【2025年最新】フィリピンの法人設立の流れと費用について

はじめに
フィリピンは東南アジアでも屈指の経済成長国であり、1億1千万人を超える人口、若い労働力、英語が公用語として広く使われる環境を活かし、海外からの投資を積極的に受け入れています。 2025年時点では、行政手続簡素化法(Ease of Doing Business法、EODB法)の影響や改正会社法、企業復興税優遇法(CREATE法)などの施策が進み、外資にとって法人設立手続きがさらに容易になっています。
本記事では、日本人投資家に向けて、実際の手続きプロセスや費用面の詳細、最新のオンライン化動向などを網羅的に解説し、スムーズなフィリピン進出をサポートします。

2025年最新のフィリピン法人設立事情
外資比率とネガティブリストの最新動向
フィリピンには、外資が参入できない、もしくは出資比率に上限が設けられている業種を示す「ネガティブリスト」が存在します。例えば、マスメディアや小規模小売業などは外資100%が禁止されており、一部の製造業やITサービス業は比較的自由度が高い傾向にあります。
最新版ネガティブリストでは、2022年施行の改正を反映し、公共事業や公益関連分野の一部について外資規制が緩和されつつあります。ただし、依然として国防産業や専門職(弁護士・会計士など)の完全外資参入はほぼ認められていません。
EODB改革とオンライン手続き
行政手続簡素化法(EODB法)によって、法人設立手続きは従来の複雑さを大きく脱却しつつあります。 中央ビジネスハブ(Philippine Business Hub)や地方自治体の電子ビジネスワンストップ(eBOSS)が整備され、商号予約、SEC登録、税務登録、社会保険の事業者登録、Mayor’s Permit取得など多くの手続きがオンラインで完結できるようになっています。
法人形態の選択:Stock Corporation・One Person Corporation・支店など
フィリピンで法人を設立する場合、主な選択肢として以下の形態があります。
法人形態の相違点を図解で比較
Stock Corporation
- 複数株主(2名以上)で構成
- 取締役会・会社秘書役が必要
- 外資100%構成も可能(規制業種は除外)
- 一般的な株式会社形態
One Person Corporation
- 株主1名のみで設立
- 取締役会不要・機動性が高い
- 銀行・保険など一部業種は対象外
- 外資100%の場合は外国投資法の要件優先
Branch(支店)
- 本社の延長として営業
- 原則10万米ドル以上の払込資本
- 収益活動が可能
- 法人格はなく、本社が責任を負う
Representative Office
- 調査・連絡業務のみ
- 初年度は3万米ドル以上送金
- 収益活動は不可
- 経費は全て本社が負担
法人設立に必要な資本金・書類・ライセンス
資本金要件のポイント
外資100%かつ国内市場向け事業の場合、原則20万米ドルが必要ですが、高度技術業種や15人以上の雇用で10万米ドルに軽減されることがあります。フィリピン人が60%以上出資する場合は最低資本金が実質撤廃されていますが、実務上は5,000ペソ以上を用意することが望ましいです。OPCの場合は最低資本金要件が一般にないものの、外資企業は外国投資法要件が優先されます。
必要書類一覧
以下は主な必要書類です。
書類名 | 取得先 | 備考 |
---|---|---|
商号予約証明 | SEC(フィリピン証券取引委員会) | オンライン上で重複チェックを行い、確認でき次第発行される |
定款(Articles of Incorporation) | 公証人事務所など | 英語で作成し、公証人の認証を受ける必要がある |
登録情報シート | SEC | 発起人・役員の基本データを記載 |
払込資本証明 | 銀行 | 資本金を口座へ入金後、発行してもらう証明書 |
財務担当役員宣誓書(Treasurer’s Affidavit) | 公証人事務所 | 資本金の払い込みを証明するため財務担当役員が宣誓する |
外国投資法に基づく届出フォーム | SEC(外資株主がいる場合) | 外国株主の出資比率などを申告する際に提出 |
設立プロセスの流れ
設立費用のモデルケース:具体的シミュレーション
以下は、日本人投資家がサービス業(例:コンサルティング会社)を設立する場合の「外資100%、授権資本100万ペソ」を想定した例です。
- 商号予約料:100ペソ(SECオンライン予約)
- SEC登録料(授権資本の0.5%):5,000ペソ(100万ペソ×0.5%)
- 法律研究料(Legal Research Fee):50ペソ(登録料の1%)
- 外国投資申請料:3,000ペソ(外国人株主がいる場合)
- 公証・定款認証費:1,000〜2,000ペソ(書類枚数・公証事務所による)
- BIR登録料:500ペソ(年額登録料)
- 印紙税(ドキュメンタリースタンプ):30ペソ(定款認証時)
- Mayor’s Permit取得費:5,000〜15,000ペソ(事業税や消防検査など含む)
- バランガイ証明費用:500〜1,000ペソ(地域により差異)
- 領収書印刷費:2,000〜3,000ペソ(公式領収書・請求書発注)
- 弁護士・コンサルへの依頼報酬:10万〜20万ペソ(範囲による)
合計(公式手数料部分のみ):約16,000〜26,000ペソ(弁護士費用等を含まない)
合計(専門家依頼含む場合):10万〜30万ペソ程度(規模・サービス範囲により変動)
実際には物件契約や初期運転資金なども必要であり、とくに資本金は業種・外資比率によって大きく変動します。あくまで一例としてイメージを掴んでください。
設立後の注意点:労務管理・税務コンプライアンス・ライセンス更新
労務管理とフィリピン人材事情
フィリピンでは最低賃金が地域ごとに定められており、メトロマニラでは2025年現在、日給550〜570ペソ程度が相場です。従業員を10名以上雇用すると、労働省(DOLE)への届出が必要です。毎月の給与支払い時にSSS、PhilHealth、Pag-IBIGの社会保険料を控除し、会社拠出分と併せて納付します。外国人スタッフを雇用する場合は、外国人雇用許可証(AEP)と就労ビザ(9(g)ビザ)が必要です。
税務監査・遅延罰金
毎年1月にBIR年額登録料500ペソを納付します。法人所得税は課税所得に応じ25%または20%(中小企業)を申告納税します。付加価値税(VAT)登録や源泉徴収税など、月次・四半期ごとの申告が必要です。遅延や不備があると罰金や追加徴税が課される場合があるため、会計事務所と連携するのがおすすめです。
ライセンス更新
Mayor’s Permitは1年ごとに更新が必要です。SECへは年次会社概況報告書(GIS)と監査済み財務諸表の提出義務があります。業種別ライセンス(PCAB、FDAなど)は各機関の規定に従い随時更新しましょう。
まとめ:効率的に法人を作るためのアドバイスと今後の展望
事前の情報収集と専門家の活用が重要です。外資規制や資本金要件、ライセンスなどを丁寧にチェックし、不明点は現地コンサルや弁護士に確認してください。 オンラインシステムをフル活用し、手続きを効率化することも大切です。労務や税務のコンプライアンスを徹底しながら、長期的視点でフィリピンの成長を取り込むことを目指しましょう。
フィリピンではインフラ投資やIT化が加速し、地方都市への外資誘致も進んでいます。外資投資法や公共サービス法の改正により、かつては制限のあった分野でも新たな進出機会が拡大しています。行政手続のオンライン化がさらに進めば、設立期間のさらなる短縮が期待できるでしょう。