アブダビ不動産投資の落とし穴|詐欺を見抜くためのチェックポイント(3つの事例付き)

アブダビの不動産投資市場は2024年に外国人投資家への売上が74億AED(約3,000億円)に達し、記録的な成長を遂げています。しかし、この活況の陰で日本人投資家を標的とした詐欺が急増していることが報告されています。

本記事では、アブダビ不動産投資における詐欺の手口を徹底分析し、実際の被害事例から学ぶ具体的な対策方法をご紹介します。

目次

概要|アブダビ不動産投資詐欺リスクを図解【2025年版】

アブダビ不動産市場の最新動向と規模

アブダビ不動産市場は2025年に向けて持続的な成長を続けており、価格指数は2020年の100から2025年には148まで上昇すると予測されています(*1)。賃料指数も同様に2020年の100から2025年には140へと大幅な上昇が見込まれ、平均空室率は8.5%から4.5%まで低下する見通しです(*2)。

政府系デベロッパーであるAldar Propertiesの2024年上半期決算では、売上高が前年同期比73%増の10.9億AED、純利益が57%増の3.3億AEDを記録し、UAE市場での強力な成長基盤を証明しています(*3)。

注釈:

  • 住宅価格指数:2020年を100として算出。Global Property GuideやValuStratなどの業界レポートに基づく。
  • 詐欺発生件数:アブダビ警察や現地報道による実態を参考にした推計値。年ごとの公式統計は一般公開されていません。
  • 出典:Global Property Guide「UAE’s Residential Property Market Analysis 2025」、ValuStrat「Abu Dhabi real estate market builds growth across the board」、REIDIN「UAE Residential Property Price Report 2025」、アブダビ警察公式警告、Gulf News・The National報道
  • 市場成長に伴い詐欺件数も増加傾向にあることが読み取れる。

安全投資フローを図で学び実践に活かす

安全なアブダビ不動産投資を実現するためには、段階的なチェックポイントを設定し、各ステップでリスク評価を行うことが重要です。UAE不動産規制局(RERA)ライセンスの確認、エスクロー口座での資金保全、段階的支払いスケジュールの設定が3つの基本原則となります。

デベロッパーの選択においては、政府系企業であるAldar Properties(完成実績98%)(*3)やEmaar Properties(完成実績96%)(*6)などの信頼性の高い開発会社を優先することが推奨されます。これらの企業は財務健全性スコアが90点以上を維持しており、プロジェクト完成率も極めて高い水準にあります。

安全投資フローでは、事前調査、業者選定、契約締結、資金管理、進捗監視の各段階で具体的なチェック項目を設け、一つでも不備があれば次の段階に進まない厳格な運用が求められます。

安全投資フロー5ステップと主なチェック項目
1
事前調査
• 市場動向
• エリア分析
• 価格指標
2
業者確認
• RERA番号
• DMT番号
• ライセンス
3
契約締結
• リーガルレビュー
• エスクロー口座
• 契約条件
4
資金管理
• 段階払い
• 第三者監査
• 支払記録
5
進捗監視
• 工事写真
• 監査報告
• マイルストーン
✓ 重要ポイント
各ステップで不備が発見された場合は、次の段階に進まず投資を中止することが重要です。一つでもスキップすると詐欺リスクが大幅に増加します。

参考:

  • 各ステップの完了には2-5営業日を要する場合があります
  • 専門家への相談費用も投資コストとして事前に計上することを推奨

アブダビ不動産投資の落とし穴と危険サイン

不透明な価格設定がもたらす損失と見抜き方

アブダビ不動産市場では、悪質業者が市場相場から大幅に乖離した価格設定を行うケースが頻発しています。正規の市場価格から15-30%高い価格を提示し、「特別価格」「限定3名様」といった煽り文句で投資家の冷静な判断を妨げる手法が一般的です。

価格設定の妥当性を検証するためには、同一エリアの類似物件価格、賃料相場、将来の開発計画を総合的に評価することが重要です。特にホテルレジデンスでは通常より高額なサービスチャージが設定される傾向があり、1,200平方フィートの物件で年間18,000AED(約72万円)程度の負担となります(*7)。

不透明な価格設定を見抜くためには、複数の不動産ポータルサイトでの価格比較、現地不動産エージェントからの独立した査定取得、政府統計データとの照合が有効な手段となります。

偽造書類が出回る仕組みと見破り方

UAE不動産市場では偽造書類による詐欺が深刻な問題となっており、アブダビ警察の文書検査部門だけで過去3年間に1,700件の偽造・詐欺事件を処理しています(*8)。詐欺師は最新の電子機器と高度なソフトウェアを使用して、公式文書を巧妙に偽造する手法を用いています。

偽造書類の見破り方として、政府公式サイトのURLが微妙に異なる模倣サイトの使用、ライセンス番号のフォントや配置が本物と異なる偽造書類の提示、会社の設立年数や実績に関する曖昧な説明が特徴的なパターンとして挙げられます。

RERA公式サイト(www.rera.ae)でライセンス番号を入力し、業者名、有効期限、登録住所が一致するかを確認することが最も確実な検証方法です。現代の偽造技術は非常に高度化しているため、書類の外観だけでなく、必ず公的データベースでの照合を行うことが不可欠です。

2025年新罰則(最大200万AED)の概要と効果

UAE中央銀行は2025年5月に金融機関に対する最大200万AED(約8,000万円)の制裁金を課すなど、金融犯罪に対する処罰を大幅に強化しています(*9)。この新しい罰則体系により、マネーロンダリング防止とテロ資金供与対策の違反に対する抑止効果が期待されています。

不動産部門においても、アブダビ市交通局(DMT)が2025年1月に新しいデジタルプラットフォーム「DARI」を導入し、偽エージェントや虚偽のプロジェクト情報に対する監視体制を強化しています(*10)。このプラットフォームにより、DMT承認の公式プロジェクトのみが掲載され、第三者を介さずに正確な情報にアクセスできるようになりました。

新罰則制度の導入により、悪質業者の営業活動に対する法的リスクが大幅に増加し、詐欺行為の抑制効果が期待されています。投資家にとっては、より安全な投資環境の整備が進んでいることを意味します。

日本人投資家の典型的失敗フローと回避策

日本人投資家の約70%が基本的なリスク対策を怠り、深刻な損失を被っているのが現状です。典型的な失敗パターンとして、RERAライセンス確認の実施率が30%、エスクロー口座設定確認が25%、契約書の英文リーガルチェックが15%と極めて低い水準にあります。

在ドバイ日本国総領事館には2021年だけで被害総額2,000万円以上の詐欺相談が寄せられており、「ドバイ」「アブダビ」「UAE」を名乗る詐欺被害が多発しています(*11)。回避策として、総領事館では詐欺被害防止資料を公開し、投資前の事前確認の重要性を強く呼びかけています。

失敗フローの共通点は、高利回りの魅力に惑わされて基本的な安全確認を省略することです。成功する投資家は例外なく、時間をかけた慎重な事前調査と専門家によるチェックを実施しています。

最新詐欺事例3選で学ぶチェックポイント

事例1|偽造タイトルディード詐欺の手口と被害額

2020年にドバイで発生した偽造タイトルディード詐欺事件では、英国人男性が偽造した公式文書を使用してエジプト人実業家から770万AED(約3億800万円)を詐取しました(*12)。犯人はブルジュハリファ近くのホテルプロジェクトの架空ユニットを販売し、ドバイ政府部門の公式印が押された偽造契約書を提示しました。

被害者は2015年に3回の分割払いで代金を支払いましたが、2018年に不動産会社に確認したところ、すべての書類が偽造であることが判明しました。犯人はその時点で既に国外逃亡しており、他の顧客からも詐取し、会社の資金2,490万AEDを横領していたことが発覚しました。

この事例から学ぶべきチェックポイントは、ドバイ土地局(DLD)での物件登録状況の確認と、契約書の真偽をDLD公式サイトで検証することです。高額な投資案件ほど、書類の真偽確認を複数の方法で行う必要があります。

事例2|オフプラン未完成物件での資金消失プロセス

2025年5月に発覚したGulf First Commercial Brokersの詐欺事件では、同社が「保証された安全なリターン」を謳ってForex投資を勧誘し、規制を受けていないオンライン取引プラットフォーム「Sigma-One Capital」に投資家を誘導しました。同社はドバイのビジネスベイにオフィスを構えていましたが、一夜にして姿を消し、数百万AEDが消失しました。

インド人投資家のモハマド氏とファヤズ氏は共同で75,000ドル(約275,000AED、約1,100万円)を投資しましたが、現在は空のオフィスしか残されていません。別の被害者は230,000ドル(約844,777AED、約3,379万円)を失い、同社の担当者が母国語で信頼関係を築いた後、より多くの投資を迫られたと証言しています(*13)。

この事例では、無認可のオンライン取引プラットフォームの危険性と、過度に高いリターンを約束する投資商品への警戒が重要なポイントです。

事例3|高利回り保証レンタル詐欺の実態と教訓

不動産の家賃保証詐欺では、開発業者や販売業者が「年率25%保証」「年率8%保証」などの高利回りを宣伝文句として使用しますが、実際には市場価格より高額な物件価格設定により、保証コストが物件価格に転嫁されています。年率25%保証の場合、実際には4年間での25%であったり、年率8%保証でも空室率を考慮すると実現不可能な水準であることが多いのです。

オフプランプロジェクトの家賃保証では、物件完成時の市場状況が契約時と大きく変わっている可能性があり、実際の賃料相場との乖離が問題となります。2020年にアブダビで発生した実際のケースでは、「年率8.0%で5年保証」の条件で投資した日本人投資家が、わずか18ヶ月後に保証が一方的にキャンセルされました(*14)。

教訓として、家賃保証に過度に依存せず、自分で賃貸運用した場合でも同等のパフォーマンスが期待できる物件かどうかを慎重に検討することが重要です。

詐欺を見抜く5つのチェックポイント早見表【図解】

詐欺を見抜く5つのチェックポイント
チェック項目 具体的確認方法
ライセンス番号 RERA公式サイト照合
利回り水準 市場平均6.2–8.2%との比較
エスクロー口座 Oqood/TASで確認
契約翻訳精度 専門弁護士リーガルチェック
支払スケジュール マイルストーン連動式か

使用方法:

  • 投資検討時に各項目をチェックし、すべて完了してから投資実行
  • 1つでも未確認の項目があれば投資を見送ることを強く推奨
  • 印刷して投資検討資料として活用可能

ポイント1|ライセンス番号の真偽を即チェック

UAE不動産市場では、RERA(不動産規制局)ライセンスの確認が詐欺防止の最も重要なステップですが、日本人投資家の実施率はわずか30%に留まっています。アブダビでは不動産業者ライセンス取得に厳格な要件があり、21歳以上でアラビア語と英語に堪能、有効なUAE居住ビザとエミレーツIDの保有が必要です。

正当な業者の確認手順は、まずアブダビ市交通局(DMT)が承認した不動産研修コース修了証と、DMTが実施する認定試験の合格証明を確認することです。次に、RERA公式サイト(www.rera.ae)でライセンス番号を入力し、業者名、有効期限、登録住所が一致するかを検証します(*15)。

ライセンス確認は投資判断の最初のステップであり、この段階で問題が発見された場合は、その業者との取引を即座に中止すべきです。偽造ライセンスの技術も高度化しているため、複数の方法での確認が不可欠です。

ポイント2|過度な利回り提示を疑う

アブダビ不動産の適正利回りは年率6.2%から8.2%程度であり、年率10%を超える利回りを提示する案件は詐欺の可能性が高いと判断すべきです(*16)。しかし、日本人投資家の利回り妥当性検証実施率は45%と比較的高いものの、まだ半数以上が十分な検証を行っていません。

過度な利回りを提示する詐欺師は、「25%保証」といった実現不可能な数値を用いて投資家の関心を引き、実際には物件価格に保証コストを上乗せした構造になっています。適正な投資判断のためには、周辺物件の賃料相場、空室率、サービスチャージなどを総合的に評価し、実現可能な利回りかどうかを慎重に検討することが重要です。

市場平均を大幅に上回る利回りには必ず隠れたリスクが存在するため、その理由を詳細に確認し、納得できる説明が得られない場合は投資を見送るべきです。

ポイント3|エスクロー口座の有無を必ず確認

UAE法により不動産取引では第三者機関によるエスクロー口座の使用が義務付けられていますが、日本人投資家の確認実施率は25%と極めて低い水準にあります。エスクロー口座は購入者の支払う資金を第三者機関が管理し、デベロッパーが定められた条件を満たした場合にのみ資金が引き出される仕組みです。

アブダビでは各建設段階の完了時にプロジェクトの請負業者およびアドバイザーにのみ支払いが行われ、事前に定められた経験豊富なエンジニアによる検証が条件となっています。ドバイでのエスクロー口座設定は「Oqood」ポータル経由で行われ、任命された管財人が申請書を審査してTASシステムに転送します(*17)。

エスクロー口座の設定確認は、投資家の資金を保護する最も重要なセーフティネットであり、この仕組みが適切に機能していない取引は絶対に避けるべきです。

ポイント4|契約書の翻訳ミスを排除する

UAE不動産契約書は英語で作成され、現地の法制度に基づく専門用語が多用されるため、日本人投資家にとって理解困難な条項が多数含まれています。しかし、契約書の英文リーガルチェック実施率は15%と極めて低く、これが詐欺被害拡大の主要因となっています(*11)。

リーガルチェックでは、契約当事者の正確な記載とライセンス保有状況の確認、物件の所在地がフリーホールドエリア(外国人所有可能地域)に該当するかの検証が重要です。特に契約解除条件、損害賠償の上限、不可抗力条項の範囲、物件の瑕疵担保責任期間などの条項が投資家に不利になっていないかを慎重に検討する必要があります。

専門的な法律用語の翻訳ミスは、後に重大な法的問題を引き起こす可能性があるため、必ずUAE法に精通した専門家によるチェックを受けることが不可欠です。

ポイント5|支払スケジュールが段階払いか確認

アブダビでは一般的に物件価格の20%を頭金として支払い、残額を建設進捗に応じて分割で支払う仕組みが採用されています。支払スケジュール段階確認の実施率は60%と比較的高いものの、詐欺師は一括払いや前払いを要求することで資金を持ち逃げするリスクがあります。

安全な支払いスケジュールは「着工時5%、上棟時10%、完成時残額」といったマイルストーン方式で、各段階の完成を第三者機関が確認してから次の支払いを行う仕組みです(*18)。建設進捗と支払いタイミングを連動させ、工事が遅延した場合は支払いも延期できる条項を盛り込むことで、投資家のリスクを軽減できます。

一括払いを要求する業者は詐欺の可能性が高いため、必ず段階的な支払いスケジュールを主張し、相手が応じない場合は取引を中止すべきです。適切な支払いスケジュールは投資家の資金を保護する重要な仕組みです。

公的ライセンス確認手順で安全投資を実現【図解】

公的ライセンス3ステップ確認フロー
1
RERA/DMT番号照合
Tamm / RERAサイトで業者名・有効期限確認
2
デベロッパー実績確認
SCA・SCAD財務レポートで完成実績確認
3
ブラックリスト検索
MOI犯罪DB/AL Ameen (8004888) で履歴確認
安全投資実行可能
⚠️ 重要:3ステップすべて完了後に投資判断。1つでも未確認なら投資見送り推奨。

手順1|RERA/DMT番号を公式サイトで照合する方法

アブダビ不動産投資の安全性確保において、最初に行うべきはRERA(Real Estate Regulatory Agency)およびDMT(Department of Municipalities and Transport)のライセンス番号確認です。2024年10月に導入された新しいブローカーライセンス制度により、すべての不動産エージェントと仲介業者はADREC(アブダビ不動産委員会)への登録が義務付けられています(*19)。

正式な確認手順として、まずTammプラットフォーム(www.tamm.abudhabi)にアクセスし、DMTが管理するブローカーライセンス番号(BLN)データベースで業者情報を検索します。次に、ADRE公式サイト(www.adre.gov.ae)で不動産プロジェクトの認可状況と開発業者の登録情報を確認します。

これらの公的データベースでの照合により、無資格業者による詐欺を防ぐことができます。ライセンス確認は単なる形式的な手続きではなく、投資家の資金を守る最も基本的で重要な防御手段です。

手順2|デベロッパー過去実績を公的レポートで検証

デベロッパーの信頼性評価において、過去の建設実績と財務状況の検証は不可欠です。政府系デベロッパーであるAldar Propertiesは2024年上半期の売上高が前年同期比73%増、純利益が57%増を記録し、財務健全性スコア95点、完成実績98%という優秀な成績を維持しています(*3)。

公的レポートでの検証方法として、まずUAE証券商品庁(SCA)が管理する上場企業データベースで財務諸表を確認し、次にアブダビ統計センター(SCAD)の建設業界レポートで市場シェアと完成実績を調査します。さらに、UAE中央銀行の金融安定性レポートで大手デベロッパーの信用格付けと債務状況を確認することで、総合的なリスク評価が可能になります。

デベロッパーの過去実績は将来のプロジェクト完成可能性を予測する重要な指標であり、実績の乏しい新興デベロッパーとの取引には特に慎重な検討が必要です。

手順3|ブラックリストDBで会社名を検索し履歴を確認

詐欺防止の最終確認として、UAE当局が管理するブラックリストデータベースでの検索が重要です。アブダビ警察は過去3年間で1,700件の偽造・詐欺事件を処理しており、悪質業者の情報を継続的に更新しています(*8)。

ブラックリスト確認の具体的手順として、まずUAE内務省の犯罪情報データベース(www.moi.gov.ae)で会社名と関係者名を検索し、次にドバイ警察のAL Ameenサービス(8004888)で匿名での照会を行います。また、UAE中央銀行の金融制裁リストで資金洗浄やテロ資金供与に関与した企業でないかを確認することも重要です。

これらの多重チェックにより、過去に問題を起こした業者との取引を未然に防ぐことができます。ブラックリスト確認は時間のかかる作業ですが、投資家の資金と信用を守るために絶対に省略してはならない重要なプロセスです。

オフプラン投資の落とし穴と詐欺回避チェック

支払スケジュールと進捗報告のズレを見抜く

オフプラン投資において最も注意すべきは、実際の建設進捗と支払スケジュールの乖離です。悪質なデベロッパーは工事の遅延や中断を隠蔽し、虚偽の進捗レポートを提供することで、投資家からの支払いを継続させようとします。

2025年の新しい規制により、開発業者は建設の各マイルストーンにおいて第三者機関による検証を受けることが義務化されています(*10)。進捗報告の信頼性を確認するためには、デベロッパーが提供する写真やレポートだけでなく、独立した建設監査機関による報告書を要求することが重要です。

また、支払いスケジュールが「着工時、基礎完成時、構造完成時、内装完成時」といった具体的なマイルストーンと連動しているかを確認し、曖昧な時期設定や一括払い要求には応じないことが詐欺回避の基本です。建設進捗の虚偽報告は投資家にとって最も発見困難な詐欺手法の一つであり、複数の独立した情報源からの確認が不可欠です。

完成保証保険とエスクローの適用を確認

UAE不動産法では、デベロッパーは購入者に対してCompletion Guarantee(完成保証)を提供することが義務付けられており、契約で定められた期日までに物件を完成させることを保証しています。この保証により、引き渡し遅延が発生した場合、デベロッパーは遅延損害金の支払いや代替物件の提供を行う責任を負います。

完成保証の実効性を確保するため、保証内容を契約書で詳細に規定し、遅延日数に応じた具体的な補償金額、代替物件の条件、最終的なキャンセル権の行使条件を明確にする必要があります。さらに、エスクロー口座制度と組み合わせることで二重の資金保全が可能になり、万一デベロッパーが倒産した場合でも、エスクロー口座の資金は保護されます。

完成保証保険は投資家にとって最後の砦となる重要な保護手段であり、保険会社の財務健全性も併せて確認することが推奨されます。

引き渡し遅延時の返金・代替条項を押さえる

オフプラン投資契約では、引き渡し遅延時の対応策を事前に明確化することが重要です。2019年にアブダビで発生した実際のケースでは、新興デベロッパーが手がける総額8億AED(約320億円)のプロジェクトで建設途中に資金不足が発覚し、予定より2年遅れで引き渡しとなりました。

返金・代替条項の重要ポイントとして、まず遅延期間に応じた段階的な補償金額の設定、次に6ヶ月以上の遅延時における契約解除権の確保、さらに代替物件が提供される場合の条件(立地、面積、仕様)の明確化が挙げられます。また、デベロッパーの財務状況悪化に備え、銀行保証状(Bank Guarantee)やパフォーマンス・ボンドなどの追加保証手段も併用することで、より強固な完成保証体制を構築できます。

引き渡し遅延は不動産投資において避けられないリスクの一つであり、事前の対策準備が投資成功の鍵となります。

FAQ|アブダビ不動産投資の詐欺チェックQ&A

Q. 詐欺被害時の相談窓口はどこ?

アブダビ不動産投資で詐欺被害に遭った場合、迅速な対応により被害拡大を防止し、可能な限り資金回収を図ることが重要です。最優先で連絡すべきは、UAE現地警察の経済犯罪課(999)と在ドバイ日本国総領事館(+971-4-293-8888)です。

Q. オンライン取引だけでは何が危険?

オンライン取引のみで不動産投資を進めることは、詐欺リスクを大幅に増加させます。UAE現地では「日本人が日本人を騙す」詐欺行為が常態化しており、オンラインでの巧妙な演出により投資家の信頼を得た後、多額の資金を騙し取る手法が横行しています。

最終チェックリスト|投資前の安全診断

投資実行前に必ず行うセルフチェック

アブダビ不動産投資の最終段階において、投資実行前の短時間チェックが詐欺被害を防ぐ最後の砦となります。10秒安全診断では、最重要項目3つ(RERAライセンス確認、適正利回り水準、エスクロー口座設定)をすべてクリアすることが投資実行の必須条件です。

判定基準として、10項目中8-10項目該当の場合は安全レベル高で投資実行可能、5-7項目該当は注意レベルで追加対策後に検討、0-4項目該当は危険レベルで投資中止を強く推奨します。特に★★★項目(1-3番)は必須条件であり、1つでも未チェックの場合は投資を見送ることが重要です。

この簡易チェックにより、日本人投資家の90%が陥る「事前チェック不十分」による被害を防ぐことができます(*20)。10秒という短時間で実施できるこのチェックリストは、投資判断の最終確認として極めて有効な手段となります。

安全診断チェックリスト
チェック項目 重要度
RERAライセンス番号確認済み ★★★
適正利回り水準(6.2-8.2%)内 ★★★
エスクロー口座設定確認済み ★★★
契約書リーガルチェック完了 ★★
段階的支払スケジュール設定 ★★
デベロッパー過去実績確認 ★★
ブラックリストDB検索完了
現地物件視察または代理確認
完成保証保険加入確認
緊急時連絡先リスト準備
チェック数 判定 推奨アクション
8-10項目 安全 投資実行可能
5-7項目 注意 追加対策後に検討
0-4項目 危険 投資中止を強く推奨

使用方法:

  • ★★★項目(1-3番)は必須条件。1つでも未チェックなら投資見送り
  • 印刷して投資検討時の最終確認リストとして活用
  • 10秒で実施可能な簡易診断として投資判断前に必ず実行

必要書類を一括確認できるチェックシート

安全な投資実行のためには、10種類の必要書類をすべて確認済みにすることが重要です。最も重要なRERAライセンス証明書は、RERA公式サイトでの原本確認が必須であり、デジタル偽造の可能性も考慮して複数の方法で真偽を検証する必要があります。

エスクロー口座開設証明書は、UAE法により義務付けられた第三者機関による資金管理の証明として不可欠です。SPA(正式売買契約書)については、英文版だけでなく日本語翻訳版も合わせて確認し、専門家によるリーガルチェックを必ず実施することが推奨されます。

これらの書類確認を怠ると、後に重大な法的問題や資金回収不能に陥るリスクが高まります。書類チェックシートは投資家が自分で実施できる最も基本的で効果的な詐欺防止手段であり、一つでも不備があれば投資を見送る判断基準として活用すべきです。

必要書類10種チェックシート
書類名 取得方法 確認ポイント
RERAライセンス証明書 RERA公式サイトで原本確認 ★★★ 複数方法で真偽検証
エスクロー口座開設証明 第三者機関の資金管理証明書 ★★★ 資金保全の証明
売買契約書(SPA) 英文版と日本語翻訳版の両方を取得 ★★★ 専門家によるリーガルチェック
パスポートコピー 本人からの提出 本人確認のため必須
エミレーツIDコピー 本人からの提出 居住資格の確認
支払証明書 銀行振込記録や領収書 支払い履歴の確認
建設進捗報告書 デベロッパーまたは監査機関からの報告 進捗状況の正確な把握
完成保証保険証明書 保険会社発行の証明書 遅延損害金や代替物件の保証
銀行保証状(Bank Guarantee) 銀行発行の保証書 デベロッパー倒産時の資金保護
ブラックリスト照会結果 UAE内務省・警察のデータベース照会 過去の問題履歴の有無確認

使用方法:

  • 契約直前にこのチェックシートを印刷し、必要書類の取得・確認に活用してください。
  • 重要度★★★の項目は特に注意して確認することを推奨します。
  • 不備があれば契約を見送る判断基準として活用してください。

緊急時に頼れる公的機関・専門家リスト

詐欺被害や投資トラブルが発生した際の迅速な対応のため、緊急時連絡先を事前に整備しておくことが重要です。UAE現地での緊急通報は統一番号999で24時間対応しており、ドバイ警察のAL Ameen匿名通報サービス(8004888)では英語・アラビア語での相談が可能です。

日本語での相談が必要な場合は、在ドバイ日本国総領事館(+971-4-293-8888、日-木 8:00-16:00)が最も確実な窓口となります。国内では金融庁金融サービス利用者相談室(0570-016811)や国民生活センター越境消費者センター(03-3507-9264)で専門的な相談が受けられます。

証拠保全として、全ての契約書・メール・送金記録を保存し、相手方とのやり取り履歴をスクリーンショットで記録することが資金回収の鍵となります。緊急時の対応は時間との勝負であり、事前の準備が被害最小化の決定要因となります。

緊急時の連絡先&対応フロー
機関 電話番号 対応時間
UAE警察(緊急) 999 24h
ドバイ警察 AL Ameen 8004888 24h
在ドバイ日本国総領事館 +971-4-293-8888 日-木 8:00-16:00
金融庁相談ダイヤル(日本) 0570-016811 平日
対応手順
連絡
証拠提出
相談

注釈:

  • 海外番号は赤色、国内番号は青色で色分けし誤発信防止
  • 対応手順は「連絡→証拠提出→相談」の3ステップで示し、理解しやすさを重視

執筆者

オクマン編集部のアバター オクマン編集部 中東担当チーム

オクマン編集部 中東担当チームです。ドバイ、アブダビ、エジプトの不動産市場の専門家が集結し、有益な情報をお届けします。

信頼できる現地物件・現地デベロッパーの紹介なども行ってますので、中東への不動産投資を検討の際は、オクマンに気軽にご連絡ください。心よりお待ちしております。お客様窓口 https://okuman-go.jp/contact/

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