日本人向け!ベトナムの銀行口座の開設方法とメリット・デメリット

本記事ではベトナムの銀行口座の開設方法と、メリット・デメリットを解説します。2025年の最新情報を反映し、ベトナムでの高金利預金や送金ルールなど、重要ポイントを専門的かつ実務的にまとめています。

目次

ベトナムで銀行口座を開設するメリット

ベトナムの銀行口座を持つことで得られる一般的なメリットは次のとおりです。

高金利で資産運用が可能

ベトナムドン(VND)建ての定期預金金利は年5~6%前後と日本よりはるかに高く(普通預金でも0.1~1%程度)、1年定期で6%台を提供する銀行もあります。例えば2025年時点で100万円を預けると約4~5万円の利息が得られ、日本の銀行預金(金利ほぼゼロ)に比べ魅力的です。

しかも預金利息はベトナムでは非課税で、受取利息に税金がかかりません。日本なら20%以上課税される利息が丸ごと手取りとなる点は大きなメリットです。

ベトナムと日本の定期預金金利比較

現地通貨の利用とATM引出が便利

現地銀行の口座があれば、各所にあるATMで簡単に現金を引き出せます。日本の銀行口座から現金を引き出す場合と比べ手続きが煩雑になることも、現地口座ならスムーズです。

またデビット機能付きキャッシュカードも発行され、ベトナムではクレジットカード以上にデビットカード決済が一般的なので日常の支払いが快適になります。QRコードを使ったキャッシュレス決済も広まり、銀行口座さえあれば手数料無料の送金アプリやQR決済で友人間の送金や店舗支払いが容易に行えます。

ネットバンキングで送金・管理が可能

ほぼ全ての銀行がインターネットバンキングに対応しており、スマホやPCから残高確認や振込ができます。ベトナム国内の銀行間であれば、ネットバンキング経由でVND建ての国内送金が可能です(※外貨送金はネット上では制限があります)。

銀行によってはネットバンキング利用料(月額口座維持料)がかかる場合もありますが、その分店頭より有利な金利が適用されることもあります。オンラインで定期預金を開設したり各種支払いに対応できるため、時間の節約にもつながります。

外貨口座の開設も可能

多くのベトナムの銀行では、現地通貨VNDのほか米ドル(USD)建ての口座も開設できます。給与を米ドルで受け取ってそのままドル口座で管理したり、為替レートの変動リスク分散のために外貨で資金を置いておくことも可能です。ただし米ドル預金の場合は金利が0%(無利息)の銀行がほとんどで、高金利を享受するには基本的にベトナムドン建てで預ける必要があります。

現地での収入受取・支払いがスムーズ

ベトナムで働く場合は給与振込に銀行口座が必須であり、口座を作っておけば給与の受け取りや海外からの送金受取もスムーズです。また、日本から現地口座に送金すれば高額の現金を持ち歩かずに済み、為替手数料を節約できるケースもあります。

たとえばWiseやSBI系Goレミットといった海外送金サービスを利用すれば、日本円からベトナムドンへの安価な送金手段として現地口座を指定できます。国内に口座があれば光熱費や税金の支払い、友人への送金もネットで完結し、現地生活の利便性が格段に向上します。

以上のように、高金利と利便性という二つの点でベトナムの銀行口座は非常に魅力的です。
特に長期滞在や現地での経済活動を考えている人にとって、大きなメリットがあります。

ベトナムで銀行口座を開設する方法・必要な条件

外国人(日本人)がベトナムで銀行口座を開設するには、一定の滞在資格が必要です。以前は観光ビザでも口座開設できた時期がありましたが、法律・運用の変更により現在ではワークパーミット(労働許可証)や配偶者ビザ、投資家ビザなど長期滞在資格(通常1年以上)のビザが求められます。短期(数ヶ月)のビザやビザ免除(観光目的45日間滞在など)では基本的に銀行が口座開設を受け付けないので注意しましょう。

主な口座開設の手順は以下の通りです。

必要書類準備
銀行窓口で申し込み
初期入金
口座情報受取
カード・ネットバンキング設定

必要書類の準備

有効なパスポートと長期ビザまたは一時滞在証(レジデンスカード/TRC)を用意します。加えて、現地での住所証明(家賃契約書や公共料金請求書など)や現地の電話番号が必要です。銀行によっては労働契約書の提示を求められる場合もあります。

日本人の場合、住所証明は現地住居の賃貸契約書コピーなどで対応できます。書類は原本を持参し、不備がないよう準備しましょう。

銀行窓口で申し込み

希望する銀行の支店へ行き、口座開設申込書に記入して手続きを行います。申込書はベトナム語または英語表記ですが、英語対応可能なスタッフがいる支店も多いです。

ハノイ・ホーチミン市の都市部では大手銀行の支店なら英語が通じることが期待できます。日系のメガバンク(例:三菱UFJ銀行やみずほ銀行等)は法人向けで個人口座開設は難しいため、現地の大手銀行(後述)を利用するのが一般的です。

初期入金・手数料の支払い

口座開設時に口座開設手数料(約10万ドン=数百円程度)を請求される場合があります。また最低初期入金額が設定されることもありますが、少額で問題ありません。手数料を支払い、パスポート等の原本提示とコピー提出を行ったら、銀行側で口座開設手続きが進められます。

口座情報の受け取り

手続きが完了すると、その場で口座番号やインターネットバンキングの仮パスワードが発行されます。通常、即日で口座開設が完了し口座番号が発行されます。

ただし銀行や支店により、内部承認に最大3~5営業日ほどかかるケースもあります。完了後に通帳(もしくは取引明細票)を受け取り、正式に口座が利用可能になります。

キャッシュカード・ネットバンキングの設定

希望すれば ATMキャッシュカード(デビットカード一体型) を申し込みます。カードの発行には数日~1週間ほどかかり、後日支店で受け取るか郵送されます。受け取ったカードは現地ATMで初期アクティベート(暗証番号の設定など)を行ってから使用します。

また、ネットバンキング利用申込も開設時に同時に行っておくと便利です。初期ログイン用のIDやパスワードが発行されるので、指示に従い設定してください。

日本人に利用者が多い主な銀行

ベトナム在住日本人の間で評判の良い銀行として、ベトコムバンク(Vietcombank)、テックコムバン(Techcombank)、BIDV(ベトナム投資開発銀行) などが挙げられます。これらは支店網やATM網が充実しており利便性が高いです。支店によっては英語対応が可能で、オンラインサービスも洗練されています。

また近年はTimoのようなデジタルバンクも外国人に人気ですが、結局口座維持には有効なビザが必要になるため、基本は上記の大手行を検討すると良いでしょう。

USD口座開設について

ベトナムでは外国通貨口座(USDなど)も開けますが、米ドル口座を開設する際は理由の提示が必要になる場合があります。例えば「給与をドルで受領する(労働契約書で証明)」や「海外からの送金受取用」など正当な理由が求められます。支店によって対応が異なるので、ドル口座希望の場合は事前に確認すると確実です。

ベトナムの銀行口座を利用するデメリット・注意点

メリットが多い一方、ベトナムで銀行口座を開設・維持する際には以下のようなデメリットや注意点もあります。
リスクも理解した上で口座開設を検討しましょう。

内容対策
長期ビザ要件
ベトナムでは短期ビザでの銀行口座開設が原則不可。観光目的だけでは開設できず、就労・投資・配偶者ビザなど1年以上の長期滞在資格が必要。
投資家ビザや配偶者ビザなど必要な資格を確保してから口座開設を進める。
JETROや現地エージェントを通じ、最新ビザ情報を確認しながら手続きを進めるとスムーズ。
ビザ切れによる口座凍結リスク
ビザ有効期限が切れると口座が凍結され、オンラインバンキングや出金が停止される可能性が高い。
期限前に必ずビザ更新するか、滞在を終了する場合は残高を清算・口座解約しておく。
事前に銀行へ連絡し、凍結を防ぐための手続きを確認する。
未使用時の休眠化
一定期間(6~12ヶ月)取引のない口座は休眠扱いとなり、ATMやオンライン操作ができなくなる場合がある。
定期的に小額の入出金や残高確認を行い、アクティブ状態を保つ。
休眠化した場合は身分証を持参して窓口で再開手続きを行う必要がある。
手数料体系
口座維持手数料やデビットカード年会費、他行ATM利用時の手数料、海外送金手数料などが発生。
開設前に各種手数料を確認し、メイン利用するATMや送金サービスを決めてコストを抑える。
月々の維持費や送金回数を見越して最適なプランを選ぶ。
言語の壁
ベトナム語が基本のため、書類や窓口手続きでコミュニケーションが難しい場合がある。
英語対応の支店を選ぶか、日系銀行や日本語デスクを持つ外資系銀行を利用する。
必要に応じて通訳サービスやエージェントを活用し、誤記入や手続きミスを防ぐ。
為替リスク
VND建てで高金利でも為替変動次第で円換算の価値が下がる場合がある。外貨送金にも制限がある。
ドル口座と併用して通貨を分散する、必要に応じてこまめに円転しておくなど、リスクヘッジを考慮。
海外送金の際は銀行窓口での外貨両替手続きが必要になる場合があるため注意。
預金保険限度額
ベトナムの預金保護額は日本より低く、約 1億2500万ドン (約60~70万円)まで。
大口資金を預ける場合は複数の銀行を使い分けたり、信用度の高い国営大手行を選ぶ。
必要に応じて海外送金や外貨預金などでリスクを分散する。

長期ビザがないと開設不可

前述の通り、短期滞在では口座開設そのものができません。観光目的での一時渡航程度では難しく、現地採用や駐在・結婚などで長期滞在資格を得てからでないと銀行は口座開設を認めません。仮に運よく短期ビザで開設できたケースでも、後述の通りビザ期限切れ時に利用停止となるリスクがあります。

したがって投資目的でも、必要に応じ投資ビザや長期ビザ取得を検討する必要があります。

ビザの有効期間切れによる口座凍結リスク

銀行口座の利用は基本的に入国ビザの有効期間内に限られると法令上定められており、ビザや滞在許可証が期限切れになるとその口座での全取引が停止されます。実際、2025年1月以降は有効なビザが登録されていない外国人個人口座はオンラインバンキングへのアクセスが遮断されるとの方針が発表されています。2022年頃から既に、短期ビザで開設された口座が一斉にロックされ、送金機能が停止された事例も報告されています。

このため常にビザを更新し滞在資格を維持するか、帰国やビザ失効時には残高を清算・口座解約しておくことが重要です。

一定期間未使用の口座凍結

長期間口座を放置すると、残高に動きがない口座は凍結される場合があります。銀行によりますが、6~12ヶ月以上取引が無いと休眠口座扱いとなり、ATMカードやオンラインで引き出しができなくなることがあります。その際は身分証を持って窓口で再開手続きをする必要があります。

投資目的で口座を開いたものの、頻繁に使わない場合でも定期的に小額の入出金を行うなどして口座をアクティブに保つようにしましょう。

各種手数料・維持費が発生

ベトナムの銀行口座は維持費が安価ですがゼロではありません。例えば口座維持手数料(月額)やデビットカード年会費が毎年差し引かれる銀行があります。ネットバンキング利用料(月額1万~2万ドン程度)を課す銀行もあり、残高不足で手数料が落とせないとアカウントロックの原因になることもあります。

またATM引出手数料は同行ATMなら1,100ドン(約5~6円)程度と安価ですが、他行ATM利用時は3,300ドン(約15円)程度かかります。海外送金時も1回あたり数千円相当の手数料が別途かかるため、各種手数料体系を事前に確認しておきましょう。

言語・手続きのハードル

現地銀行の手続きは基本ベトナム語で進みます。英文対応可能な支店もありますが、公的書類はベトナム語が主です。
書類記入や窓口交渉に言語の壁を感じる場合、日本語デスクがある銀行(一部の外資系銀行にあり)やエージェントサービスの利用も検討してください。

また、日本とは異なる金融慣習にも注意が必要です。例えばキャッシュカード受取後に現地ATMで有効化する必要があったり、初回ログインは店舗でしかできないなど銀行ごとに独特のルールがあります。案内に従い確実に手続きを踏みましょう。

為替リスク・通貨規制

VND建てで高金利を享受できても、為替変動によっては円換算の資産価値が目減りするリスクがあります。ベトナムドンは長期的には緩やかな下落傾向(インフレ率相当)にあるため、高金利と相殺しても為替差損益が発生する可能性は念頭に置くべきです。

また、ベトナムは外貨持ち出しに規制があり、ベトナムドンを海外に送金することは制限されています。国外送金する際は、一度銀行で米ドル等の外貨に両替し、所定の手続きを経て送金する必要があります。ネットバンキングでは外貨の海外送金ができないなど制約がありますので、大口送金時は銀行窓口での手続きが必要になります。

預金保護制度の限界

万一銀行が破綻した場合の預金保険による保護限度額は日本に比べ低額です。ベトナムの預金保険は預金者一人当たり最大約1億2500万ドン(約60~70万円)までしかカバーされません。日本のように1,000万円まで保護されるわけではないため、巨額の資金を預ける際は銀行の信用リスクも考慮しましょう。大手国営銀行は比較的信頼性が高いものの、公的保護が限定的な点はデメリットと言えます。

以上の点を踏まえると、口座開設には一定のハードルと管理上の注意が伴います。
ただし、適切に準備・対応すれば大きな問題は避けられますので、リスクを理解した上で活用しましょう。

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

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