2025年版:フィリピンの入国ビザ手続き完全ガイド|日本人が知っておきたい注意点

目次

フィリピン不動産投資とビザの重要性

不動産投資ブームと長期滞在ニーズ

フィリピンの不動産市場は、首都マニラを中心に高層コンドミニアム開発が進行し、近年ではセブやダバオといった地方都市も急速に成長しています。2024年第3四半期のデータによると、フィリピンの住宅価格は前年同期比2.3%下落し、特にマニラ首都圏のコンドミニアム価格は前期比5.3%の下落が見られました。

一方で、首都圏外のコンドミニアム価格は上昇傾向にあり、地方都市での需要増加が示されています。

「現地にしばらく滞在しながら物件管理・運営を行いたい」という投資家が増加しています。 観光ビザ(9(a)査証)だけでは短期滞在にしか対応できず、投資ビザやリタイアメントビザのような長期滞在が可能なビザが鍵となるのです。

2024年第3四半期時点でのフィリピン不動産価格推移グラフ

上図はフィリピン全体の不動産価格指数を示したものです。
都心部・地方都市それぞれの動向を把握する参考になります。

ビザ制度の最新アップデート:E-Visa導入

フィリピン政府はデジタル化推進の一環として、観光・短期ビザ向けE-Visa(電子ビザ)の導入を進めています。2025年現在、一部国籍への試験運用段階ですが、今後日本人もオンライン申請が可能になる見込みです。

ただし、投資家向けの特別ビザ(SRRVやSIRVなど)は依然として従来の申請プロセスが中心となるため、早期に渡航を予定している方は最新情報を随時確認しましょう。

フィリピンの主要ビザ一覧と投資家が注目すべきカテゴリー

下記に、代表的なビザを表にまとめてみました。自分の投資目的や活動期間、年齢などに合わせて選ぶのがポイントです。

ビザ名称対象者滞在期間主な要件・特徴
観光ビザ(9(a))短期旅行者最長30日(ビザ免除)
延長で最長36ヶ月
日本人は基本ビザ免除で30日滞在可。投資家の初回下見などに利用。
特別投資家居住ビザ(SIRV)21歳以上、最低75,000USD以上の投資無期限(投資継続条件)フィリピン経済への投資継続が条件。不動産そのものへの直接投資は不可。
特別居住退職者ビザ(SRRV)50歳以上(実質)無期限一定の預託金要件(1〜5万USD)あり。不動産購入に資金を転用可能で人気。
9(g) 就労ビザ現地法人に雇用・駐在される外国人在職期間に応じて更新雇用主(会社)を通じて申請。投資家本人が設立した会社の役員として申請可。
クォータビザ(Quota Visa)資産・技能があり年間枠50名の上位永住権的地位厳しい審査基準。富裕層投資家向け。

フィリピンビザの簡易フローチャート

短期滞在
(30日以内)
長期滞在
(投資・就労・退職等)

短期渡航なら「観光ビザ(9(a))」

※ ビザ免除枠で最大30日間。
更に延長で最長36ヶ月まで滞在可。


長期ビザの選択

特別投資家居住ビザ(SIRV)

最低75,000USD以上を投資することで長期居住資格が得られます。
※不動産そのものへの直接投資は対象外。

特別居住退職者ビザ(SRRV)

50歳以上(実質)で預託金を指定銀行に預ける必要があります。
不動産購入に資金転用が可能。長期的にフィリピンで暮らす方に最適です。

9(g) 就労ビザ

フィリピンの現地法人に就職・赴任する外国人向け。
投資家が自社を設立して役員となる場合も取得可能です。

クォータビザ(Quota Visa)

年間50名の枠しかない希少なビザ。
大規模投資を検討する富裕層に向いています。


自分の滞在目的や条件に合ったビザを選び、適切に申請しましょう

観光ビザと長期ビザの使い分け

  • 観光ビザ(9(a)): ビザ免除枠で30日入国 → 現地調査やデューデリジェンスを行う
  • 長期ビザ(SRRV/SIRV/9(g)など): 実際に不動産購入・事業運営をスタートする段階で申請

この流れでステップを踏めば、突然の大きな投資リスクを抑えつつ、現地事情を確認できます。

特別居住退職者ビザ(SRRV)の徹底解説:50歳以上に人気の理由

SRRVの最新要件とメリット

SRRV(Special Resident Retiree’s Visa)はフィリピン退職庁 (PRA) が管轄する特別ビザで、申請者とその扶養家族にほぼ永住権に近い居住資格を与えます。

  • 年齢要件: 2025年現在、実質的に50歳以上が対象
  • 預託金: 年金受給者なら1万USD、年金がない場合は2万USD以上をフィリピンの指定銀行に預ける
  • 家族帯同: 配偶者と20歳未満の子供2名まで追加預託金でカバー可能
  • 再入国自由: 何度でも出入国が可能
  • 就労・就学可: フィリピン退職庁の承認を得れば雇用・開業も許可
  • 不動産投資との連動: 預託金をコンドミニアムの購入資金に転用できる(「SRRVクラシック」プラン)

SRRVを取得すると、毎回の入国ビザ申請が不要になり、永住移住に近い形で生活できます。 特に不動産投資と組み合わせやすい点が注目され、日本人シニア投資家からの需要が高まっています。

フィリピン退職者ビザ(SRRV)申請フローチャート

STEP 0

年齢が50歳以上か、
預託金を用意できるか
(1万〜2万USD)

STEP 1

PRA(フィリピン退職庁)の
公式サイト等を確認
▼ 必要書類を準備
健康診断書 / 警察証明 / パスポート コピー / 証明写真 等

STEP 2

預託金の送金
指定銀行口座へ
1万USD(年金受給者)
2万USD(年金無し)

STEP 3

短期ビザで渡航→
PRA本部または支局で面接
▼ 書類の最終提出

STEP 4

ビザ発給
移民局と連携し数週間~1ヶ月
ACR I-Cardを取得し
年次報告&年会費を納付

最新の滞在要件や必要書類は必ず公的機関でご確認ください。

特別投資家居住ビザ(SIRV)と他の長期ビザの概要

SIRV(Special Investor’s Resident Visa)

投資額75,000USD以上をフィリピンの認可事業に投入することで、長期居住資格を得られるビザ。ただし不動産直接投資は対象外なので、コンドミニアムを直接購入する代わりに開発会社の株式を購入するなど間接的に投資する形となります。

9(g) 就労ビザ

フィリピン法人に就職・駐在する外国人向け。投資家が自社を現地登記して役員となり申請するケースもあり。更新時期が雇用契約に依存します。

クォータビザ(Quota Visa)

年間枠50名のため、ハードルは高いが取得できれば永住権を得られます。投資額が大きい富裕層がターゲットです。

具体的なビザ申請ガイド:手続き手順と注意点

ここでは多くの投資家が利用する「在日フィリピン大使館・領事館での従来申請」を例に、流れを整理します。E-Visaが普及すればオンライン申請のステップが増えますが、長期ビザの場合は当面対面手続きがメインです。

必要書類の事前取得

書類名称備考必要数
パスポート残存有効期間が6ヶ月以上あること。
コピーを一部用意することが推奨。
1冊
証明写真2×2インチ(背景白)
最新6ヶ月以内のもの推奨。
2〜6枚
警察証明書無犯罪経歴証明書。
都道府県警察本部で発行可能。
1通
健康診断書エイズ検査等を含む英語の診断書。
(病院の公的英文証明が必要)
1通
投資証明書 / 預託証明書SIRVやSRRVの場合は
投資金額を証明できる書類。
1式


※最新の書類要件・枚数はビザ種別により異なる場合があります。事前に大使館・領事館にご確認ください。

大使館・領事館の予約

  • 現在は多くの窓口が完全予約制
  • 予約サイトまたは電話で空き状況を確認し、渡航予定から逆算して日程確保

申請書類の提出・面接

  • 窓口で書類を提出し、不備がなければ申請料を支払う
  • ビザ種により面接や追加書類の要求がある

審査・ビザ発給

  • 投資ビザの場合、フィリピン本国機関とのやり取りがあるため1〜2ヶ月かかることも
  • 承認後、パスポートにビザシール貼付 → 受け取り

在日フィリピン大使館・領事館でのビザ申請フロー

STEP 1:事前予約

オンラインまたは電話で予約を行う。
(窓口の混雑回避のため、大使館では事前予約が推奨)

STEP 2:書類を準備・持参

必要書類を揃え、
予約日時に大使館・領事館へ。
(パスポート、写真、健康診断書等)

STEP 3:面接・書類確認

申請書類に不備がないか確認。
簡単な質問や追加情報の
ヒアリングが行われる場合あり。

STEP 4:ビザ発給

審査完了後、問題なければ
パスポートにビザが貼付。
(通常1〜2週間程度/ビザ種類による)

※ビザの審査期間や必要書類は種類により異なるため、必ず公式情報をご確認ください。

オンライン申請(E-Visa)の展望:短期ビザは容易になるか?

E-Visa導入の最新状況

2023年頃から段階的に導入が進められており、将来的には9(a)観光ビザや短期商用ビザをオンラインで申請・発給することを目指しています。日本人はそもそも短期滞在ならビザ免除枠があるため、観光目的での恩恵は小さいかもしれません。

しかし、観光ビザ延長や30日以上の商用ビザなどがオンライン化されれば、投資家の下見渡航や複数回入国が格段に楽になる可能性があります。

投資家への影響

  • メリット: 手続き時間の短縮、窓口訪問の回数削減
  • デメリット: 長期・特別ビザは従来申請のままの見込みが大きく、E-Visaが全面的に適用されるには時間がかかる
  • 注意点: E-Visaで入国後に別ビザへ切り替えたい場合、従来どおり出国→再入国が必要になる可能性

オンライン化が進んでも、SRRVやSIRVのような特殊ビザは現地機関との連携審査を要するため、簡略化される部分は限定的と考えたほうがよいでしょう。

ビザ取得後に確認すべき3つのポイント

有効期限の管理・延長スケジュール

  • SIRV・SRRVも年次報告が必要な場合が多い
  • 9(g)就労ビザは雇用契約ごとの更新に注意
  • 観光ビザ延長の場合は36ヶ月が限度

ACR I-Cardの取得と更新

60日以上滞在する場合は外国人登録カード(ACR I-Card)が必須です。更新は年1回。紛失しないよう大切に保管しましょう。

投資関連手続き(事業許可・納税者番号など)

  • 不動産賃貸を行う場合、LGU(地方自治体)での事業許可と税務登録(BIR/TIN)の取得
  • 現地銀行口座開設もスムーズに行うため、ビザのシールやACR I-Cardを提示できるよう準備

まとめ

ここまで、【2025年最新 フィリピン ビザ 手続き】に関する重要ポイントと、不動産投資を行う上で押さえておくべきビザの種類・申請手順・注意点を詳しく解説しました。改めて要点を振り返ります。

  • 最新情報のチェックが欠かせない
    E-Visa導入やSRRV要件変更など、フィリピンのビザ制度は流動的。必ず公式サイトや大使館から最新情報を入手しましょう。
  • 目的に合ったビザ選択が成功のカギ
    短期視察は観光ビザ、長期運用はSRRVやSIRVが主流。年齢・投資額・働き方に応じた最適解を探してください。
  • 書類準備と期限管理が最重要
    無犯罪証明や健康診断書など、取得に時間がかかる書類は早めに動きましょう。ビザ有効期限や年次報告義務を怠るとトラブルのもとです.
  • 投資家視点の戦略を明確に
    ビザ取得後の物件購入、賃貸管理、出口戦略をセットで考えることで、スムーズな事業展開が可能になります.
  • 専門家との連携・緊急連絡先の確保
    現地コンサルや法律事務所をパートナーにして、トラブルを未然に防ぐ。大使館登録や家族との連絡体制も必須です.

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニーカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

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