【最新版】ロンドンのビジネス環境を徹底解説|伝統と環境改革が共存する有望市場の最新動向

ロンドンは2025年現在、伝統的な金融ハブとしての地位を維持しながら、環境改革とイノベーションの最前線に立つ世界有数のビジネス都市として進化を続けています。Brexit後の新たな貿易体制の確立、野心的な環境政策の推進、そして新興産業の急成長により、ロンドンは従来の強みを活かしつつ、持続可能な成長モデルを構築している状況です。

本記事では、最新の統計データと市場動向を基に、ロンドンのビジネス環境の現状と将来性を包括的に分析し、投資や事業展開を検討する企業にとって有益な情報を提供します

目次

2025年版 ロンドンのビジネス環境をまるごと解説【図解あり】

GDP・人口・主要産業を数字で把握

ロンドンは約886万人(*1)の多様な人々が暮らす、歴史と現代が融合する国際的な都市として、ヨーロッパ最大級の経済都市の地位を確立しています。面積は約1,500㎢(*2)と東京都より約3割小さいながらも、世界有数の学術機関が集まり、イギリス政府のスタートアップ支援施策も相まって、優れた人材がビジネスを始めやすい環境が整備されています。

データ概要:

  • ロンドンGDP:5,650億ポンド(約104.5兆円、2023年)- ONS Regional GDP 1998-2023
  • 英国全体GDP:2.7兆ポンド(約499.5兆円、2023年)- ONS GDP速報 2025/5
  • ロンドン人口:887万人(2022年)- ジェトロ「概況・基本統計」
  • 年齢構成:0-14歳(20%)、15-64歳(67%)、65歳以上(13%)- ONS Mid-2024 Estimates

分析ポイント:ロンドンは英国全体GDPの約21%を占める経済中心地であり、生産年齢人口(15-64歳)が67%と高い割合を示している。

ロンドンのスタートアップエコシステムは、Startup Genomeが発表するスタートアップエコシステムの総合評価ランキングで、長年NYと並んで世界第2位(*3)の座を維持しており、ヨーロッパ最大のスタートアップエコシステムとして知られています。この成功を支える要因には、人口の約4割(*4)を移民が占める国際色豊かな都市であり、ケンブリッジやオックスフォードといった世界トップレベルの学術拠点にも近接していることが挙げられます。

主要産業では、ロンドンに本拠を構えるユニコーン企業が2024年12月時点で44社(*5)にのぼり、そのうち20社はRevolutやWiseに代表されるフィンテック分野(*6)のスタートアップであり、世界三大金融センターとしてのロンドンの強みを象徴しています。また、120社以上のバイオ医療企業が集積しており(*7)、医療分野の豊富な人材層を背景にライフサイエンス関連スタートアップも成長を遂げています。

物価・人件費・オフィス賃料などコスト比較

ロンドンのビジネスコストは、その経済力と比例して高水準にありますが、地域によって大きな差があることが特徴です。世界に誇る金融センターとして強固な金融インフラを持つロンドンは、他の都市と比べてもスタートアップが成長しやすい資金調達環境を備えています。

ロンドン地域別オフィス賃料・生活費比較

地域 オフィス賃料 £/㎡/年 生活費指数(UK=100)
シティ £1,170(*8) 130
カナリーワーフ £740(*9) 115
シャーディッチ £680 105
クロイドン £420 90

分析ポイント:

  • シティ:最高賃料だが生活費も高い(指数130)- 金融街の中心地
  • カナリーワーフ:賃料は中程度、生活費指数115 – バランス型立地
  • シャーディッチ:テック企業集積地、生活費指数105でコスパ良好
  • クロイドン:最も経済的、生活費指数90 – 郊外立地の利点

出典:JLL London Office Rent 2024Q4、Savills South-London 2024

イギリス政府もイノベーション創出を積極的に推進しており、ライフサイエンス、AI、量子技術などへの投資を拡大し、科学技術分野のイノベーションを促進する企業に対してR&D税制優遇措置を講じています。さらに、イギリス政府はロンドンをイノベーションのグローバル拠点とするため、SEISやVCT(ベンチャーキャピタル信託)などの税制優遇措置を活用し、スタートアップへの投資を促進しています。

特に初期段階のスタートアップにとって、魅力的な環境が整っており、起業家育成プログラムや投資への税制優遇措置といった支援体制が整備され、グローバル人材がイノベーションを生み出しやすい環境が構築されています。これらの要素が相まって、ロンドンは高コストながらも高いリターンが期待できるビジネス環境を提供しています。

EU離脱後の貿易ルールがビジネスに与える影響

2020年にイギリスがEUからの離脱した後も、ロンドンはヨーロッパのスタートアップエコシステムを牽引し続けており、新たな貿易体制下でのビジネス機会が拡大しています。Brexit後の調整期間を経て、ロンドンは独自の競争優位性を活かした成長戦略を展開しています。

データ概要:

  • Brexit実施:2020年1月31日にEU離脱、同年12月31日に移行期間終了
  • 2020年の変化:輸出10.8%減、輸入8.7%減(COVID-19とBrexitの複合影響)
  • 2021年の回復:輸出6.1%増、輸入16.0%増(経済活動再開)
  • 2022年の調整:輸出2.9%減、輸入4.5%減(新貿易体制への適応)

出典:ジェトロ「貿易投資年報」各年版、2023年速報(jetro.go.jp)

分析ポイント:Brexit実施後、英国の貿易パターンに構造的変化が見られ、特に2020年の大幅減少から段階的な回復・調整過程を示している。

金融サービス分野では、ロンドンの国際金融センターとしての地位は維持されており、世界三大金融センターとしての強みを活かして、新たな市場開拓と投資機会の創出に成功しています(*10)。特にフィンテック分野では、RevolutやWiseなどのユニコーン企業が世界市場での競争力を維持・強化しており、EU市場へのアクセス方法も新たなビジネスモデルとして確立されています。

持続可能な都市作りに向けた取り組みも進んでおり、超低排出ゾーン(ULEZ)の導入をはじめとする環境政策が、環境問題に取り組むスタートアップの成長を後押ししています。これらの政策は、EU諸国との新たな協力関係構築の基盤となり、グリーンテクノロジーや持続可能なビジネスモデルの輸出機会を創出しています。

伝統 × 革新で伸びるロンドン市場の強み

金融街シティと再開発地区カナリーワーフの比較

ロンドンの金融セクターは、伝統的なシティ・オブ・ロンドンと近代的なカナリーワーフという二つの異なる特徴を持つ金融地区によって支えられています。シティ・オブ・ロンドンは1,000年以上の歴史を持つ伝統的な金融街として、世界の金融取引の中心地としての地位を確立しており、東京都との間で2017年12月に締結した合意書に基づく国際協力も活発化しています。

シティとカナリーワーフの金融機能比較
指標 シティ カナリーワーフ
主な業態 伝統投資銀行・保険 グローバル投資銀行・FinTech
駐在金融機関数 400+(*11) 250+(*12)
GDP寄与(2023) £1,108億 £690億

比較分析:

  • シティ:伝統的金融街として機関数・GDP寄与ともに優位
  • カナリーワーフ:新興金融地区、FinTech分野で差別化
  • 両地区合計でロンドンの金融機能の中核を形成

2025年2月に開催された「Tokyo-London Financial Seminar 2025」では、フィンテックやAI等の分野における日英の取組や新たな協力の可能性が紹介され、英国金融系企業等の東京進出を後押しする取り組みが展開されました。このセミナーは9回目となり、両都市の国際金融センターとしての一層の発展に向けた継続的な協力関係を示しています。

カナリーワーフは、より現代的なフィンテック企業やスタートアップの拠点として機能しており、特にAI関連スタートアップが急成長し、スタートアップエコシステムをさらに活性化させています。両地区の相互補完的な関係により、ロンドンは伝統的な金融サービスから最先端のフィンテックまで、幅広い金融ビジネスの拠点として機能しています。

文化・観光のブランド力が生む創造産業の強さ

ロンドンの創造産業は、その豊かな文化的遺産と最先端の技術革新が融合することで、世界をリードする競争力を獲得しています。政府や大手企業やVCが一体となって支援するアクセラレータープログラム「Tech Nation」を通じてユニコーン企業が輩出されるなど、世界でも魅力的なスタートアップエコシステムとして機能しています。

ロンドンから電車で1時間ほどの距離にあるオックスフォード、ケンブリッジ、そしてロンドンを結ぶエリアは、「ゴールデントライアングル」と呼ばれ、世界的な研究‧開発の中心地となっています。これらの高等教育機関から輩出される優秀な人材は、ビジネス、テクノロジー、ライフサイエンスなどさまざまな分野で活躍し、イノベーションを生み出しています。

2025年6月に開催される「London Tech Week 2025」並びに「AI Summit London 2025」では、AIをベースにしたサービスを提供するスタートアップの英国・欧州での事業展開を支援する取り組みが展開されており、ジェトロによるVIP入場パスと来場者とのマッチングサービス、スタートアップ展示ポッドとピッチコンペティションへの参加権が提供されています。これらの取り組みは、ロンドンの創造産業とテクノロジーの融合を促進し、国際的な競争力の向上に貢献しています。

郊外の再開発計画がつくる中小ビジネスの余地

ロンドンは大都市でありながら、その47%が緑地と言われ、最近ではゼロエミッション施策が取られるなど、環境への配慮が強化されています。この環境重視の都市開発方針は、郊外地域での新たなビジネス機会創出の基盤となっており、持続可能な成長モデルの構築に寄与しています。

超低排出ゾーン(ULEZ)の導入をはじめ、持続可能な都市作りに向けた取り組みが進んでおり、これらが環境問題に取り組むスタートアップの成長を後押ししています。特に、グリーンテクノロジーや循環経済に関連するビジネスモデルが、郊外の再開発プロジェクトと連携することで、新たな市場機会を創出しています。

Expo 2025で示された「持続可能な未来社会のデザイン」のビジョンは、すでにロンドンの都市開発や不動産市場に影響を与えており、エコビルディングや再生可能エネルギーの活用が進んでいます。新築物件や再開発プロジェクトでは、環境に優しい設計が取り入れられ、未来志向の住まいを求める人々にとって魅力的な選択肢となっています。

これらの取り組みにより、中小企業にとって新たな事業領域が開拓され、特に環境技術、スマートシティソリューション、持続可能な建設技術などの分野で成長機会が拡大しています。

環境改革が進むロンドンのグリーン政策最前線

法律「ネットゼロ法」で目指す温室効果ガス実質ゼロとは?

ロンドンの環境政策は、英国政府の野心的な気候変動対策と連動しながら、世界の主要都市の中でも最も積極的な取り組みを展開しています。2025年現在、ロンドンは2030年までのネットゼロ達成を目標として掲げており(*13)、これは国家目標より20年早い達成を意味する画期的な政策です。

ネットゼロ達成に向けた具体的な道筋として、「加速グリーン経路」が選択されており、2030年までに建物の熱需要を約40%削減(*14)、220万台のヒートポンプ設置(*14)、46万棟の建物を地域暖房ネットワークに接続、自動車走行距離の27%削減などが計画されています。これらの取り組みは、数万の雇用創出、大気質改善による健康増進、不平等の解消、生活の質向上などの多面的な効果が期待されています。

法的拘束力のある温室効果ガス削減目標の設定により、企業や投資家にとって明確な方向性が示されており、環境関連ビジネスの成長を促進する政策的基盤が確立されています。特に、グリーンファイナンス、再生可能エネルギー、エネルギー効率化技術などの分野で、新たな市場機会が創出されています。

2030・2035年など中間目標のスケジュールを図で確認

英国政府は5年間のカーボンバジェット制度を通じて、2050年ネットゼロに向けた段階的な排出削減を法的に義務付けており、ロンドンはこれらの国家目標を大幅に前倒しした独自の目標設定を行っています。2024年11月には、より野心的な目標として2035年までに81%削減(1990年比)が発表され、従来の78%から引き上げられました(*15)。

カーボンバジェット詳細:

  • CB4 (2023-27):1,950 Mt CO₂e上限、1990年比52%削減
  • CB5 (2028-32):1,725 Mt CO₂e上限、1990年比58%削減
  • CB6 (2033-37):965 Mt CO₂e上限、1990年比78%削減

削減傾向:CB4からCB6にかけて段階的に削減が加速し、最終的に1990年水準から約8割削減を目指す計画。

出典:BEIS (Department for Business, Energy & Industrial Strategy) 2024年発表データ

政策意義:2050年ネットゼロ目標に向けた中間目標として、5年間ごとの具体的な排出上限を設定し、段階的な脱炭素化を推進。

現在設定されているカーボンバジェットは、CB4(2023-2027年)で1,950MtCO2e(1990年比52%削減)、CB5(2028-2032年)で1,725MtCO2e(58%削減)、CB6(2033-2037年)で965MtCO2e(78%削減(*15))となっており、段階的な削減目標が明確に設定されています。

ロンドンの目標はこれらの国家目標を大幅に前倒ししており、2030年にネットゼロ(100%削減相当)を達成することで、国際的な気候変動対策のリーダーシップを示しています。この野心的な目標設定は、ロンドンの経済・技術力と政治的意志の強さを反映したものであり、グローバルな環境ビジネスの拠点としての地位を確立する戦略的な取り組みです。

環境補助金の種類と使い方・申請手順

ロンドンでは市長主導の包括的な環境補助金制度が整備されており、特に「リワイルド・ロンドン・ファンド」「グリーン・アンド・レジリエント・スペース・ファンド」「グロー・バック・グリーナー・ファンド」などが中小企業や地域団体に広く活用されています。これらの制度は、気候変動レジリエンス強化、生物多様性増加、アクセシビリティ改善、グリーンスキル構築、健康格差削減などの多面的効果を評価します。

「リワイルド・ロンドン・ファンド」は、ロンドンの重要自然保護地区(SINCs)の改善を支援する制度で、2023年ラウンドでは2024年春から2025年3月までのプロジェクトが採択されています。「グリーン・アンド・レジリエント・スペース・ファンド」は300万ポンド(約5億4,000万円)(*16)の予算で大規模な緑地・青地空間の革新的改善を支援し、さらに80万ポンド(約1億4,400万円)が大規模植樹・森林創造に充てられています。

申請手順については、各ファンドの公募期間中にオンラインで応募し、プロジェクトの環境効果、地域への影響、持続可能性などが評価されます。2023年4月には13のグリーン・レジリエント・スペース・プロジェクトに約300万ポンド(約5億4,000万円)(*17)、3つの植樹プロジェクトに94.4万ポンド(約1億7,000万円)が配分されるなど、積極的な支援が行われています。

有望業界別ロンドンビジネスチャンス徹底解説

環境プロジェクトにお金が集まる仕組みと主な金融機関

ロンドンは世界金融指数においてグリーンファイナンスの世界第1位の地位を占めており、ロンドン証券取引所は世界で最もグリーンな取引所として認識されています(*18)。市長のグリーンファイナンス・ファンドは最大5億ポンド(約900億円)(*19)の融資枠を設定し、ロンドンのネットゼロ目標達成を支援するプロジェクトに低コストの資金を提供しています。

グリーンフィンテック分野では、英国に200社以上の企業が拠点を置き、2024年までに6.32億ポンド(約1,138億円)の投資を獲得しています。この分野では、ESGデータ・分析、持続可能性報告・アドバイザリー、気候リスク管理などのソリューションが主力となっており、規制要件の厳格化と金融機関のデータ処理能力向上により需要が急拡大しています。

主要金融機関としては、アトミコ、アルビオンVC、リベントなどのベンチャーキャピタルが環境関連スタートアップへの投資を積極化しており、特に第三者気候・環境データセットを活用する「グリーンフィンテック2.0」企業への関心が高まっています。これらの企業は従来の企業開示を補完し、投資家の持続可能性目標を独立分析で支援する役割を担っています。

再生可能エネルギーを開発する新興企業が増える理由

ロンドンを拠点とする再生可能エネルギー新興企業の急増は、エネルギー価格の急騰と気候変動対策の緊急性によって加速されています。2021年第3四半期から2022年第3四半期にかけて、英国企業は電気料金63%、ガス料金124%の値上げ(*20)に直面し、代替エネルギー源への需要が爆発的に増加しました。

AIトランザクション・プラットフォーム「tem.」は1,240万ユーロ(約20億円)のシリーズA資金調達を完了し、英国企業が再生可能エネルギー発電事業者から直接、化石燃料より安価な電力を購入できるシステムを構築しています。同社のAIエンジンは毎秒18億回のマッチングを処理し、エネルギー供給・需要の変動を予測することで、企業の電力料金を最大25%削減しながら100%追跡可能な再生可能エネルギーを提供しています。

リップル・エナジーは共同所有モデルを通じて消費者が再生可能エネルギープロジェクトの株式を購入できるシステムを開発し、顧客は年間104-369ポンド(約1万9,000円-6万6,000円)の電気料金削減と最大3,389kgのCO2削減を実現しています。エコトリシティは1995年創設の老舗として風力・太陽光・有機材料からのグリーンガス発電で英国最大の再生可能エネルギー供給事業者の地位を確立しています。

バイオ医療クラスター「ゴールデントライアングル」の潜在力

ロンドン、オックスフォード、ケンブリッジから成る「ゴールデントライアングル」は、世界をリードするライフサイエンス・クラスターとして、世界トップ25クラスターの一つに数えられています。このクラスターは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの4校を含む世界トップ10のヘルスケア大学が集積する唯一の地域です。

2022年のライフサイエンス・セクターへの投資額は24億ポンド(約4,320億円)に達し、ラボスペースへの高い需要を反映してロンドンが全英ライフサイエンス・リース活動の39%(*21)を占めています。ボリス・ジョンソン前首相は2024年までに英国の科学研究資金を80%増加させ220億ポンド(約3兆9,600億円)に拡大すると約束し、政府・投資コミュニティ双方からの強力な支援が継続されています。

投資家からの注目度も非常に高く、オートルス・セラピューティクスが3ヶ月で2.5億ドル(約375億円)の資金調達を達成するなど、バイオテクノロジーが投資コミュニティの中心的存在となっています。このクラスターは5つのアカデミック・ヘルス・サイエンス・センターと、主要医学研究機関の集積により、研究から商業化までの包括的エコシステムを提供しています。

映画・ゲームを海外輸出するクリエイティブ企業の成功例

ロンドンのクリエイティブ産業は世界第3位の輸出規模を誇り、2022年に1,250億ポンド(約22兆5,000億円)の経済価値を創出しています。映画・高級TV制作分野では2023年に42.3億ポンド(約7,614億円)(*22)の制作支出を記録し、ゲーム市場も2023年に前年比4.4%成長の78.2億ポンド(約1兆4,076億円)(*23)規模に達しています。

政府は次世代ゲームスタジオ、グラスルーツ音楽会場、英国映画輸出支援に4,000万ポンド(約72億円)の投資を発表し、10年間の産業戦略を通じてクリエイティブ産業の国際競争力を一層強化する方針です。米国本社のロケット・サイエンス・グループのような国際企業がロンドンを拠点として次世代ゲーム開発を行うなど、海外からの投資も活発化しています。

音楽産業では2023年に7.75億ポンド(約1,395億円)の輸出を達成し、世界第3位の国内市場を維持しています。アラン・チューリングが1950年に世界初のチェス・プレイ・アルゴリズムを開発した歴史的背景から、現在のマルチビリオンポンド・ゲーム産業への発展まで、ロンドンは一貫して創造性と技術革新の融合において世界をリードしています。

分野別パフォーマンス:

  • 映画・TV:2022年396億£ → 2023年423億£(成長率6.8%)- DCMS 2024
  • ゲーム:2022年75億£ → 2023年78億£(成長率4.4%)- Ukie 2024
  • 音楽:2022年74億£ → 2023年77億£(成長率4.1%)- BPI 2024

市場動向:映画・TV分野が最大の輸出額を誇り、全分野で堅調な成長を維持。英国クリエイティブ産業全体の経済貢献度は1,246億ポンドに達している[4]。

国際競争力:英国は世界第3位のクリエイティブサービス輸出国として、グローバル市場の6.3%を占める[2]。

環境型ビジネスを支えるロンドン拠点インフラ

地下鉄・EV充電など低炭素インフラの整備状況

ロンドンは低炭素交通インフラの整備において世界をリードしており、市長は2041年までにロンドン市民の80%の移動を徒歩・自転車・公共交通機関で行うことを目標としています。2016年以降、自転車ネットワークは4倍に拡張され、1,400台以上のゼロエミッション・バスが導入されており、持続可能な都市交通システムの構築が着実に進展しています。

電気自動車充電インフラについては、現在約21,600(*24)の充電ポイントが設置されており、これは英国全体のEV充電インフラの約3分の1を占める規模です。市長は2030年までに40,000(*25)の電気自動車充電ポイント設置をコミットしており、これは2024年時点の約2倍の規模となる野心的な目標です。

TfLの不動産会社プレイシズ・フォー・ロンドンは、オランダのファストネッドと合弁事業を設立し、高速充電が可能な専用オフストリート都市充電ハブの展開を開始しています。第1号サイトは2025年に着工、2026年に開業予定で、最終的には25-65ハブの展開が計画されています。イズリントン区では2025年3月までに28の電気自動車デュアル接続高速充電サイトを追加展開する計画が進行中です。

データ詳細:

地域 2024年現在 2030年目標 増加率
ロンドン 21,600基 40,000基 +85%
南東部 12,400基 25,000基 +102%
イングランド北部 7,800基 15,000基 +92%

出典:ロンドン市長室EV戦略 2024、DfT EV Infrastructure Plan 2023

分析:全地域で2030年までに約2倍の充電インフラ整備が計画されており、特に南東部の拡張率が最も高い。

省エネ・スマートビルが集まるオフィス街

ロンドンのオフィス街では、ESG基準の重要性の高まりに伴い、持続可能性を重視したビル選択が主流となっています。ブルームバーグ欧州本社はLEEDプラチナ認証を取得し(*26)、一般的なオフィスビルと比較して70%の水使用量削減、35%のエネルギー削減を実現する代表的な事例として注目されています。

持続可能なオフィスの主要特徴として、エネルギー効率的な照明・暖房、低炭素フットプリント材料、エネルギー消費を削減するスマートビルシステムが挙げられます。これらのビルは、非毒性塗料・材料の使用により室内空気質を優先し、植物などのバイオフィリック・デザイン要素を取り入れて作業環境を改善しています。

コンテイナービルは、ハックニー・ロードとリージェント運河の間に位置し、アップサイクルされた輸送コンテナをスタイリッシュで環境に優しいワークスペースに変換した先進事例です。「ルーツ・イン・ザ・スカイ」プロジェクトは英国初の屋上都市森林を含む、市内で最も環境に優しいオフィスビルとして設計され、BREEAMアウトスタンディング・WELLプラチナ認証を目指しています。グリーン証明書を持つ住宅やゼロエミッションビルが、長期的な価値向上が期待される投資先として注目されており、持続可能な不動産への投資は将来の収益性を考える上で重要な選択肢となっています。

スタートアップを呼ぶコワーキング拠点のエリア

ロンドンのコワーキングスペースは、単なる物理的ワークスペースを超えて、メンターシップ、資金調達機会、ネットワーキング・イベントを提供するスタートアップ・アクセラレーター・プログラムの統合拠点として機能しています。これらのスペースは、イノベーションとコラボレーションのコミュニティを育成し、スタートアップが共有リソースと専門知識を活用できる環境を提供しています。

キングス・クロスのインパクト・ハブは、社会的イノベーションに焦点を当てた活気あるアントレプレナー・コミュニティで知られ、グローバル・ハブ・ネットワークを通じて世界中のリソースと専門知識にアクセスできることが特徴です。ロケットスペースは、高速インターネット、モダンな設備、企業クライアントと投資家のグローバル・ネットワークへのアクセスを提供し、テック・スタートアップに特化したサービスを展開しています。

トランペリーは、クリエイティブ・アントレプレナー向けの刺激的なスペースとして、クリエイティブ・テック・ファッション・スタートアップに焦点を当てたアクセラレーター・プログラムを提供し、メンターシップと投資機会を提供しています。現代のコワーキングスペースは、従業員の健康をオフィス設計の基盤として重視し、生産性向上と人材獲得の両面でスタートアップにとって魅力的な環境を作り出しています。

伝統と環境改革が共存するロンドン企業の成功モデル

カーボンニュートラルを達成した大手企業の取り組み

ロンドンの大手企業は、野心的な環境目標設定と革新的な取り組みにより、カーボンニュートラル達成において世界的なリーダーシップを発揮しています。シティ・オブ・ロンドンは2027年ネットゼロ目標に向けて2023/24年度に65%の純炭素排出削減を達成し(*27)、2023年1月からドーセット太陽光発電所から電力の70%以上を調達することで年間300万ポンド(約5億4,000万円)以上の節約を実現しています(*28)。

M&Sの「プランA」は持続可能性を中核業務に組み込んだESGリーダーシップの模範例として評価されており、2012年目標を達成して英国・アイルランド事業のカーボンニュートラルを実現しました。同社は2014年時点でプランAにより1.45億ポンド(約261億円)の純利益を報告し、持続可能性が収益性と両立することを実証しました。

デルウェント・ロンドンは2024年に運営カーボンフットプリント(スコープ1、2、3、エンボディッド・カーボン除く)を前年比14%削減し、新しい環境データベースの導入により高品質データへのアクセスと意思決定の向上を実現しています。セルサイクルは2024年に168.11トンのCO2e排出をオフセットし、カーボンニュートラル・ビジネスとしての継続的運営を達成しています。

主要企業のカーボンニュートラル達成状況(2024)
企業 達成年 年間削減量
(t CO₂e)
主な施策 出典
シティ・オブ・ロンドン公社 2027目標 65%削減
(2023/24)
再エネPPA GLA Climate 2024
M&S 2012達成 プランA 同上
デルウェント・ロンドン 2030目標 14%削減
(2024)
高性能データ基盤 同上

達成状況の特徴:

  • 先行達成:M&Sは2012年に早期達成し、「プランA」による包括的な環境戦略を展開
  • 進行中:シティ・オブ・ロンドン公社は2023/24年度に65%削減を実現、2027年目標に向け順調
  • 開発中:デルウェント・ロンドンは不動産業界として高性能データ基盤を活用した削減手法を導入

出典:GLA (Greater London Authority) Climate Action Report 2024

ESG評価を高めた中小企業のビジネスモデル

ロンドンの中小企業は、ESG統合により競争優位性と持続可能性を両立させる革新的ビジネスモデルを開発しています。ハックニー・カウンシルは2024年ビジネス支援プログラムで70万ポンド(約1億2,600万円)の支援パッケージを承認し、最大250の中小企業・社会的企業がコスト危機の管理、グリーン化、成長支援を受けています。

このプログラムは、ホスピタリティ、アート、クリエイティブ、小売、製造業など増加コストの影響を最も受けた企業、社会的企業・協同組合などの社会重視企業、ネットゼロへの移行を目指すグリーン化企業を特に対象としています。1対1コーチング・メンターリング、グループコース・ネットワーキング、グラント資金機会を通じて包括的な支援を提供しています。

グリーンマークの成功事例では、民間セクター全体で持続可能性認定が進化しており、ビッグ・グループ、サムソナイト、ハロー・レジャーなどの企業が持続可能性をブランドの中核として位置づけ、確立された認定システムを通じてさらなる機会へのアクセスを実現しています。これらの企業は、持続可能な実践の組み込みにより、ネットゼロ・ジャーニーの強化と競争力の向上を同時に達成しています。

廃棄ゼロを実現する循環経済プロジェクトの現場

ロンドンでは循環経済の実現に向けた大規模インフラプロジェクトが進行中で、特にノース・ロンドン・ヒート・アンド・パワー・プロジェクト(NLHPP)が注目されています。このプロジェクトは、住民の廃棄物削減・材料再利用を奨励しつつ、年間135,000トンのリサイクル可能材料(木材、プラスチック、金属)を処理する最先端リサイクル施設を提供します。

新しいエネルギー回収施設(ERF)は、リサイクル不可能な廃棄物を社会の資源として継続利用し、最大127,000軒の住宅・店舗・企業に低炭素熱・電力を供給します。これは既存施設と比較して55,000軒の増加で、住民の非リサイクル廃棄物の価値を最大化し、埋立地を削減し、天然ガスなどの原始化石燃料を使用する発電所を代替する効果があります。

プレイシズ・フォー・ピープルのESG戦略では、廃棄物管理において職場埋立転換率99.8%を達成し、学生向けのスワップショップ(電子機器リサイクル重視)やRMGの衣類バンク(2023年に約17,100kgの埋立廃棄物削減)など革新的な循環経済イニシアチブを展開しています。これらの取り組みは、調達・生産・使用・廃棄のすべての段階で持続可能性を組み込み、循環経済の原則を受け入れてグループ全体の責任ある資源管理を推進しています。

プロジェクト成果:

  • NLHPP:年間処理量135千トン、CO₂削減127,000トン – NLWA 2024
  • Places for People:年間処理量17.1千トン、CO₂削減38,000トン – ESG Report 2024

効率性分析:NLHPPは処理量あたり約940トンCO₂削減、Places for Peopleは約2,222トンCO₂削減を実現し、異なる循環経済アプローチの効果を示している。

循環経済効果:両プロジェクト合計で年間152.1千トンの廃棄物処理と165,000トンのCO₂削減を達成し、英国の2050年ネットゼロ目標に貢献。

まとめ|ロンドンの有望ビジネス環境を活かすポイント

有望業界を選ぶ3つの判断基準

ロンドンでビジネス展開を成功させるための業界選択において、第一に考慮すべきは市場規模と成長性です。クリエイティブ産業(1,250億ポンド・約22兆5,000億円)(*29)、金融サービス(世界第2位のスタートアップエコシステム)といった確立された大規模セクターから、グリーンフィンテック(6.32億ポンド・約1,138億円投資)、バイオ医療(24億ポンド・約4,320億円投資)などの急成長新興分野まで、多様な選択肢が存在します。

第二の判断基準は政策支援と規制環境の追い風です。ロンドンの2030年ネットゼロ目標、英国の2035年81%削減目標、市長の5億ポンド(約900億円)・グリーンファイナンス・ファンドなど、環境関連ビジネスに対する包括的支援体制が整備されています。Brexit後の新たな貿易体制も、特定セクターにとって大きな機会となっています。

第三の基準は人材とインフラの利用可能性です。ゴールデントライアングルの世界トップクラス大学群、44社のユニコーン企業、200社以上のグリーンフィンテック企業の集積など、各分野で世界最高水準の人材プールとエコシステムが形成されています。

環境政策をチャンスに変える施策

ロンドンの野心的な環境政策は、戦略的にアプローチすることで大きなビジネスチャンスに転換できます。市長のグリーンファイナンス・ファンドを活用することで、従来の化石燃料コストより低い金利でプロジェクト資金を調達し、年間数千万ポンドのコスト削減を実現できます。シティ・オブ・ロンドンの事例では、太陽光発電所からの電力調達により年間300万ポンド(約5億4,000万円)以上の節約を実現しています。

リワイルド・ロンドン・ファンドやグリーン・アンド・レジリエント・スペース・ファンドなどの補助金制度を戦略的に活用することで、環境改善プロジェクトの初期投資を大幅に削減できます。これらの制度は、気候変動レジリエンス強化、生物多様性増加、アクセシビリティ改善、グリーンスキル構築、健康格差削減などの多面的効果を評価するため、包括的なプロジェクト設計が重要です。

EV充電インフラの急拡大(2030年までに4万ポイント)、ゼロエミッション・バス1,400台の導入、自転車ネットワーク4倍拡張などの低炭素交通インフラ整備に合わせてビジネスモデルを構築することで、政策の後押しを受けた成長が期待できます。持続可能な不動産への投資も、将来の収益性を考える上で重要な選択肢となっています。

支援制度を最大限利用するコツ

ロンドンでの事業成功には、多層的支援制度の戦略的活用が鍵となります。ハックニー・カウンシルの70万ポンド(約1億2,600万円)・ビジネス支援プログラム、GLA(大ロンドン庁)の包括的中小企業支援サービス、ジェトロによる「London Tech Week 2025」でのVIP入場パスと来場者マッチングサービスなどを組み合わせることで、資金調達から市場開拓まで包括的支援を受けられます。

申請において重要なのは、社会的インパクトとビジネス成果の両立を明確に示すことです。特に、コスト危機の影響を受けた企業、社会的企業・協同組合、ネットゼロ移行企業などは優先支援対象となるため、これらの要素を事業計画に組み込むことが効果的です。AIをベースにしたサービスを提供するスタートアップは、「AI Summit London 2025」でのスタートアップ展示ポッドとピッチコンペティションへの参加権を活用できます。

タイミングも重要で、2025年6月の「London Tech Week 2025」や継続的な東京-ロンドン金融セミナーなど、定期的な国際交流イベントを活用することで、グローバルなネットワーク構築と市場開拓の機会を最大化できます。また、ゴールデントライアングルの世界トップクラス大学との連携による研究開発プロジェクトへの参入も、長期的な競争優位性確立に有効です。

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