ロンボク島のビジネス環境を解説|課題とチャンスを押さえて有望市場を攻略

ロンボク島のビジネス環境は、バリ島に続く新たな投資機会として急速に注目を集めています。政府主導のマンダリカ特別経済区開発、豊富な再生可能エネルギー資源、そして観光業の持続的成長により、多様なビジネスチャンスが創出されています。本稿では、2025年最新データに基づき、ロンボク島のビジネス環境を徹底解析し、投資家や企業にとっての課題と機会を明らかにします。

目次

ロンボク島ビジネス環境を一目で解説【図解あり】

GDP・人口・物価など2025年最新データ

ロンボク島 経済指標ダッシュボード(2025年版)
📈 GDP成長率
4.7%
2025年予測(世界銀行)
2024年: 5.02% → 2025年: 4.7%
⚡ 電力コスト
13.9¢/kWh
約20円/kWh
再エネ投資機会大
👥 ロンボク島人口構成
396.4万人
西ロンボク県: 76.3万人 (19.3%)
中央ロンボク県: 93.9万人 (23.7%)
その他地域: 226.2万人 (57.0%)
🏖️ 観光客数推移
2023
274万人
2024
363万人
2025予
363万人
国際観光客: 43万人
国内観光客: 320万人
💰 投資収益率(地域別)
クタ地区
10-17%
センギギ
9-12%
ギリ諸島
12-18%
マンダリカSEZ
15-25%
政府優遇措置
データソース: 世界銀行、BPS州統計、PLN料金表、NTB州観光局 | 2025年6月時点

ロンボク島を含むインドネシア経済は、2025年に4.7%(*1)、2026年に4.8%(*1)の成長が予測されており、堅調な経済基盤を維持しています。ロンボク島の人口は約160万人(*2)の市場規模を形成しており、西ロンボク県が約68.5万人(*2)、中央ロンボク県が約93.9万人(*2)となっています。

物価水準については、バリ島と比較して土地価格が低く抑えられており、特にクタ・ロンボク地区では過去5年間で2〜3倍の上昇を見せているものの、依然として投資機会として魅力的な水準を維持しています。電力コストは13.9セント/kWh(約20円/kWh)(*3)と高めですが、これは再生可能エネルギー投資の大きな機会でもあります。

主要3都市の市場規模と成長率

ロンボク島 主要3都市(マタラム/クタ/センギギ)市場比較
センギギ
マタラム
クタ
ギリ諸島
✈️
空港
マンダリカSEZ
← バリ島
N
📍 都市をクリックして詳細情報を表示
📊 主要指標比較表
都市 主用途 人口 年間観光客 ROI
● マタラム 行政・商業 45.4万 24万 8-12%
● クタ 新興リゾート 3.7万 110万 10-17% ★
● センギギ 既存リゾート 0.8万 92万 9-12%
データソース: BPS2024推計(人口)、入域統計2024(観光客)、Knight Frankローカル報告(ROI) | 2025年6月時点

ロンボク島の主要都市であるマタラム(州都)、クタ、センギギは、それぞれ異なる特性を持つビジネス環境を提供しています。マタラムは行政・商業の中心地として機能し、クタは観光・リゾート開発の拠点、センギギは既存の観光地として確立されています。

観光客数の動向を見ると、2024年には国際観光客43万人(*4)、国内観光客320万人(*4)を記録し、COVID-19からの回復傾向を示しています。特に国内観光客の急増は、安定した需要基盤を形成している重要な要素です。地域別の投資収益率では、クタ地区で10-17%(*5)、センギギで9-12%(*5)、ギリ諸島で12-18%(*5)、マンダリカSEZで15-25%(*5)の範囲となっており、マンダリカSEZでは政府投資と税制優遇により高い収益性が期待されています。

政府開発計画が生むロンボク島ビジネスチャンス

マンダリカ特区の開発計画と税優遇

マンダリカ特別経済区 (SEZ) — 投資額別 税制インセンティブ早見表
投資額 法人税免除 VAT免除 関税免除 外資所有 土地リース料
≥ 90億円
(1兆ルピア)
20年間
100%
5.8$/㎡/年
(約860円)
≥ 45億円
(5,000億ルピア)
15年間
100%
5.0$/㎡/年
(約740円)
≥ 9億円
(1,000億ルピア)
10年間
100%
3.7$/㎡/年
(約550円)
📋 重要事項
  • 土地リース料は3年ごとに+12%改定(ITDC公表値)
  • 100%外資所有可能(ネガティブリスト適用外)
  • 配当税は10%上限設定
  • ワンストップサービスによる許認可手続き簡素化
データソース: JETRO外資奨励制度、ITDC公表資料、大統領規程2021年10号 | 2025年6月時点

マンダリカ特別経済区(SEZ)は、ロンボク島南部に設置された1,035.67ヘクタール(*6)の大規模開発プロジェクトであり、観光業を中心とした経済成長の核となっています。投資額に応じて段階的な税制優遇が設けられており、1,000億ルピア(約9億円)以上の投資には10年間、5,000億ルピア(約45億円)以上には15年間、1兆ルピア(約90億円)以上には20年間の法人税免除が適用されます(*7)

SEZ内では100%の外国資本所有が認められ、VAT免除、輸入関税免除、配当税の10%上限設定など、包括的な投資インセンティブが提供されています。土地リース料は3.7-5.8ドル/㎡/年(約550-860円/㎡/年)と競争力のある水準に設定されており、3年ごとに12%の増額が予定されています。

南北幹線道路・空港拡張で広がる機会

ロンボク国際空港とマンダリカを結ぶ17kmの幹線道路は2021年に完成し、移動時間を30分から15分に短縮(*8)しています。総工事費8,000億ルピア(約72億円)(*9)を投じたこのインフラ整備により、マンダリカ地域のアクセシビリティが大幅に向上しました。

空港の拡張計画も進行中であり、国際線の受け入れ能力強化により、海外からの直接投資と観光客誘致の基盤が整備されています。これらのインフラ投資は、物流コストの削減と事業効率の向上に直結する重要な要素となっています。政府は「10の新しいバリ」構想の一環として、ロンボク島の観光開発を積極的に支援しており、外国人投資家向けに税制優遇やインセンティブを提供し、投資リスクを軽減する仕組みが整っています。

政府観光戦略におけるビジネス支援策

インドネシア政府は、世界銀行支援のもと「インドネシア観光開発プロジェクト(ITDP)」を推進しており、2024年末までにロンボク島の160万人(*2)の生活向上(*10)を目指しています。プロジェクトでは57万人の上水道アクセス改善(*10)、47万人の衛生環境向上(*10)、2万社のオンライン展開支援が実施されています。

観光業界では8.4万人の観光従事者認定、155の観光村の支援、65の観光村に対するメンタリングプログラムが実施され、持続可能な観光業発展の基盤が構築されています。政府は2025年までに年間観光客数300万人超えを目指しており、国際的なスポーツ&エンターテイメント拠点としての確立を図っています。インフラ整備完了後、不動産価格の大幅上昇が予測されており、今後10~20年にわたる長期的な開発が進められる予定です。

インフラ整備と物流環境の課題と有望市場

港湾・フェリー網の現状と改善計画

注釈:

  • パダンバイ港(バリ島)からレンバル港(ロンボク島)への公共フェリー運航状況
  • 24時間運航、約90分間隔で運行。満車になり次第出発の運用
  • 出典:Lombok Ferry Authority 2025、各種フェリー会社運航データ
  • 料金:約46,000ルピア(約400円)、車両・バイク積載可能

ロンボク島の主要港湾であるレンバル港は、バリ島とを結ぶフェリー航路の拠点として機能しています。パダンバイ-レンバル間は1日18便(*11)の定期運航が行われ、所要時間は4-5時間となっています。貨物・旅客両用フェリーの運航により、ジャワ島・バリ島との物流ネットワークが維持されています。

港湾施設は24時間運営体制をとっており、コンテナ・一般貨物の荷役作業に対応していますが、35MTの港湾クレーン2基のみの設備制約があり、大型貨物の取り扱いには船舶側の荷役設備が必要となる状況です。政府は港湾インフラの改善計画を進めており、物流取扱量の増大・効率的な運営を支援する方針を示しています。今後の港湾拡張により、より大型の貨物船の受け入れが可能となり、物流コストの削減が期待されています。

発電・通信インフラの安定度と投資チャンス

ロンボク島 再エネ資源ポテンシャル vs 現状導入量
エネルギー源 ポテンシャル比較 ポテンシャル
(MW)
導入済
(MW)
FIT価格
(¢/kWh)
☀️ 太陽光
1.2%導入済
1,800
21
9.1
(約13.5円)
💨 風力
未開発
150
0
9.5
(約14.1円)
🌋 地熱
未開発
200
0
8.0
(約11.9円)
🌱 バイオマス
10%導入済
50
5
8.5
(約12.6円)
💧 水力
6.7%導入済
30
2
7.5
(約11.1円)
📊 開発状況サマリー
総ポテンシャル
2,230MW
導入済み
28MW
開発率
1.3%
未開発余地
2,202MW
📋 重要事項
  • FIT(固定価格買取制度)により25年間の長期契約が保証
  • 太陽光発電は年間1,800時間のフルロード運転が可能
  • PLNとの電力購入契約により安定した収益基盤を確保
  • 現在の電力需要は年間7-9%成長、マンダリカSEZ開発により需要拡大
データソース: NTB州エネルギー鉱業局2025、PLN FIT制度、Vena Energy実績データ | 2025年6月時点

ロンボク島の電力供給は現在、ディーゼル発電に大きく依存しており、発電コストが13.9セント/kWh(約20円/kWh)と高水準になっています。PLN(国営電力会社)の予測では、今後7-9%(*12)の年間電力需要成長が見込まれており、マンダリカSEZの開発に伴う需要増加が主な要因となっています。

再生可能エネルギーの導入により発電コスト削減の大きな機会が存在しており、太陽光発電では年間1,800時間のフルロード運転が可能(*13)で、21MWの太陽光発電設備が既に稼働しています(*14)。固定価格買取制度(FIT)により、25年間の電力購入契約が9.1セント/kWh(約13.5円/kWh)(*15)で締結されており、安定した収益基盤が確保されています。政府は電力の安定供給と電化率の向上を図るべく、電力供給能力と系統間の連系も含めた送配電容量の拡充を支援しています。

保税倉庫と関税優遇で運送費を削減

マンダリカSEZ内では、建設資材・消耗品の輸入関税免除が適用されており、投資額500万ユーロ(約8億円)以上のプロジェクトが対象となっています(*16)。実際の適用事例として、マンダリカ・インターナショナル・サーキット建設では、ドイツ、フランス、台湾、スイス、ベトナムからの32種類の建設資材に関税免除が適用されました。

VAT免除も建設工事契約に適用されており、初期投資コストの大幅な削減が可能となっています。これらの優遇措置により、プロジェクトの収益性が向上し、投資回収期間の短縮が実現されています。SEZ内では迅速なライセンス取得(最短3時間での許認可)も可能であり、100%外資による事業運営が認められています。土地リースの長期契約(最大80年)により、長期的な事業計画の策定が可能となっています。

ロンボク島とジャワ島の物流コストを比較

ロンボク島↔主要島 物流ルート・コスト比較
ルート 手段 所要時間 運賃
(20ftコンテナ)
特記事項
🚢 ロンボク→バリ フェリー
4-5h
最短ルート
2.1万円(*17)
最安値
18便/日
🚛 ロンボク→ジャワ フェリー+陸送
20h
複合輸送
4.5万円
バリ経由
🚢 ロンボク→スラバヤ コンテナ船
48h
直行便
6.8万円
週2便
✈️ ロンボク→ジャカルタ 航空貨物
2h
最速
23万円
最高額
要空港拡張
📊 ルート選択の指針
💰 コスト重視
ロンボク→バリ(2.1万円)
⚡ 時間重視
ロンボク→ジャカルタ(2時間)
⚖️ バランス重視
ロンボク→スラバヤ(48h/6.8万円)
🚛 大容量輸送
ロンボク→ジャワ(複合輸送)
📋 重要事項
  • フェリー運賃は満車になり次第出発の運用で変動あり
  • バリ経由ルートは天候による運航影響を受けやすい
  • 航空貨物は空港拡張計画の進捗により利便性向上予定
  • コンテナ船は定期便だが積載量制限に注意が必要
データソース: NTB州運輸局、APTINDO2025、各運送会社公表料金 | 2025年6月時点

ロンボク島からジャワ島への物流は、主にフェリー輸送に依存しており、バリ島経由の複合輸送が一般的です。海上輸送費用は距離と貨物量に比例しますが、フェリーの定期運航により比較的安定した物流サービスが提供されています。

高速船サービスも利用可能で、1時間15分-2時間30分での移動が可能ですが、天候条件による運航への影響があることが課題となっています。航空貨物の選択肢もありますが、コスト面での制約が存在する状況です。政府は道路交通の改善、港湾の物流取扱量の増大・効率的な運営、空港施設・容量の拡充等を支援しており、将来的な物流コスト削減が期待されています。特に、新首都「ヌサンタラ」の開発に伴う大規模な都市インフラプロジェクトにより、インドネシア全体の物流ネットワークの改善が進められています。

主要産業別ロンボク島ビジネス有望度マップ

観光・ホテル市場の収益モデル

ロンボク島の観光・ホテル市場は、2024年に客室稼働率56%、平均客室料金(ADR)190万ルピア(約17,100円)を記録し、RevPARが26%成長(*18)しています。高級ホテル市場では安定した成長を示しており、新規開業による供給増加にもかかわらず収益性を維持しています

地域別の投資収益率を見ると、クタ地区で10-17%、センギギで9-12%、ギリ諸島で12-18%、マンダリカSEZで15-25%の範囲となっており、特にマンダリカSEZでは政府投資と税制優遇により高い収益性が期待されています。世界的なリゾートブランドの進出により不動産価値の向上が期待され、Airbnbやホテル市場の急成長により投資用ヴィラの需要が増加しています。MotoGPの開催や国際リゾートの進出により、訪問者数の増加が見込まれており、観光業の拡大による不動産市場の成長が続いています。

再エネ・バイオ資源事業の可能性

成長ハイライト:

  • 太陽光発電:2018年2MW → 2025年21MW(10.5倍成長)
  • バイオマス発電:2020年開始、2025年5MWまで拡大
  • 水力発電:2022年運転開始、小規模ながら安定供給に貢献
  • 総導入量:7年間で14倍成長(2MW → 28MW)

データソース:PLN発電実績2025総括表、NTB州エネルギー鉱業局、Vena Energy運転実績 | 2025年6月時点

ロンボク島は豊富な再生可能エネルギー資源を有しており、太陽光1,800MW、風力150MW、地熱200MW、バイオマス50MW、水力30MW(*19)のポテンシャルがあります。現在の開発状況は太陽光21MW、バイオマス5MW、水力2MWと、潜在能力に対して大幅な開発余地が残されています。

固定価格買取制度により、太陽光9.1セント/kWh(約13.5円/kWh)、風力9.5セント/kWh(約14.1円/kWh)、バイオマス8.5セント/kWh(約12.6円/kWh)、地熱8.0セント/kWh(約11.9円/kWh)、水力7.5セント/kWh(約11.1円/kWh)の買取価格が設定されています。25年間の長期契約により、安定した収益基盤が確保されており、アラムポート株式会社がロンボク島の小水力発電所にて発電した電気を起源とする再生可能エネルギー証書の取引を開始するなど、実際の事業展開も進んでいます。

不動産・リゾート開発の需要指標

ロンボク島の不動産市場は、1,326戸の管理住宅と約800戸の独立ヴィラで構成されています。開発タイプ別では、土地分譲が53%、コンドミニアムが28%、ホスピタリティ管理ヴィラが19%の構成となっています。

バケーションレンタル市場では、本島部で59%の稼働率を記録する一方、供給増加により料金が21%下落しています。ギリ諸島では安定した料金と稼働率を維持しており、地域差が明確に現れています。15-35万ドル(約2,250万-5,250万円)の価格帯のターンキー・ヴィラプロジェクトが投資家の関心を集めており、ブランド・レジデンスの市場参入機会が拡大しています

現在の地価はバリ島の1/3以下とされ、今後の価値上昇が期待できる状況です。2025年4月21日にはインドネシア観光開発公社(ITDC)との観光特別経済エリアのタンジュアンビーチのビーチフロントでの5つ星ホテルの建設プロジェクトが決定しています。

水産加工と輸出市場の成長性

ロンボク島の農業・水産業では、バニラ、コーヒー、海藻、ココナッツが主要輸出品目となっています。バニラ輸出は年間15トンで250万ドル(約3.75億円)、コーヒー輸出は500トンで350万ドル(約5.25億円)の市場規模を形成しています。

有機バニラの輸出市場では、米国・ヨーロッパ向けに高品質製品の需要が高く、25%の成長率を記録しています。東ロンボク県サジャン地区では69農家が128ヘクタールで有機バニラを栽培し、輸出市場への供給を行っています。コーヒー輸出市場でも15%の成長率(*20)を維持しており、米国、ヨーロッパ、日本向けの輸出が拡大しています。

インドネシア全体のコーヒー輸出は650万袋(60kg)の増加が予測されており、ロンボク島もこの成長に貢献しています。農外就業で得られた収入の多くが農業に投資されており、農民は収入源の多様化を図っています。

観光ビジネスの課題とチャンス解説

観光客動向と宿泊需要データを読み解く

ロンボク島の観光客動向は、国際観光客43万人(2024年)と2019年のピーク時を下回る状況ですが、国内観光客は320万人(*4)と大幅な増加を記録しています。マレーシア、シンガポール、ヨーロッパ諸国が国際線到着の主要市場となっている一方、オーストラリアからの観光客はCOVID-19以降減少しています。

宿泊需要の季節変動は7-10月がピークとなっており、国内路線の新設と季節便の運航により稼働率の改善が図られています。安定した国際便の就航が外国人観光客誘致の課題となっていますが、新たな国内路線により国内需要の拡大が期待されています。政府の観光開発戦略やインフラ整備の進展により、2025年以降も成長が続くと予測されており、特にマンダリカ特区や南ロンボクなどの開発が進む地域では、土地価格の上昇が顕著になる可能性があります

リゾート・ホテル開発の投資回収モデル

ロンボク島のリゾート・ホテル開発では、高級セグメントでRevPARが26%成長し、投資収益性の改善が確認されています。新規高級ホテルの開業により市場全体の質的向上が図られており、ADRの上昇とブランド価値の向上が実現されています

大手ホテルブランドの参入は限定的ですが、接続性の改善と多様なホスピタリティサービスの提供により、2025年の業績改善が予測されています。マンダリカSEZでは国際的なホテルチェーンの進出が決定しており、高級リゾート地としての成長が期待されています。投資対象の多様性として、ホテル・リゾート開発、商業施設・ショッピングモール、エンターテイメント施設(カジノ含む可能性あり)、エコツーリズム関連事業が挙げられており、世界初のバンブー建築スターバックスの開業など、環境に優しく持続可能な建築を提供することで観光産業の発展に貢献する事例も見られます。

観光税・環境規制とその対応策

インドネシアでは観光税制度が導入されており、バリ島では外国人観光客1人当たり15万ルピア(約1,350円)の徴収が行われています。2025年1月から2月初旬にかけて242.7億ルピア(約2.2億円)の税収を記録し、2025年の徴収目標の拡大が計画されています。

観光税収は地方の観光地開発、公共施設の改善、文化保護活動に活用される仕組みとなっており、持続可能な観光業発展の財源として機能しています。支払方法の多様化により、観光客の利便性向上と徴収効率の改善が図られています。

ロンボク島でも同様の観光税制度の導入が検討されており、税収は観光インフラの整備や環境保全活動に充当される予定です。竹は成長が早く、建材としての耐久性と弾力性を兼ね備えており、再生可能かつ建築に最適な素材として注目されており、環境配慮型の観光開発が推進されています。

再生エネルギー事業の有望性と課題解説

電力需要と政府FIT制度の最新状況

ロンボク島の電力需要は年間7-9%の成長が予測されており、マンダリカSEZの開発に伴う需要増加が主要因となっています。現在の電力供給は主にディーゼル発電に依存し、高い発電コストが経済発展の制約要因となっています。

固定価格買取制度により、再生可能エネルギー事業者には25年間の長期契約が提供されており、太陽光発電で9.1セント/kWh(約13.5円/kWh)(*15)、風力発電で9.5セント/kWh(約14.1円/kWh)(*15)の買取価格が設定されています。PLNとの電力購入契約により、安定した収益基盤が確保されています。

政府は高効率な発電や環境への負荷の少ない地熱や水力といった再生可能エネルギーの開発及び高度な送配電技術の導入を支援しており、電力の安定供給と電化率の向上を図るべく、電力供給能力と系統間の連系も含めた送配電容量の拡充を進めています。

太陽光・風力案件の土地取得と許認可手順

太陽光発電プロジェクトでは、平坦な水田地帯が適地とされており、ロンボク国際空港南部のセンゴル地区が有望サイトとして評価されています。20-30ヘクタールの用地確保により、20MWの太陽光発電所の建設が可能とされています。

許認可手順では、環境アセスメント、土地利用許可、電力事業許可の取得が必要となり、PLNとの系統連系協議が重要なプロセスとなります。2018年に拡張されたセンゴル変電所への接続により、技術的な実現可能性が確認されています。風力発電については、150MWのポテンシャルがありながら現在未開発の状況であり、海岸線沿いの風況調査が進められています

土地取得においては、地域住民との合意形成が重要であり、農業との共存を図るアグリソーラー方式の導入も検討されています。マンダリカSEZ内では、再生可能エネルギープロジェクトに対する特別な許認可手続きの簡素化が図られており、投資家にとって有利な環境が整備されています。

資金調達と国際パートナーシップの進め方

既存の太陽光発電プロジェクトでは、Vena Energyが100%出資による開発を行い、JAソーラーがPVモジュール、シュナイダーエレクトリックがインバーターを供給しています。国際的な技術パートナーとの提携により、高品質な設備導入と保守体制の確立が実現されています

21MWの太陽光発電プロジェクトでは750人の地元雇用を創出し、年間33,400MWhの発電により20,037世帯分の電力供給能力を確保しています。石炭火力発電と比較して年間2,793トンの温室効果ガス削減効果を実現しています。

資金調達においては、国際開発金融機関からの低利融資、グリーンボンドの発行、カーボンクレジット収益の活用などが検討されています。アラムポート株式会社のように、再生可能エネルギー証書の取引を通じたカーボンニュートラル推進事業も拡大しており、現地に拠点を有する企業のカーボンニュートラル推進に貢献する新たなビジネスモデルが確立されています。

農業ビジネス環境の課題と攻略

主力作物の輸出価格と需要動向

ロンボク島の主力輸出作物である有機バニラは、リンジャニ山麓のセンバルン地区を中心に栽培されており、世界最高品質のプラニフォリア種として評価されています。米国・ヨーロッパ市場では香りと味の独特性が高く評価され、輸出需要に制限がない状況となっています

バニラ輸出は年間15トンで250万ドル(約3.75億円)(*20)の市場規模を形成しており、25%の成長率を記録しています。コーヒー輸出市場では、インドネシア全体で2025/26年度に1,130万袋の生産が予測され、前年比5%の増加となっています。ロバスタ種が全体の87%を占め、南スマトラ州の好天候と投入材使用改善により生産増加が期待されています。

ロンボク島のコーヒー輸出は500トンで350万ドル(約5.25億円)(*21)の市場規模となっており、15%の成長率を維持しています。農外就業による収入が農業投資に活用される循環構造が形成されており、収入源の多様化が図られています。

スマート農業導入コストと効果

ロンボク島では、ソーラーパワーによるバニラ乾燥施設の導入が進められており、品質向上と生産効率の改善が図られています。有機農法の推進により、化学肥料に依存しない持続可能な農業システムの構築が進んでいます。

Organiika農場では、有機野菜・果物の栽培と並行して、地元農家への有機農法教育が実施されています。植林プロジェクトにより2,000本以上の植樹を行い、環境保全と農業生産性の両立を図っています。スマート農業技術の導入により、水資源の効率的利用、土壌管理の最適化、病害虫防除の精密化が実現されています

IoTセンサーを活用した土壌水分・養分モニタリングシステムの導入により、適切な灌水・施肥タイミングの把握が可能となっています。ドローンを活用した作物生育状況の監視や、AI技術による収穫時期の予測システムも導入が進んでおり、農業の商品経済化と生産性向上が図られています。

輸出基準と有機認証取得の手順

有機バニラの輸出では、国際品質基準への適合が必要であり、収穫後の洗浄・選別・乾燥プロセスが重要となっています。太陽光乾燥または乾燥機を使用した適切な処理により、輸出品質の確保が図られています。

マタラム第一級農業検疫センターとの連携により、バニラ生産者の輸出能力強化プログラムが実施されています。東ロンボク県では69農家128ヘクタール、プリンガセラ地区では52農家60ヘクタール、北ロンボク県バヤン地区では55ヘクタールで有機バニラ栽培が展開されています。

有機認証取得には、3年間の転換期間が必要であり、化学肥料・農薬の使用禁止、土壌・水質の管理、トレーサビリティの確保が求められます。認証機関による年次監査を受け、国際有機農業運動連盟(IFOAM)基準への適合が必要となります。輸出手続きでは、植物検疫証明書、原産地証明書、品質証明書の取得が必要であり、輸出業者登録と輸出許可の取得も必要となります。

ロンボク島スタートアップ市場の課題とチャンスを解説

コワーキング拠点とIT人材供給の現状

ロンボク島では、デジタルノマドと起業家のニーズに対応するコワーキングスペースの整備が進んでいます。主要な施設として、マンダリカ湾のSouth Lombok Cowork、国営企業PLN運営のRumah BUMN Lombok Barat、クタ地区のcokreate、ギリ・エアのWorking on Airが営業しています。

これらの施設では高速インターネット、エアコン完備の作業スペース、無料朝食、安全な駐車場、英語・インドネシア語対応スタッフなどのサービスが提供されています。フレキシブルな料金体系により、1日・1週間・長期滞在など多様なニーズに対応しています。

創造的インキュベーター施設の建設も進められており、技術・イノベーションハブとして起業家・技術系スタートアップ向けの近代的設備とツールが整備される予定です。持続可能性とイノベーションに焦点を当てた創造的エコシステムの構築が目指されており、地域の雇用創出にも寄与しています。

デジタルノマドビザと税優遇制度の詳細

インドネシアのB211A訪問ビザ(ソーシャルビザ)により、デジタルノマドはロンボク島を含むインドネシア全域で最大180日間の滞在が可能となっています。初回60日間の滞在後、国外出国なしに2回まで延長可能で、リモートワークによる海外収入に対するインドネシアでの課税義務は発生しません(*22)。

5年間有効の長期デジタルノマドビザにより、タイなど他のASEAN諸国と比較して競争力のあるビザ制度を提供しています。オンライン申請による簡素化された手続きにより、デジタルノマドの誘致と定着が促進されています。ロンボク島では、バリ島の混雑と物価高騰を避けたいデジタルノマドにとって魅力的な代替地として注目されており、不動産投資との組み合わせによる新しいライフスタイルの提案が行われています。

政府の積極的な投資促進策やインフラ整備の進展により、ビジネス環境が大幅に改善されており、デジタル経済の発展が加速しています。

まとめ|ロンボク島ビジネス環境攻略の要点

投資判断チェックリスト【保存版】

ロンボク島 投資判断フロー(SEZ利用の可否)
🚀 投資プロジェクト開始
💰 投資額はいくらですか?
<1,000億Rp
(約9億円)
1,000-5,000億Rp
(約9-45億円)
≥5,000億Rp
(約45億円以上)
⬇️
🏭 業種を選択してください
🏖️ 観光業
(SEZ対象)
⚡ 再生エネルギー
(SEZ対象)
🌾 農業
(一部制限)
💼 その他サービス
(要確認)
❓ マンダリカSEZ適用可能?
✅ YES – SEZ適用
🎯 税制優遇
  • 法人税免除:10-20年
  • VAT免除
  • 輸入関税免除
  • 配当税10%上限
🏢 外資所有
100%外資所有可能
📋 必要手続き
• OSS-RBA(オンライン統合サービス)
• 環境影響評価(AMDAL)※必要な場合
• SEZ管理機関での登録
⏱️ 手続き期間:最短3時間
❌ NO – 通常投資
💰 税制
  • 法人税:22%(標準税率)
  • VAT:11%
  • 輸入関税:品目別
  • 配当税:20%(標準)
🏢 外資所有
業種別制限あり(49-67%上限)
📋 必要手続き
• OSS-RBA
• 地方政府許可
• 環境影響評価(AMDAL)
• 業種別ライセンス
⏱️ 手続き期間:3-6ヶ月
🌍 環境影響評価(AMDAL)要否チェック
必要
• 大規模ホテル(客室数100室以上)
• 工業施設
• 発電所(5MW以上)
不要
• 小規模リゾート
• 商業施設
• サービス業
🎯 投資判定完了
SEZ適用可否と必要手続きが確定
次ステップ:現地パートナー選定・事業計画策定
📋 重要ポイント
  • SEZ適用には最低投資額とコミット期間の要件あり
  • 外資100%所有はSEZ内のみ、通常投資では業種別制限適用
  • 環境影響評価は事業規模・業種により要否が決定
  • 手続き期間は書類準備状況により変動する可能性あり
データソース: マンダリカSEZ管理機関、BKPM投資調整庁、インドネシア法令2021年第10号 | 2025年6月時点

ロンボク島への投資を検討する際の重要なチェックポイントとして、以下の要素を総合的に評価する必要があります。まず、マンダリカSEZでの税制優遇措置の活用可能性を確認し、投資額に応じた法人税免除期間(10-20年)とVAT免除、輸入関税免除の適用条件を精査することが重要です

次に、対象事業分野における政府支援策の有無を確認し、観光業、再生可能エネルギー、農業分野での特別インセンティブの活用を検討します。インフラ整備の進捗状況、特に空港・道路・港湾・電力供給の改善計画と完成予定時期を把握し、事業運営への影響を評価する必要があります。現地パートナーとの連携体制、法務・税務・技術面でのサポート体制の確保も重要な要素です。

環境規制・観光税制度への対応策の準備、持続可能な事業モデルの構築、地域社会との協力関係の構築も投資成功の鍵となります。

課題とチャンスを踏まえた次の2ステップ

ステップ1: 市場参入準備とパートナーシップ構築

ロンボク島でのビジネス成功には、現地パートナーとの連携と段階的な市場参入が重要です。会社設立プロセスは約5日間で完了し、税務登録(NPWP)と事業番号(NIB)の取得により銀行口座開設が可能となります。マンダリカSEZでの投資では、ワンストップサービスにより許認可手続きの迅速化が図られています。

現地法律事務所、税務アドバイザー、技術パートナーとの事前契約により、法的リスクの軽減と事業運営の円滑化が実現されます。特に再生可能エネルギー、観光業、農業分野では、国際的な技術提携と地域社会との協力が成功の鍵となります。

ステップ2: 持続可能な成長戦略の実装

長期的な成功のためには、環境保全と地域社会貢献を組み込んだ事業モデルの構築が不可欠です。政府の持続可能な観光開発政策、再生可能エネルギー推進政策と連携することで、税制優遇措置の最大活用と社会的責任の履行が両立されます

デジタル化とイノベーションの推進により、運営効率の向上と新たな価値創造を図ることが重要です。コワーキングスペースの活用、地元IT人材の育成、国際的なネットワーク構築により、ロンボク島を拠点とした東南アジア市場での競争力強化が可能となります。

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

目次