ベトナム不動産投資は安全?詐欺リスク・外国人規制・失敗事例から学ぶ注意点

「ベトナム不動産投資は安全なのか?」——この問いを抱えたまま、なかなか一歩を踏み出せずにいる方は少なくないはずです。高い経済成長率や若い人口構成への期待感がある一方で、詐欺リスク・外国人規制・複雑な権利証制度など、ベトナム不動産投資特有のハードルも確かに存在します。

本記事では、外国人が購入できる物件の条件から、よくある失敗事例・詐欺の手口、そして安全に投資するための実践的な注意点まで、ベトナム不動産に精通した専門家の視点で丁寧にお伝えします。

これからベトナム不動産投資を検討している方は、ぜひ最後まで読んで、後悔のない意思決定にお役立てください。

目次

ベトナム不動産市場の現状と2026年の動向

ベトナム不動産購入形態比較

ベトナム不動産市場の概況

ベトナムは長年にわたり、東南アジアの中でも特に注目度の高い不動産投資先として位置づけられてきました。ハノイ・ホーチミン市を中心とした都市部では、人口の都市集中・中間所得層の拡大・インフラ整備の加速といった構造的な変化が続いており、住宅需要の底堅さが市場を支えている状況です。

ただし、市場全体を語る際に注意していただきたいのは、ベトナムの不動産市場は地域・物件タイプ・法的ステータスによって状況が大きく異なるという点です。

たとえば、外国人が合法的に購入できる「指定された商業住宅プロジェクト内のコンドミニアム」と、ベトナム人のみが購入できる土地付き戸建て(ビラ・タウンハウス等)では、流通量も価格帯も市場の動き方も全く異なります。外国人投資家として市場データを読む際は、「その数値が自分たちが投資できるセグメントのものか」を常に確認することを強くお勧めします。

また、2025年から2026年にかけて、ベトナム政府は不動産関連の法整備を段階的に進めており、外国人の所有権に関するルールも継続的に見直しが行われています。制度変更の影響を受けやすい市場であるため、購入を決断する前に必ず最新の法律・規制を専門家に確認することが欠かせません。

エリア別の市場特性

ベトナムの不動産市場を理解するうえで、主要エリアの特性を把握しておくことは非常に重要です。

大きくは南部(ホーチミン市・ドンナイ省周辺)、中部(ダナン市)、北部(ハノイ市)の3極構造で捉えるとわかりやすいでしょう。なお、2025年7月の行政区再編により、旧ビンズオン省はバリア・ブンタウ省とともにホーチミン市に統合されています。

ホーチミン市は商業・経済の中心地として外国人投資家の関心が最も集まるエリアです。ビンタイン区・トゥードゥック市などの新興エリアでは大規模な開発プロジェクトが進んでいます。

ダナン市はリゾート不動産・観光需要と連動した投資が中心で、コンドテル(コンドミニアム型ホテル)形式の物件への関心が高い一方、このタイプの物件は法的な位置づけが複雑であることに注意が必要です。

ハノイ市は政治・行政の中心地で、安定した住宅需要が見込めますが、外国人向けの物件供給はホーチミン市に比べて限られる傾向があります。

各エリアの具体的な価格データ・利回りについては、市場環境が変動しやすいことから、最新情報は現地の信頼できるエージェントや専門メディアで確認することを推奨します。

日本の不動産市場との比較

比較項目日本ベトナム(外国人)
所有権の期間永久最長50年(延長の可能性あり)
外国人の購入制限原則なし1棟の総戸数の30%まで
権利証(公式文書)不動産登記簿謄本Pink Book(Sổ Hồng)
土地の購入可能外国人は原則不可
1棟あたりの購入戸数上限制限なし同一棟30%の枠内

日本では不動産の所有権は基本的に永久であり、外国人・日本人を問わず同様の権利が認められています。土地と建物を一体で購入し、土地登記簿に所有権が記録されることで、法的な保護が得られる仕組みです。

一方でベトナムでは、外国人が購入できるのは原則として指定された商業住宅プロジェクト内のアパートメント・コンドミニアムに限られており、しかも所有権は最長50年間という時限付きです。(*1)

この「永久所有権がない」という点は、日本の不動産常識で考えると非常に大きな違いです。現行の住宅法(2023年住宅法)では、50年の所有期間満了後に一度に限り50年間の延長が認められており、合計で最長100年間の保有が可能とされています。

ただし延長手続きの詳細や将来的な制度変更の可能性もあるため、長期的な資産保全という観点からのリスクを十分に認識したうえで投資判断を行う必要があります。

外国人所有権の期間イメージ(2023年住宅法)
購入時〜
50年間
当初の所有期間
申請により
+50年間
一度限りの延長
合計
最長100年
保有可能

※延長手続きの詳細・将来的な制度変更の可能性については、購入時点で必ず現地の弁護士に確認してください。

出典:thevietnamyield.com「Can Foreigners Buy Property in Vietnam? The 2026 Guide to Laws」

市場データの読み方と注意点

ベトナム不動産に関するさまざまな市場データが国内外のメディアで発表されていますが、それらを参照する際には「誰がどのセグメントを対象に調査したか」を必ず確認してください。

外国人が合法的に取得できる物件のデータなのか、ベトナム人向けを含む市場全体のデータなのかによって、投資判断に与える影響は全く異なります。

また、ベトナムでは開発業者やエージェントが楽観的な見通しを強調する傾向があるとも言われており、第三者機関のデータと照らし合わせることを強くお勧めします。

具体的な利回り・価格上昇率などの数値については、以下をご参照ください。

指標 数値 時期
ホーチミン市 分譲マンション平均価格 4,500米ドル/㎡超 2025年〜
ホーチミン市 一次販売価格(前年同期比) 9,540万VND/㎡(+21%) 2025年第3四半期
実質賃貸利回り 3.5〜4% 2026年時点

外国人によるベトナムの不動産購入の具体的な手順

購入前に必ず理解すべき法的前提条件

ベトナムで外国人が不動産を購入する際、最初に理解しなければならないのは「何が買えて、何が買えないか」という基本的な法的枠組みです。

現行制度では、外国人個人・法人は指定された商業住宅プロジェクト内のアパートメント・コンドミニアムを購入することが認められています。ただし、1棟の建物における外国人の所有割合は総戸数の30%を超えることができません。(*1)

この30%枠は物件ごとに管理されており、人気の物件では枠がすぐに埋まってしまうケースもあります。デポジット(申込金)を支払う前に、必ず書面で「外国人枠がまだ空いているか」を確認することが絶対に必要です。口頭での確認だけでは後日トラブルになる可能性がありますので、書面による確認を徹底してください。(*2)

購入手続きのStep-by-Stepフロー

1
市場調査・エリア選定

投資目的(賃貸収益・キャピタルゲイン・自己使用)を明確にしたうえで、ターゲットエリアと物件タイプを絞り込みます。この段階で複数の独立した情報源から市場データを収集することが重要です。
費用:情報収集コストのみ。
期間:1〜3ヶ月程度。
注意点:デベロッパーや販売エージェントからの情報のみに頼らず、第三者メディアや専門家の意見も必ず参照してください。

2
物件の法的ステータス確認(デポジット支払い前・最重要)

候補物件が決まったら、デポジットを支払う前に必ず以下を確認します。
①外国人所有枠(30%上限)の残存数を書面で確認、②完成済み物件であればPink Bookが既に発行されているか確認、③オフプラン物件であればデベロッパーの引き渡し実績とバンクギャランティー(銀行保証)の有無を確認します。
費用:法律専門家への相談料(数万円〜10万円程度。案件の複雑さにより変動)。
期間:1〜4週間。
注意点:この確認を省略すると後の全てのステップが無駄になりかねません。(*2)

3
現地の独立した弁護士・法律専門家の選定

販売エージェントやデベロッパーと利害関係のない、独立した弁護士を必ず選んでください。デベロッパーが「弁護士を紹介する」と言っても、その弁護士が独立しているかどうかを必ず確認します。
費用:弁護士費用(現地弁護士事務所の相場で800〜3,200米ドル程度〔目安:約12万円〜48万円、1米ドル=150円換算〕、または物件価格の0.5〜1.5%程度)。
期間:弁護士選定に1〜2週間。
注意点:日本語対応の弁護士事務所が現地にあるかどうかも事前に調査しておくと安心です。

4
売買契約書の精査・署名

弁護士とともに売買契約書の全条項を精査します。特に確認すべき事項は、①引き渡し時期と遅延ペナルティ条項、②解約・返金条件、③Pink Book申請に関する条件、④外国人所有の旨と50年の所有期間が契約に明記されているか、です。
弁護士費用(公証費用含む。公証費用のみで200万〜1,000万VND程度〔目安:約1.2万円〜6万円〕。契約書精査費用はステップ3の弁護士費用に含まれるケースが一般的)。
期間:1〜3週間。

5
代金の支払い(分割スケジュール確認)

ベトナムの不動産購入では、オフプランの場合、工事進捗に応じた分割払いが一般的です。各支払いトランシュのタイミング・金額・振込先を契約書で確認し、支払い記録を必ず保管してください。費用:物件代金+諸費用(登録税0.5%・新築の場合のVAT10%・メンテナンス基金2%などを合算し、物件価格の1.5〜4.5%程度が諸費用の目安)
注意点:日本からの海外送金には為替変動リスクと送金手数料が発生します。

6
物件引き渡し・内覧検査

引き渡し時には専門家(インスペクター)と一緒に物件の状態を細部まで確認し、不具合があれば書面で記録・是正を要求します。
費用:インスペクション費用(現地の独立系インスペクション会社の統一相場は確認できませんでした。日本語対応エージェント/弁護士の同行費用込みで3万円〜10万円程度が目安とみられますが、依頼先に個別見積もりの確認を推奨します)。
期間:引き渡し後1〜2週間で修繕を要求できるケースが多いです。

7
Pink Book(権利証)の申請・取得

引き渡し後、Pink Book(Sổ Hồng:土地使用権・住宅及び土地に付着するその他資産の所有権証明書)の申請を行います。外国人買主のPink Book申請には、買主が外国人であること、土地使用期間が「50年固定」であることが明記されなければなりません。外国人所有であることを隠そうとする申請は違法であり、発覚した場合Pink Book自体が無効となります。(*3)
費用:登録手数料(物件評価額の0.5%。登録税=lệ phí trước bạ、Decree 10/2022に基づく法定料率)。
期間:数ヶ月〜それ以上かかるケースもあります。

8
賃貸運用・管理会社の選定

日本から遠隔で管理するためには、信頼できる現地管理会社の選定が不可欠です。管理費率・契約期間・トラブル時の対応方針を事前に確認し、管理委託契約書の内容を弁護士に確認してもらうことを強くお勧めします。
費用:管理費(賃料の6〜10%程度が一般的な相場。物件・会社によって異なる)。

購入に伴う費用・税金の概要

ベトナムで不動産を購入する際には、物件代金以外にもさまざまな費用が発生します。一般的に発生するとされているコストとしては、登録税・公証費用・管理費(マンション共用部の維持費)などが挙げられます

費用項目 金額・料率 発生タイミング
登録税 物件評価額の0.5%(*15) Pink Book登録時
公証費用 200万〜1,000万VND(約1.2万〜6万円)(*6) 契約時
VAT(新築の場合) 10%(多くの場合、表示価格に含む) 購入時
メンテナンス基金 物件価格の2%(*15) 引き渡し時(一括)
月額管理費(サービス料) 8,000〜20,000VND/㎡(約35〜85円/㎡)(*16) 入居後、毎月
諸費用合計目安(購入時) 物件価格の1.5〜4.5%(*6)

出典:Bamboo Routes「Property Taxes, Fees and Costs in Ho Chi Minh City / in Vietnam」(2026年)、Housing Vietnam「Vietnam Property Tax for Foreigners」、Vietnam Teaching Jobs「Navigating Apartment Fees in Vietnam」

ただし、各費用の具体的な税率・金額は物件の種類・価格・所在地・購入時期によって異なるため、購入前に必ず最新情報を専門家にご確認ください。

また、日本の確定申告においても、海外不動産からの所得は原則として申告義務が生じますので、日本側の税理士にも事前に相談されることを強くお勧めします。

▼ちなみに、東南アジアの中でも外国人購入ルールが比較的整備されているマレーシアの事例は、ベトナムと比較するうえで参考になります。

ベトナム不動産投資のメリット・魅力

若い人口構造と都市化による住宅需要の底堅さ

ベトナム不動産への投資が注目される理由の一つは、人口動態の力強さです。ベトナムは若い年齢層が人口の大部分を占めており、今後も生産年齢人口の拡大が続くと一般に予測されています。都市部への人口移動・中間所得層の拡大・世帯分離の進行などが、住宅需要を継続的に押し上げる要因として挙げられることが多いです。

日本では人口減少・高齢化が進み、地方圏を中心に不動産需要の縮小が懸念されています。一方でベトナムの主要都市では人口流入が続いており、住宅供給が需要に追いついていないエリアも存在するとされています。

この人口トレンドの違いは、長期的な資産価値への影響という観点から、日本とベトナムの不動産市場を比較する際の重要なポイントの一つです。ただし、将来の需要予測はあくまでも見通しであり、政策変更・経済情勢の変化によって大きく変わり得ることも忘れないでください。

外貨建て資産としての分散効果

海外不動産投資の大きな魅力の一つは、日本円以外の資産を持つことで、円安リスクや日本経済固有のリスクを分散できる点です。

ベトナムの不動産はベトナムドン(VND)建てで取引されることが多く、ドル建て・ドン建ての双方での運用事例があります。日本に全財産を集中させることなく、海外に一定の資産を持つという「地理的分散」は、資産防衛の観点からも意義があるとされています。

ただし、為替リスクは双方向に働きます。ベトナムドンが円に対して下落した場合、円ベースで見た資産価値・賃貸収益は目減りします。為替変動の影響を十分に試算したうえで投資判断を行うことが大切です。

新興市場特有の価格成長への期待

新興国市場においては、インフラ整備・経済発展・都市開発の進展が不動産価格の上昇に結びつくケースがあるとして、キャピタルゲイン(売却益)を期待した投資が行われることがあります。ベトナムでも、主要都市のインフラ開発(地下鉄・高速道路・新都市開発など)が進む地区を中心に、こうした期待が根強くあります。

しかし、ここで強調しなければならないのは、キャピタルゲインは保証されていない、という点です。市場の期待が価格に過度に織り込まれているケースでは、開発計画の遅延・市場の過熱修正・政策変更などによって、期待通りの値上がりが実現しないリスクも十分に存在します。

具体的な価格上昇率の数値については、ホーチミン市の分譲マンション価格が2025年第2四半期に前年比34%上昇したとの分析や、ハノイの新築アパート価格が2025年第1四半期に前年比約32%上昇し平米あたり約3,000米ドルに達したとのデータが報告されています。

ただし、これらは短期的な急騰であり、政府による省市再編を見込んだ投機的取引の影響も指摘されているため、持続的な上昇を保証するものではない点にご留意ください。

ベトナム不動産投資のリスク・よくある失敗事例

失敗事例①:LTL(長期賃借契約)でPink Bookが取得できなかったケース

ベトナム不動産投資における最も深刻なリスクの一つが、「LTL(Long-Term Lease:長期賃借契約)」という形態での購入です。一部のデベロッパーや仲介業者は、外国人所有枠(30%)が既に満杯になっている、あるいはそもそも商業住宅プロジェクトとして指定されていない物件を、「長期賃借権」として販売するケースがあります。

このLTL形態では、Pink Book(政府登録の権利証)が発行されません。つまり、政府に登録された権利ではなく、デベロッパーとの私的契約のみが手元に残るということです。この場合、以下のような重大な問題が生じることが一般に知られています。(*1)

  • 転売時:次の買い手がリスクを警戒するため、売却が非常に困難になる
  • 融資:銀行はLTL物件への融資を避ける傾向がある
  • 紛争時:法的な救済手段が限定的になる

「安く買えた」「利回りが高い」と説明を受けて購入したものの、いざ売却しようとすると買い手が見つからず、数年にわたって塩漬け状態になってしまう——これはLTL物件で起こりやすい代表的な問題のパターンです。

⚠️ 注意:LTL物件の見極め方

「所有権」「フリーホールド」という言葉が契約書に明記されているか必ず確認してください。Pink Bookの取得が契約に含まれているか、弁護士に精査してもらうことが絶対に必要です。販売業者の口頭説明を信じず、必ず書面と専門家の確認を経てください。

失敗事例②:外国人所有枠(30%上限)を確認せずに契約したケース

外国人がベトナムでコンドミニアムを購入できるのは、1棟の総戸数の30%以内という制限があります。(*1) この枠は物件ごとに管理されており、人気プロジェクトでは早期に満杯になることがあります。

問題になりやすいのは、仲介業者から「まだ枠が空いている」と口頭で案内され、デポジットを支払った後に実は枠が既に埋まっていたことが発覚するケースです。

デポジットを支払ってしまった後に外国人枠がないことが判明した場合、返金交渉が難航したり、LTL形態での購入を勧められたりといった事態に陥るリスクがあります。

また、外国人所有枠を超えて販売しようとするデベロッパーの物件は、プロジェクト自体のコンプライアンスに問題がある可能性が高く、その他の面でも信頼性に疑問が生じます。

⚠️ 注意:デポジット前の書面確認が絶対条件

「30%の外国人所有枠がまだ空いているか」を、デポジット支払い前に必ず書面で確認してください。(*2) 口頭での確認では後の証拠になりません。この確認を省略したまま申込金を支払うことは、ベトナム不動産投資における最も避けるべき行動の一つです。

失敗事例③:オフプラン物件でデベロッパーが引き渡しを完了できなかったケース

完成前の物件(オフプラン)に投資した場合、最大のリスクは「物件が完成しない」あるいは「大幅に遅延する」ことです。ベトナムでは、デベロッパーが資金難・許認可問題・経営悪化などにより工事を中断・停止してしまうケースが一般に知られています。

購入代金を分割で支払い続けたにもかかわらず、物件が完成しないという事態は、投資家にとって最悪のシナリオの一つです。

また、引き渡しが当初の予定から大幅に遅延することも珍しくありません。賃貸収益を見込んでいたタイムラインが崩れ、ローンや生活費の計画に影響が出るリスクがあります。

さらに、ベトナムの「コンドテル」(コンドミニアム型ホテル)形式の物件では、法的な所有権の位置づけが通常のコンドミニアムと異なるケースもあり、Pink Bookが取得できないという問題が報告されています。

⚠️ 注意:デベロッパーの実績とバンクギャランティーの確認

オフプラン物件を購入する際には、デベロッパーの過去の引き渡し実績(完成した物件のリスト・遅延の有無)を必ず確認してください。(*2) また、バンクギャランティー(銀行保証)が付いているかどうかも重要な確認事項です。バンクギャランティーがあれば、デベロッパーが物件を完成できない場合に銀行から支払済み代金の返還を受けられる可能性がありますが、保証内容の詳細は弁護士に確認してください。

失敗事例④:Pink Bookの内容確認を怠ったケース

Pink Bookはベトナムの裁判所・銀行が不動産所有権を確認する際に認める唯一の公式文書ですが、(*3) 「Pink Bookが存在する」というだけで安心してしまうと危険です。Pink Bookが存在する物件でも、以下の項目を別途必ず確認する必要があるとされています。(*4)

  • 所有者が本人(売主)であることの確認
  • Pink Bookに記載された物件情報と実際の物件が一致しているか
  • 抵当権・差押え・その他の制限が設定されていないか
  • 共有者がいる場合、全員の同意が得られているか
  • 買主(外国人)が購入適格者であるか
  • 権利の保有構造(信託・名義貸し等がないか)
  • 譲渡条件に制限がないか

特に「名義貸し(ノミニー)」の問題には注意が必要です。ベトナム人名義でPink Bookを取得し、実質的には外国人が所有・支配するという形態は違法であり、発覚した場合には契約無効・物件没収のリスクがあります。

「信頼できるベトナム人の友人・パートナーに名義を貸してもらう」という方法を勧めるアドバイスがあっても、絶対に従わないでください。

⚠️ 注意:Pink Bookの7項目チェックを必ず実施

Pink Bookがあるだけでは不十分です。(*4) 独立した弁護士に依頼して、所有権・抵当権・制限・共有者の同意・譲渡条件をすべて確認してもらうことを強くお勧めします。外国人であることを隠したPink Book申請は違法であり、発覚すれば無効となります。(*3)

エリア・物件タイプ別の選び方

ホーチミン市:ベトナム最大の商業都市

ホーチミン市(旧サイゴン)は、外国人投資家からの関心が最も高いエリアです。経済活動の中心地として企業・駐在員・富裕層の集積があり、外国人向けコンドミニアムの需要が比較的安定しているとされています。特に2区(トゥードゥック市に統合)・ビンタイン区・7区などでは、大手デベロッパーによる大規模プロジェクトが集中しており、外国人が合法的に購入できる物件のラインナップも比較的豊富です。

ホーチミン市の物件は、外国人向けコンドミニアムとしては価格帯が高くなる傾向があります。具体的な価格相場・利回りについては、ホーチミン市の分譲マンション平均価格は2025年に平米あたり4,500米ドルを超え、2025年第3四半期の一次販売価格は前年同期比21%上昇の平米あたり9,540万VNDとなりました。賃貸利回りは物件により異なりますが、都心部では実質3.5〜4%程度との報告もあります。

ホーチミン市で投資を検討する方に向いているのは、流動性の高いエリアを選びたい・駐在員需要を取り込みたい・都市インフラの整備が進んだエリアを好む、といった投資家です。

一方で、ホーチミン市は開発が進んだ分だけ価格も上昇しており、「安く買って大きく値上がりを期待する」という戦略は立てにくくなっているとも言われます。値上がり期待というよりも、安定した賃貸収益を重視するスタンスで取り組む方に向いているエリアと言えるでしょう。

ダナン市:リゾート需要と法的複雑性に注意

ダナン市は中部ベトナムの主要都市で、美しいビーチと近年の観光開発により、リゾート型不動産への関心が高いエリアです。国際空港の拡張・高級ホテルの開業・観光客数の増加といった要因が、短期賃貸(バケーションレンタル)市場を支えているとされています。

ただし、ダナン市で特に注意が必要なのが「コンドテル(コンドミニアム型ホテル)」です。コンドテルは外観上はコンドミニアムに見えますが、法的分類がホテルや商業施設に近く、通常の住宅用コンドミニアムとは異なる扱いを受けることがあります。この結果、Pink Bookの取得が困難であったり、外国人所有のルールが適用されないケースがあったりと、法的なグレーゾーンが存在します。ダナンでのコンドテル購入は特に慎重な法的確認が必要です。

ダナン市での投資が向いているのは、リゾート需要・観光収益に関心があり、かつ法的リスクの確認を徹底できる投資家です。コンドテルを避け、通常の商業住宅プロジェクト内の物件を選ぶことを強くお勧めします。

ハノイ市:安定需要の首都エリア

ハノイ市はベトナムの首都として、政府機関・外交機関・大企業の拠点が集まるエリアです。外国人居住者や高所得層の安定した住宅需要が見込めるため、賃貸需要の安定性という観点では魅力があります。タイホー区(西湖周辺)・ミーディン地区などが外国人向け高級コンドミニアムの集積地として知られています。

ハノイ市はホーチミン市に比べると外国人向け物件の供給数が少ない傾向があり、選択肢が限られることがあります。また、市場の流動性もホーチミン市ほど高くないとも言われるため、出口戦略(売却)を念頭に置いた物件選びが重要です。ハノイ市での投資は、長期保有・安定収益を重視する投資家に向いているエリアと言えます。

物件タイプ別の選び方:完成物件 vs オフプラン

ベトナムでの外国人向け購入において、物件タイプの選択は非常に重要です。

比較項目完成済み物件オフプラン(未完成)物件
Pink Book取得既発行の場合は確認可能引き渡し後に申請
価格市場価格場合によっては低い
デベロッパーリスク低い(既存物件の確認可能)高い(完成・引き渡し保証が必要)
バンクギャランティー不要必須確認事項
引き渡し時期即時〜短期数年後(遅延リスクあり)
外国人向けに推奨度比較的推奨しやすい慎重な精査が必要

出典:thevietnamyield.com「Can Foreigners Buy Property in Vietnam? The 2026 Guide to Laws」lexology.com「Real Estate in Vietnam for Foreigners: 11 Legal Checks Before Buying」

初めてベトナム不動産に投資する方には、既にPink Bookが発行されている完成済み物件をまず検討することを強くお勧めします。権利状況を事前に確認できるという点で、オフプランよりもリスクを把握しやすい選択肢です。オフプランに挑戦するのは、ベトナムの法制度・市場に習熟してからでも遅くはありません。

▼ちなみに、同じ東南アジアのフィリピンでも外国人の不動産購入ルールに独自の制限があります。比較検討の参考にどうぞ。

よくある質問

Q. 外国人はベトナムで土地を購入できますか?
原則として、外国人はベトナムで土地を購入することはできません。
ベトナムでは土地は国家所有であり、個人・法人を問わず「土地使用権」を取得する形式が基本です。外国人が取得できるのは、指定された商業住宅プロジェクト内のアパートメント・コンドミニアムに限られており、土地付きの戸建て(ビラ・タウンハウス)はベトナム人のみに認められるのが原則です。(*1)
制度は変更される可能性がありますので、最新情報を必ず専門家に確認してください。
Q. ベトナム不動産の所有権は50年後にどうなりますか?
現行制度(2023年住宅法)では、外国人の所有権は当初50年間で、一度に限り50年間の延長が可能とされ、合計で最長100年間の保有が可能です。(*1)
ただし延長申請の具体的な手続きや将来的な制度変更の可能性については、購入時点の最新情報を必ず現地の弁護士に確認してください。
長期的な資産保全を目的とした投資においては、この時限的な所有権という性質を十分に織り込んだ投資計画を立てることが重要です。
(*1)
Q. Pink BookとRed Bookの違いは何ですか?
Pink Book(Sổ Hồng)とRed Book(Sổ Đỏ)はいずれも不動産権利証ですが、現在の制度ではPink Bookが標準の形式です。
従来使われていたRed Bookは現在も法的に有効ですが、新規登録は全てPink Bookで発行されます。(*3)
Pink Bookはベトナムの裁判所・銀行が不動産所有権を確認する際に認める唯一の公式文書です。
外国人買主のPink Bookには、買主が外国人であること・土地使用期間が50年固定であることが明記されなければなりません。(*3)
Q. ベトナム不動産をベトナム人名義で購入する「ノミニー」は問題ありませんか?
ベトナム人の名義を借りて実質的に外国人が所有・支配するいわゆる「ノミニー」は違法であり、絶対に避けてください。
発覚した場合、契約の無効・物件の没収・法的処罰のリスクがあります。
「信頼できる現地パートナーや友人の名義で買えばいい」というアドバイスをする業者や個人がいる場合、その信頼性自体を疑う必要があります。外国人が合法的に購入できる形態(指定商業住宅プロジェクト内でのPink Book取得)に絞って検討することが、長期的に安全な投資への唯一の道です。
Q. 日本からベトナム不動産投資をする際、日本の税務上の扱いはどうなりますか?
日本居住者が海外不動産から得た所得は、原則として日本の確定申告で申告する義務があります。
賃貸収入・売却益いずれも対象となりますが、日本とベトナムの間で租税条約が締結されているため、二重課税の調整が行われる場合があります。
具体的な税務処理については、海外不動産に精通した日本の税理士に必ず事前に相談されることを強くお勧めします。ベトナム側の税制についても現地の専門家への確認が必要です。

▼ ちなみに、海外不動産投資においては国選びが非常に重要です。外国人所有権が法的に確立されたドバイの事例も、比較検討の参考にしていただけます。

まとめ:今すぐ始める3つのアクション

ベトナム不動産投資は、適切な知識と準備があれば魅力的な選択肢の一つになりえますが、外国人規制・権利証制度・詐欺リスクという3つの壁を越えるためには、正しい手順と専門家のサポートが絶対に欠かせません。この記事で解説してきたポイントを、最後に3つのアクションとして整理します。

まず第1のアクションは、「Pink Bookが取得できる物件だけを選ぶ」という原則を徹底することです。

LTLやノミニーといった抜け道を提案する業者・物件は、どれほど利回りが魅力的に見えても避けてください。外国人所有の30%枠が残っており、Pink Bookが取得できる正規の商業住宅プロジェクト内の物件だけを検討対象にすることが、安全な投資の第一歩です。(*1)

第2のアクションは、「独立した現地弁護士を必ず選任すること」です。日本では不動産売買において弁護士を選任するケースは多くありませんが、ベトナムでは法制度の複雑さ・言語の壁・市場の透明性の問題から、独立した専門家なしに安全な取引を完了させることは非常に難しいと言わざるを得ません。販売エージェント・デベロッパーと利害関係のない弁護士を自分で選び、契約書・Pink Bookの内容を精査してもらうことを強くお勧めします。(*4)

第3のアクションは、「まず専門家に無料相談する」ことです。ベトナム不動産投資を成功させるために最も効率的な方法は、すでに現地の法律・市場・信頼できるネットワークを持つ専門家と連携することです。

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出典元

*1 thevietnamyield.com「Can Foreigners Buy Property in Vietnam? The 2026 Guide to Laws」
*2 lexology.com「Real Estate in Vietnam for Foreigners: 11 Legal Checks Before Buying」
*3 vietnampropertymarket.com「Pink Book Explained」
*4 lexology.com「Pink Book in Vietnam: 7 Title Checks Foreign Buyers Should Make」
*5 Expat Focus「Vietnam – Buying Property」
*6 Bamboo Routes「Property Taxes, Fees and Costs in Ho Chi Minh City (2026)」
*7 Bamboo Routes「Property Taxes, Fees and Costs in Vietnam (2026)」
*8 Hausive「Property Management Fees Vietnam 2026」
*9 Rumavi「Can Foreigners Buy Property in Vietnam? Yes — 2026 Guide」
*10 日本総研「ベトナムの住宅価格、投資マネーが押し上げ」
*11 vietnam.vn「ホーチミン市の不動産市場は2025年後半から2026年にかけて活況を呈すると予想されている」
*12 The Vietnam Yield「Real Estate ROI: What is the Average Rental Yield in Vietnam? (2026 Reality Check)」
*13 Mordor Intelligence「ベトナム住宅不動産市場分析」
*14 World Invest(Global Property Guide引用)「ベトナム不動産投資徹底解説」
*15 Housing Vietnam「Vietnam Property Tax for Foreigners, Landlord Tax in Vietnam」
*16 Vietnam Teaching Jobs「Navigating Apartment Fees in Vietnam: What to Expect Beyond Rent」

執筆者

高橋 卓のアバター 高橋 卓 海外不動産のオクマン 代表

2014年:はぐくみカンパニー株式会社、代表取締役に就任
2017年:株式会社純な、代表取締役に就任
2018年:はぐくみカンパニー株式会社を株式譲渡し退任
2023年以降:日本企業の進出コンサルティングと海外不動産メディアの運営に注力(バンコクのベイカリーショップ、小麦の王国立ち上げ等)

現在バンコク在住。海外不動産投資のことならお気軽にご相談ください。

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