回り = (年間家賃収入 ÷ 物件購入価格) × 100
- 色分け基準:6.0%以上(赤)、4.0-5.9%(オレンジ・緑)、3.9%以下(青・紫)
- 投資魅力度は利回り水準とエリア特性を総合評価
ロンドン全体の平均利回りは4.93%と英国内では最低水準ですが、エリア間格差が顕著です。高利回りエリアでは、イーストハム(E6)が6.0%、テムズミード(SE28)が5.9%、ストラトフォード(E15)が5.8%を実現しています。
プライムセントラルロンドンでは利回りが3-4%台となる一方、キャピタルゲイン期待値が高く設定されています。ナイツブリッジ・ベルグレイビア地区では、2014年のピーク比で名目価格が20%以上下落しており、インフレ調整後では40%以上の割安感が生じています。
テラスハウスが5.37%の最高利回りを実現し、フラットが5.08%、半戸建て住宅が4.71%、戸建住宅が3.11%と続いています。全国的に見ると、テラスハウスが5.80%の利回りでトップで、それに続いてアパートが5.58%となっています。
家賃収入に対する維持費・修繕費比率
ロンドンの年間物件維持費は平均£5,379(約104万円)と英国内最高水準で、家賃収入の24%を占める計算となります。これは全国平均の21.2%を上回る水準ですが、高い家賃設定により絶対リターンは確保されています。
維持費の内訳では、材料費と技術者費用の上昇が4.7%の年間増加率を記録しており、インフレ圧力が投資収益に影響を与えています。効率的な物件管理とメンテナンス戦略により、この比率を20%以下に抑制することが投資成功の重要な要素となっています。
イギリスでは不動産エージェントを通して契約する方法と、直接大家と契約を交わす方法があり、エージェントを利用すると、契約書の作成やトラブル対応をエージェントが代行してくれるため安心ですが、手数料などの追加費用が発生する可能性があります。大家と直接交渉する場合は手数料がかからないことも多いですが、英語でのコミュニケーションが難しいと感じる人はエージェントを間に入れたほうがスムーズです。
為替・税コストを加味した実質リターンモデル
非居住者投資家は購入価格の2%の追加印紙税負担があり、これに通常の印紙税率が加算されます。£500,000(約9,650万円)の物件購入では、印紙税総額が約£35,000(約675万円、7%)となり、初期投資コストを押し上げています。
為替リスクでは、ポンド/円レートの変動が投資リターンに直接影響し、2014年のピーク比で約20%のポンド安により日本人投資家にとって名目40%の割安感が生じています。キャピタルゲイン税は年間£325,000超の部分に40%が課税されるため、出口戦略における税効率性の検討が重要です。
2025年に英国で家を購入するのに適した時期として、住宅ローン金利は徐々に低下しており、4%程度に達すると予想されており、これにより、購入者の借入コストが下がる可能性があります。過去のデータによると、不動産市場は不確実な時期であっても、一貫して成長してきました。
Build-to-Rentとは?ロンドン新築一括賃貸が拡大
ロンドン発BTRモデルとは?一棟丸ごと賃貸運営の仕組みを図解
🏗️ BTRモデルの仕組みと従来賃貸との比較
📊 BTR市場規模データ(2023年Q4時点)
🎯 BTR標準アメニティ例
データ出典:
- BTR市場データ:BPF (British Property Federation) “Build to Rent Sector Update Q4 2023”
- アメニティ情報:Savills “BTR Development Guide 2024” およびBPF共同レポート
- 比較分析:従来Buy-to-Let vs BTRの運営モデル差異を投資家視点で整理
- ロンドンデータは大ロンドン市域(GLA管轄区域)内の集計値
Build-to-Rent(BTR)は、売却ではなく賃貸運営を前提として設計・建設される住宅開発モデルです。英国では現在13万戸以上が運営され、私的賃貸市場全体の約2%を占める規模に成長しています。一般的な住宅購入・賃貸とは異なり、開発段階から機関投資家が関与し、長期的な賃貸事業として運営されます。
BTR物件は通常、コンシェルジュサービス、フィットネス設備、共用ラウンジ、屋外テラスなどの充実したアメニティを標準装備し、従来の賃貸住宅より高い居住品質を提供します。テナントは柔軟な契約期間と高品質な管理サービスを享受できる一方、家主は安定した長期収益とプロフェッショナルな運営体制を確保できます。
2018年には、Build to Rent sector comprised a modest 0.6% of the UK’s 5.5 million privately rented homes, with completions totaling 31,409でしたが、2023年には100,372 units, a 69% increase since 2013まで成長しています。
新築BTRが急拡大する3つの背景|住宅不足・政策支援・安定利回り
第一に、英国の深刻な住宅不足がBTR拡大の根本的要因となっています。政府は年間30万戸の住宅供給目標を掲げており、BTRは2024年の新築完成戸数の8%を占める重要な供給源として位置づけられています。
第二に、政策面では労働党政権が住宅供給拡大を重要政策として推進し、BTR事業者に対する計画許可の円滑化と金融支援が実施されています。特に地方自治体レベルでの規制緩和により、開発期間の短縮と事業リスクの軽減が実現しています。
第三に、投資面では99%の地方自治体で過去3年間の家賃上昇率が住宅価格上昇率を上回り、賃貸投資の魅力が向上しています。機関投資家にとって、BTRは株式や債券に代わる安定した代替投資として評価されており、2025年には記録的な60億ポンド(約1兆1,600億円)の投資が見込まれています。
英国、特にロンドンでは継続的な人口流入に対して、複雑な開発許可制度等を背景に住宅開発が進まず、慢性的な供給不足が続いています。
最新BTRプロジェクト実例|Nine ElmsやCanary Wharfで見る家賃と需要
ナインエルムスでは、旧ロイヤルメール跡地に894戸の大規模BTRプロジェクトが進行中で、64万1千平方フィートの住宅スペースとテナント向けアメニティ2万5千平方フィート、商業スペース2万5千平方フィートを提供します。ヘンダーソンパークとグレイスターによる開発で、2024年完全完成予定となっています。
カナリーワーフでは、既に1,000戸のBTR住宅が運営中で、さらに2,000戸がパイプラインに控えています。ウッドワーフのファミリー向け物件からパークプレイスの55階建て高層物件まで多様な選択肢を提供し、週末の地元ウェイトローズでの買い物客数が平日を上回るなど、住宅地としての機能が確立されています。
野村不動産の第1号案件として、ロンドン南部ハーン・ヒルエリアにて200戸超規模を開発する計画が発表されており、L&G社は現地での賃貸住宅開発において豊富な経験を有しています。
個人投資家が参加する2つの方法と注意点|REIT投資・共同開発スキーム
個人投資家のBTR参加方法として、第一にREIT(不動産投資信託)を通じた間接投資があります。英国REITの多くがBTRポートフォリオを組み入れており、最低投資額の制約なく市場参加が可能です。分散投資効果とプロフェッショナル管理のメリットがある一方、個別物件選択権限は制限されます。
第二に、共同開発スキームでは複数投資家がコンソーシアムを形成し、特定BTRプロジェクトに直接投資します。最低投資額は通常数百万ポンド以上となりますが、開発利益とキャピタルゲインの双方を享受できる可能性があります。ただし、建設リスク、市場リスク、流動性リスクが高く、十分な資金力と専門知識が必要です。
バイテックスは、不動産売買のみならず、ロンドンで事業を展開しようとする日本企業や個人に対して、事業計画の立案から予算策定まで幅広い支援を提供しており、このホリスティックなアプローチにより、多国籍企業間の協力を促進し、ロンドンのビジネス環境をよりアクセスしやすくしています。
FAQ|ロンドン不動産賃貸市場でよくある疑問を解決
Q. 現地に行かずオンライン内覧する方法は?
ロンドンの主要不動産会社は、バーチャル内覧システムを標準装備しており、360度カメラによる詳細な室内確認が可能です。ライトムーブ、ゾープラなどの大手ポータルサイトでは、高解像度写真、フロアプラン、周辺環境マップを提供し、物件の詳細情報を日本からでも確認できます。
ビデオ通話による実時間内覧サービスも普及しており、現地エージェントが物件を案内しながら質疑応答に対応します。契約前の最終確認として、信頼できる現地パートナーまたは第三者機関による物件検査代行サービスの活用も推奨されています。
バイテックスは、日本の厳格なガバナンス構造を導入し、4,000億円以上の取引経験を活かして、安全かつ効率的な投資手法を提供しており、今後、バイテックスは日本の不動産業者とのパートナーシップを強化し、さらなる事業拡大を目指しています。
Q. 賃貸契約期間は6ヶ月と12ヶ月どちらが主流?
ロンドンでは12ヶ月契約が標準的で、特に家族世帯や長期滞在者は2-3年の複数年契約を選択する傾向があります。2025年後半施行予定の借家人権利法により、定期契約から定期的賃貸借契約への移行が進み、テナントは2ヶ月前通知でいつでも退去可能となります。
6ヶ月契約は学生や短期駐在員に限定される傾向があり、家主側では空室リスクと再募集コストの観点から12ヶ月以上を好む傾向が強まっています。投資効率の観点では、長期契約による安定収益の確保が重要な成功要因となっています。
2019年テナント料金法(Tenant Fees Act 2019)は、家主が賃借人に請求できる家賃には干渉せず、賃貸仲介業者を対象とし、不動産業者が適正価格を超える料金を請求しているとの懸念に対応して制定されました。これにより、不動産業者が賃貸契約で入居者に請求できる手数料は50ポンド(約1万円)に制限されています。
- *1 Mordor Intelligence:英国住宅用不動産市場規模 2025 年推計(2024 年)
- *2 Mordor Intelligence:英国住宅用不動産市場規模 2030 年予測(2024 年)
- *3 英国国家統計局(ONS):ロンドン賃料指数前年同月比(2025 年 1 月)
- *4 ロンドン市データストア:人口推計 2025 年
- *5 ロンドン市データストア:年間人口増加率 2025 年
- *6 Savills:ロンドン賃貸供給動向レポート(2024 年 Q4)
- *7 Savills:中央ロンドンオフィス市場取引面積(2025 年 Q1)
- *8 JLL:業種別取引シェア 2024 年
- *9 Rightmove:賃貸在庫前年比減少率(2023 年 10 月)
- *10 HESA:ロンドン在学学生数 2024/25 年度
- *11 HESA:外国籍学生数・国数(2024/25 年度)
- *12 ONS:ロンドン失業率(2024 年)
- *13 ONS:英国若年層雇用統計(2024 年)
- *14 JETRO ロンドン事務所:野村不動産 BTR 参入(2025 年)
- *15 イングランド銀行:ポンド/円年平均レート推移(2014–2025)
- *16 ONS:ロンドン賃料指数年率 11.0%(2025 年 1 月)
- *17 ONS:英国全体家賃指数 7.8%(2025 年 1 月)
- *18 Hamptons:ロンドン平均家賃 2,627 ポンド(2024 年 Q3)
- *19 Transport for London:エリザベス線開通効果(2022–2024)
- *20 英国議会:Renters’ Rights Bill 2025(審議情報)